働くにあたり、若者が心配していることのトップは「ブラック企業」。確かに昨今「ブラック企業」の劣悪な労働環境が話題になりますが、それは労働環境が昔より悪くなったためなのでしょうか? それとも昔から労働環境が変わらないのだとすれば、なぜ今、やたらに取りざたされるのでしょうか?
そこで今回JOBRASS編集部では、採用担当者100名に対し、労働環境は「昔より悪くなった」と思うかどうかをアンケート。すると、「そう思う」という担当者と「そうは思わない」という担当者の割合はほぼ半々という結果に。それぞれの意見の担当者たちに、どうしてそう考えるのかを聞いてみました。
【「ブラック企業」が問題になりますが、労働環境は「昔より悪くなった」と思いますか?また、「なぜ今取りざたされるの?」と思いますか?】
・あてはまる 16.0%
・まああてはまる 31.0%
・あまりあてはまらない 37.0%
・全くあてはまらない 16.0%
「あてはまる」と回答した人たちは、概ね「人手不足」と「給料があがらない」ことを挙げています。
・どこも低賃金で人を使いたがり、上層部は自分のことしか考えてない(女性/デザイン関係/36歳)
・企業に余裕がなく給与の切り取りやリストラなどが増えたため(男性/その他/42歳)
・人手不足と年功序列、終身雇用が崩れたため(男性/その他/46歳)
・無能な上司の多さが招いてると思う(男性/コンピュータ関連以外の技術職/43歳)
一方で、「あてはまらない」=労働環境自体は昔も今も変わらない、という意見の人たちは、まず「ネット時代」を挙げます。いわく、「昔は表に出てこなかったことが、誰でも知ることができたり、情報を発信できたりするツールがある」ため、広く社会問題化されるようになった、という見方です。
・インターネットの普及などでこれまで情報弱者だった労働者が情報武装されて、これまで当たり前にされて来た搾取が内部告発やネットの拡散等で社会問題化されるようになった。今のほうが健全で開かれた労働環境になったのでは(男性/総務・人事・事務/47歳)
・インターネットの普及により、昔は明るみに出なかったものが簡単にオープンになるようになった。また、昔は会社に泊まり込んで徹夜で仕事をするモーレツ社員が評価されるところもあったが、最近はそういったスタイルがあまり好ましいと思われなくなっている(男性/コンピュータ関連以外の技術職/41歳)
・現在は情報網が発達しすぎていろいろな知識が得られるためそれをもとに自分の権利を主張しすぎる(男性/営業・販売/48歳)
・情報社会になったから(男性/総務・人事・事務/44歳)
また、
・今のひとは、あまり貧しさを知らないからハングリー精神が欠如しているから(男性/会社経営・役員/36歳)
・ちょっとの事でも問題にする(男性/営業・販売/48歳)
・我慢をすることを今の人はできないから(女性/その他/40歳)
・ワークライフバランスが大きく取り上げられている(男性/金融関係/47歳)
など、今はワークライフバランスを考え、自分の時間を考える時代であるため、自分の“理想”と合わないと“ブラック”と言ってしまうのではないかという声も。そして、「昔は忍耐強い事が美徳とされてきたが、今はそういった考え方は古い」(男性/その他/44歳)ような時代になった背景として、
・労働環境は変わっていないが、働く人の意識が変わっただけだと思う。昔は、戦後の日本の復興を目指すような「世の中が良くなるため」という意識、今は「自分のため」と意識がほとんどだと思う(男性/営業・販売/32歳)
・ブラック企業は昔から存在しており、昔は出世・地位・名声や同じ会社で長く働く為、組織に従うことで自分の居場所を作っていたが、今は労働者保護の観念が強くなっており、ルール内であれば労働者は会社よりも自分の立場を中心に考えられるようになってきた。その為、内部告発も増えてきた。ブラック企業自体が増えたのではない思う(男性/総務・人事・事務/41歳)
といった意見が寄せられました。
ある男性(研究・開発/45歳)は、
「昔は働けば働くほど、きつくても、ゆくゆくは、先輩に気に入られたり、会社に重宝されたりする事で昇進や給与に反映され、すきな事や目標(たとえば、自分で店を持つなど)であれば、ガマンできた。
今は働いたところで報われず、それどころか、リストラの憂き目にあう父親たちを見てきた世代からすれば、そんなに真剣に働くこと自体がばからしく、そんなことより自分の楽しみに時間を使いたいと思う人も多くなっているのでは。そのため目標もなく言われたことだけをやり、少し待遇が悪ければ、『ブラック企業だ!』と騒ぐ感じが強い」
と話します。ブラック企業という言葉に振り回されすぎず、自分がどう働きたいかをよく考え、また志望企業の勤務実態はどうなのかを情報収集しましょう。就活は、自分の社会人人生を決めるスタートです。
【調査概要】
方法:JOBRASS就活ニュース調べ(インターネット調査)
調査期間:2017年8月16日~2017年8月23日
対象:企業の採用担当者 計100名