大学3年生のSさんは、大手企業志望。理由は「なんとなく……」と、なんともフワっとしたもの。何はともあれ、「誰もが知っているような会社」を目指すそうです。
一方就職浪人中のKさんは、知名度や企業規模にはあまりこだわりがないようで、「中小企業のほうが自分のやりたいことができそうじゃない?」という意見です。
もう、「定年までひとつの会社にずっといる」ことだけが“理想”という考えは昔のもの。今はその時々の自分の考えやライフスタイルに合わせて、転職もしやすい時代です。とはいえ、やはり新卒時に就職する会社は大切です。なぜなら、「その会社で学んだことが、後々の社会人としての自分のベースになる」からです。
今回は、大企業・中小企業、それぞれのメリットを考えてみましょう。新卒で東証一部上場の大企業に入社し、12年働いた後、中小企業に転職したMさん(男性)に話を聞きました。
「中小企業から大企業に行くよりも、大企業から中小企業に行くほうが転職はしやすいのでは、と思います。大企業のほうがいろんな仕事があり、規模が大きいがゆえに手続きや人間関係では、しがらみもたくさんあるので、中小企業の仕事内容やルールなどは大体理解できるものだからです。反対に、中小企業の人は、大企業ならではの文化やルールには、なかなか馴染めない気がします。
私は3回異動がありましたが、大企業では、異動はほとんど“転職”のような感じで、いろんな仕事を経験できます。仕事のミスマッチでも、社内異動で解決します。人間関係でも、たくさん人がいるので、悩んでもどこかで救ってくれる人がいます。人に対しても仕事に対しても対応力がつきます。
ただやはり、個人としての限界は出てきます。私は役員以上のトップ管理職になる感じでもなく、“あ、ここの会社で自分ができることはもうないな”と思ったので、辞めました。
転職活動中、中小企業の採用担当者に『ウチはあなたが前いた会社より小さいけど、大丈夫?』と言われることもしばしばでした。大企業出身者の多くは技術職を除き、“専門的に何かをやってきた”という人たちではないため、使い物にならないのではないかとか、使いにくいといったイメージをもつ人もいるのかもしれません。でも、裏を返せば、大企業出身者はやはり耐性が大きいですし、大局的にものごとを見る力がついているということだと思います。
中小企業に就職してみてまず思ったのは、希望の仕事につきやすいのは間違いないのですが、そうはいっても“思っていたのと違った”ということが生じた場合、社内での異動も難しい。もともと自分のスキルを明確にして、それをどんどん磨いていきたい人が多いので、ミスマッチが生じた場合、職場を変える人も少なくないようです。あと、人間関係に“逃げ場”がないため、イヤになったら辛いかもなあということ。転職してみて初めて、中小企業の人が転職を繰り返す理由がわかった気がしました。
また、ボーナスも全然違いますよね。例えば今年(2017年)でいうと、経団連発表の夏のボーナスは社員500人以上の上場企業82社の平均妥結額は91万7906円(第1次集計)。一方で、みずほ総合研究所のボーナス予測では、中小企業を含めた民間企業(事業所規模5 人以上)の夏のボーナス平均支給額は36万9098円。もちろん、中小企業でも勢いのあるところは大企業以上のボーナスを出すところもあると聞きます。自分の実力を試すことができるのは中小企業かもしれませんが、その分、会社によって金額の幅も大きいのでしょう。
結論からいえば、「地元で働きたい」とか、「エンジニアになりたい」など、明確な条件や目標がある人には、中小企業はおすすめ。まだ自分が何に向いているかさえわからない……という大学生が、最初に大企業を目指すのは、間違っていないと個人的には思いますよ」
というのは大手・中小を経験した転職者の声。しかし一方であえて、大手企業ではなく中小企業を選んだ先輩たちもいます。こちらの記事も読んで検討してみましょう。