Q) 憧れの業界があります。でもそこに知り合いもつてもなく、近づき方がわかりません。
A)来た。この質問。毎回、これを言われるけど、そんなものは、「その業界にいる人に会え」しかないんですよ。そこで「でも、知り合いがいない」と言われるけど、誰だって最初は知り合いがいないわけで、なんとかしてそこへのツテを辿れ、って話です。「六次の隔たり」と言い、人間は6人を経れば世界中の誰とも会える、という説がありますが、多分これは正しい。
あなたが「知り合いもつてもない」と言ってますが、本当はあるんですよ。その業界に少しでも近そうな知り合いがいれば、その人を頼ってもいいし、ヘタすりゃ興味ある会社の1Fでランチから戻ってくる人を捕まえて「スイマセン! 今度話聞かせてください!」とやればいい。若い人に対しては、オッサン・オバサンはそれなりに優しいもの。10人に声をかければ「今度1時間ぐらい時間作るよ」と言ってくれる人が出てくるかもしれません。
で、あなたのこの質問、本当に私は大嫌いです。私はフリーランスとしていかに稼ぐか、といった講演をすることがありますが、終了後の質疑応答の際、必ずあなたのような質問をしてくる人がいるんですよ。毎回心の中では「勝手に動けよ……。そんなバカな質問で時間を使わせるなよ。他の人の、もっとまともな質問に時間使いたいよ……」と思いつつ、返事をします。
結局、本稿の2段落目のような話をするのですが、「ツテがない場合はどうすればいいか?」という質問には「ツテを作れ」としか言いようがありません。それともアレですか? 紹介してあげたら1人あたり10万円くれるんですか? だったら私は喜んで誰でも紹介しますよ。私が3万円もらい、紹介する相手に7万円を渡し、「無能そうなヤツだけど、とりあえず10万円くれたから会ってやってくれないか? オレが手数料3万円取るからさ」なんて妙なビジネスをしたくなってしまうではありませんか。
いいですか。ビジネスというものは、誰かに頼るものではなく、自らが血路を切り開いていくものなのです。そこには人脈を見つけるとか、まったくもってして人脈がないところをこじ開けて自分に好意的な人を見つける、ということも含まれます。
憧れるぐらいの業界ならばあなたはそこで働きたいんでしょ? 働き始めたら自発的に、自律的に動かなくてはいけないわけで、他人頼りであってはいけないんですよ。その第一歩にしても、キチンと自ら動かなくてはいけない。
将来、私は地方で農業をやりつつ、魚釣りをして余生を過ごしたいと考えています。となれば、より効率的な農業のやり方を知り、さらには地元の漁師から村八分にされないだけの根回しが必要です。今、私は農家にも漁師にも、知り合いは誰一人としていないです。となれば、自分で開拓しなくてはなりません。
一つの突破口としては、現在私もコラムを連載中の週刊SPA!の「ぼっち村」という連載で田舎暮らしの漫画の連載をしている市橋俊介さんに会い、田舎暮らしの実態を知る、ということがあります。たまたま担当編集者・A氏は知り合いですので、A氏とともに市橋さんに差し入れでもしに彼の住む場所を訪れ、突破口を作るという手もあるでしょう。
「ツテがない」と嘆くのであれば、少しでも近そうな人に頼ってください。「少しでも近そうな人」でさえいないのであれば、己がいかに信頼できる人をこれまでに作ってこなかったかを呪ってください。これ以上あなたに言うことはありません。
中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
編集者
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行ったり、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書) や『内定童貞』(星海社)など。