「校閲ガール」「重版出来!」「舟を編む」など、話題のドラマ・映画の舞台になっている「出版業界」。元々人気のある業界ですが、映像化により更に注目を浴びています。「本が好き」「編集をしたい」といった思いから出版社を志望しているみなさんへ、今回は出版に関わるお仕事についてお伝えしていきます。
出版社というと「本を出版する」会社というイメージがあるのではないでしょうか。しかし出版するといえども、そこで働く多くの人は「本を書いている」わけでも、「文章を書いて販売している」わけでもありません。(ざっくりいうと、週刊少年ジャンプのマンガを集英社の人が執筆しているわけではありませんよね)
出版社は2011年時点で全国で3736社。みなさんが知っている「講談社」や「集英社」などの出版社はいわゆる総合出版社といわれ、マンガに雑誌に専門書に、小説に……さまざまなジャンルの本を出版している会社になります。しかし多くの出版社は医学書だけ、写真だけなどある特定のジャンルの出版を担っています。
また、業界研究として出版業界の個社別の売り上げについて調べていくと、「リクルートホールディングス」や「ぴあ」といった名前も出てくることもあります。これらは、メイン業務が別業界にありながら出版領域も行っているケースです。リクルートは人材領域、ぴあはチケット業務などをメインに行いながら、出版も行っています。(リクルートはゼクシィ、ぴあは音楽雑誌・旅行雑誌のぴあなど)
こうした例もありますので、まず出版に関わるには、出版社だけが必ずしも選択肢にあるわけではないことをご認識下さい。
(とはいえ、メイン事業ではないので新卒入社で出版に関わるのは限られていますが)
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それではさっそく出版物のビジネスモデル(商品の流れ)について考えてみましょう。
みなさんにわかりやすい出版社の利益は本の売り上げ。書店で本を買い、出版社にその利益が行くというのはイメージが付きやすいはずです。しかしそこには仲介役の企業があることを知っておきましょう。
今回は出版社を軸に考えてみましょう。まずは出版社が「こういう本を作ろう」と企画します。「作りたい本」を作っていきつつも、「売れる本」でなくてはいけません。このバランスは難しいはずです。よく就活生の方でも「こんな本を作りたいから出版社に入りたい」という人がいますが、「これは売れるのか」と言われることもあれば、「作ってみれば」という企業もあるはず。企業によってこの「企画」の仕方や考え方は大きく違うと考えた方がよいでしょう。
次に企画した作品を作っていきます。
編集に携わる人たちが、取材執筆する場合もあれば、作家やライター、専門家に委託することも。当然ファッション誌であれば、モデルもカメラマンも手配をしなければいけませんし、街角インタビューであっても同じことが必要ですよね。作品を創る上で、記事作成を行うこともあれば、各種の手配も行う、、、配属された部署や役割によってその業務は変わってくると思います。
そして本をつくった後工程、つまり販売をするとき、出版業界では独自のルールを持っています。
・委託販売制度…書店は原則として自由に返品できるというもの。(通常、小売りであれば、仕入れたものは在庫として仕入れ先の店舗が管理しています)
・再販制度…出版社が書店に対して、定価で販売させること。値引きはNG。(通常の商品は値下げできるが、本は定価で売らなければいけません。こうした行為は独占禁止法で法律で禁止されているのですが、本は文化的な価値もあり例外とされています。この制度はCDも同様。)
また併せて押さえておきたい点は、本は出版社が直接売っているわけではないということ。みなさんは集英社で本を買っているわけではなく、TSUTAYAであったり、紀伊国屋書店、amazonなど(ネットであれ)書店を通して本を買っていると思います。
この出版物の流通には「取次会社」の存在が重要な役割を果たしています。この取次会社が出版社と読者(消費者)の間に入っています。
取次会社の主な役割は、本を全国の売り場に届けることです。また、出版社が決定した発行部数をどのように配分していくのかを過去のデータを見ながら決めていくのも取次会社の大きな役割です。
※売り場=書店、コンビニエンスストア、生協、駅購買など
本を幅広い観点からより売っていきたいと考えている人は、出版社だけでなくこうした本の商社と言われる、取次会社を調べていくのもよいでしょう。
そして書店に本が並べられ、販売されていきます。販売された本はすべて出版社にいくわけではなく、当然ここまで関わってきた書店・取次・作家(制作者)にも配分され、残りが出版社にわたります。
本が薄利と言われるのは、本1冊が売れるまでに多くの人が携わっているからです。これが、電子書籍になってくるとまた話は大きく変わってきます。電子書籍の場合は、取次ではなく「電子書籍を販売されている場所」である、GoogleやApple、Amazonなどが代わりに入ってきます。紙の書籍と電子書籍は販売される内容は同じでも、お金の流れは大きく異なってきます。
また最近ではdマガジン等、一定額払えばたくさんの雑誌や出版物が読めるようになりました。こうして本は紙だけではなく、コンテンツとしてWEBやスマホを通して読者に伝わるようになりました。ビジネスモデルも併せて、どのように今後出版業界は利益をうんでいくことができるのか、個社ごとで考え方も異なりますので、調べてみると良いでしょう。
前章で本が売れるまでは以下のような流れになることをお伝えしました。
(・作家・マンガ家)※マンガ・小説などの場合
↓
・編集(つくる人)
・校正(つくる人)
・営業(売る人)
↓
・本屋(売る人)
↓
・読者
それでは、出版社にはどのような業務があるのでしょうか。そこには「1)商品をつくる人」と「2)作ったものを売る人」に大きく分けられます。
1)の代表格は「出版部門」であり、2)の代表格は「営業・販売部門」になります。出版社を目指す多くの人は1)を希望していますが、出版社はそこだけではないことを知っておく必要があるでしょう。今回は1)と2)にわけてお伝えします。
1)商品を作る人
・編集…「●●編集部」「編集者」といわれるひとたち。ファッション誌、マンガ、小説、エッセイなど分野はさまざま。雑誌であれば、特集の企画、モデルなど、小説であれば、作家・ライターなどとのやりとりが主になってきます。雑誌の主体を担うこともあれば、作家やライターのサポートも行う、オールラウンダーといっても過言ではありません。
—–
・校正、校閲
…作品の確認をする業務。誤字脱字だけではなく、内容の整合性や事実確認を行う職業。出版社のほかにも、新聞社でも採用されていることが多い職種です。
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・ライセンス
…作品の権利問題を一括して行う部署。例とすると、作品の映像化の際に製作会社や映画会社などとのやりとりの窓口になることも多くあります。
企業によってはこの権利部門だけを子会社・関連会社として設立させていることも。
→こうした仕事は、作品として完成したものの【質を保つ/向上させる】仕事といっても過言ではありません。例えば皆さんが雑誌を読んでいるときに、その雑誌の記事に誤字脱字が多かったり、事実と間違っていたりしたら、読む気を無くしませんか。またお金を払ったのに……とがっかりし、次は購入しなくなるかもしれません。このように消費者をがっかりさせることは企業全体の信頼感を失うことにつながります。こうしたことを防ぐために校正・校閲の業務は存在しています。ドラマなどでは、縁の下の力持ちという職業で描かれることも多いですが、まさしく、作品を安心して読んでもらうための立役者と言ってよいでしょう。
2)作ったものを売る人
本は作っただけでは当然売れません。それを販売・営業していく業務も出版社には存在します。
・営業
・販促・販売
・広告
…通常の一般企業の営業職のイメージとは異なるかもしれませんが、出版社の場合は、作品のプロモーションや販売計画、部数決定など作品がより広く、より多く、手に取ってもらえるように道筋を立てていく仕事だと思っていただくとわかりやすいかもしれません。
その他もちろん他企業と同様、人事・採用、管理・財務部門なども業務として存在しています。
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いかがでしたか。出版社といえば「紙の本を制作する人」のイメージが強いかと思いますが、実際はかなりのオールラウンダー。
今後も紙のみならずWEBや電子書籍などさまざまな手法でコンテンツが読まれるようになるため、そうした知識や理解もあったほうがよいでしょう。
「好きな雑誌を作っているから」といった理由だけではなく、どのような理念で作品を作っているのか、今後の取り組みなどをみて、本気で就職を希望される場合は早目に対策をとっていきましょう。