毎年多くの学生が選考を受ける人気業界の一つが「映画業界」です。
しかし、作品やサービスの知名度とは裏腹に意外と業界の規模としては大きくありません。映画業界に興味はあるけれど「映画をつくる人達のこと?」でとどまっているみなさん、今回は最近の映画のトレンドをみながら、映画業界について調べてみましょう。
(※こちらの記事は、2016年10月12日に公開したものを更新しています。)
まずは、2018年上半期人気作品と歴代の興行収入が高い作品をみていきます。
【邦画】
<2018上半期>
1.劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命(91億円)公開:2018年7月27日
2.名探偵コナン ゼロの執行人(87億円)公開:2018年4月13日
3.映画ドラえもん のび太の宝島(53億円)公開:2018年3月3日
<歴代>
1.千と千尋の神隠し(308億円)公開:2001年
2.君の名は。(250億円)公開:2016年
3.ハウルの動く城(196億円)公開:2004年
→日本国内では宮崎駿監督が手がけるジブリ作品をはじめアニメーション作品が独占。洋画と併せてみてもアニメ―ション作品の影響力の大きさを物語っています。
【洋画】
<2018上半期>※国内の興行収入
1.ジュラシック・ワールド2 炎の王国(80億円)公開:2018年7月13日
2.グレイテスト・ショーマン(52億円)公開:2018年2月16日
3.リメンバー・ミー(50億円)公開:2018年3月16日
<歴代>※国内の興行収入
1.タイタニック(262億円)公開:1997年
2.アナと雪の女王(255億円)公開:2014年
3.ハリー・ポッターと賢者の石(203億円)公開:2001年
→ちなみに4位は「ハリー・ポッターと秘密の部屋」。ハリー・ポッターシリーズの人気の高さがうかがえます。
技術力(3D)・話題性(ハリウッドスターの競演)などで、ヒット作を生み出す海外作品と、根強いファンが多いアニメーション作品、ドラマ・マンガ・アニメの実写化作品などによってヒット作を生み出す邦画作品。2002年ごろをピークに興行収入も下がっていましたが、最近は、シネマコンプレックスや施設内にある4D、ヒット作の連発などにより、全体の売り上げも上がってきています。
映画情報などでよく聞くワード。しかし意外と意味を知らない方も多いのでは?いまのうちに映画業界の正しい意味を確認しておきましょう。
・興行収入
…観客が劇場に支払う入場料の合計金額。ここから宣伝費などの経費と劇場利益を差し引いた金額を興行会社(劇場)は配給会社に支払います。その金額を配給収入といいます。
・配給会社
…そもそも配給とは「割り当てて配る」こと。製作された(される)映画作品と劇場(観客)をつなぐのが配給会社です。配給会社は、作品の収入の一部を受け取ります(映画料)。そして、受け取った金額から、制作者に対して製作料金を支払います。
つまりある作品が、「どのような観客・地域・年齢層」に受け、どのくらい「収入が得られそうか」を予想立てし、それが実現する方法(上映館数、地域、期間)などを考え、実施していくのが配給会社です。
日本の映画業界をリードする東宝、東映、松竹はグループ内で映画製作から先程説明した興行(劇場)までを持っており、映画に関して一貫して担うことができます。(※松竹は松竹マルチプレックスシアターズ、東宝は、TOHOシネマズ、東映はティ・ジョイ)
・製作委員会方式
先に書いた「千と千尋の神隠し」などがあったものの、2000年初頭は邦画のシェアは全体の3~4割でした。しかしその後、とある仕組みがメジャーになり邦画のシェアは5~6割にあがってきています。 それが「製作委員会方式」です。
製作から興行までを担うことができる先の3社といえども、映画を作成するには巨額の資金が必要です。そして巨額の資金を投じたからといって、大ヒットし、製作資金が回収できると は限りません。
そこで考えられたのが「製作委員会」。映画会社だけではなく、出版社やテレビ局、広告代理店などの企業が資金を出し合って、一本の映画を作り上げていく仕組みです。こうすることで、作品がヒットすればもちろんですが、ヒットしなかった場合でも、リスクを限定させることができます。
また、メディアが関連する会社がこぞって参加するため、原作本のフェアやグッズ販売など、多方面に展開し、「映画」を軸にさまざまなビジネスを展開しやすくなるのもこの方式のメリットです。
映画を見ていると「●●製作委員会」とでてくる意味が少しわかっていただけたでしょうか。
そして現在国内の総スクリーン数の8割以上がシネマコンプレックス(シネコン)です。シネマコンプレックスとは ひとつの施設に複数(概ね5つ以上)のスクリーンがある映画館のことです。
ショッピングモールに、映画館がありその中に複数のシアターがあるのはいまやごく自然な光景ですが、シネコンが登場したのは1980年代、広がりをみせたのは、1993年以降と意外にも最近のことなのです。
それでは、映画業界を見ていく上で、競合は何にあたるのでしょうか。
もちろん「東宝」のライバルは「松竹」と答える方もいるかもしれません。
しかし、これから映画業界を担うみなさんはもう少し広い視野でみていく必要があります。
例えばみなさんは「映画」をどこでみますか。
映画館の人もいれば、DVDをレンタルしたり、ネットフリックスでみたり、なかにはYoutubeで見ている人もいるかもしれません。
映画業界で働く上では「映画」を「映画館」で見てもらうにしろ、「DVD・ブルーレイ」で見てもらうにしろ、
どのように「利益を生み出していく可能性」があるのかを考えてみると、違った一面がみれます。
「大きな画面」で「映画」を見るならば、「ホームシアター」という手もあります。
「お金を払って」「面白いコンテンツ」を見るならば「WOWOW(有料チャンネル)」も「オリジナルアニメDVD」もあるかもしれません。
「お金を払って」「映画」を体験するならば「USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)」に行くこともできます。(最近は4DXという体験型の映画の見方もでてきました)
つまり映画業界はこれまで培ってきたノウハウや現在持つ資産をどのように生かしていくのかが肝になってきます。
そしてそもそも、の話になりますが「どれだけ面白い作品を作れるのか」ということです。
製作委員会のお話をしましたが、現在はやっている「シン・ゴジラ」は製作委員会ではなく東宝単独で製作をしたことでも有名です。
これからは、どのような方法で、「誰かにとって」「面白い作品」を生み出す方法、利益を生み出す方法、などを柔軟に考えていく必要がありそうです。
もちろん前提には映画が好きであることが大事だと思います。