ゲーム業界を志望する際の志望動機に、「ゲームが好きだから」、「自分の夢のゲームを作りたいから」といったものを挙げる就職活動生がいます。気持ちはわかるのですが、ゲーム業界も、利益を追求する営利組織です。ただ好きというだけではなく、ゲーム業界の事情を知った上で、どういった形で利益を生み出せると考えているのかを志望動機に反映させられるなら、ゲーム業界への就職可能性が高まります。ゲーム業界の業界事情について考えてみましょう。
(※こちらの記事は、2016年10月7日に公開したものを更新しています。)
いまや1.5兆円を超える産業となったゲーム業界。ゲーム業界の企業は、ハードをつくる会社とソフトをつくる会社に大きく分けられます。前者は、コンシューマーゲーム用のハード、ゲーム機をつくっている任天堂やソニー・コンピュータエンタテイメントのような会社、後者はゲームソフトを専門に開発する会社になります。近年、携帯電話やスマートフォン、タブレットをハードとして使うモバイルゲームの競争が激しくなっています。そのため、ソフト開発は、高性能パソコンベースで開発し、家庭用ゲーム機からモバイル端末までマルチなハードに対応できるマルチプラットフォーム開発が主流となっています。ハード自体の売り上げは、Nintendo Switchにより再び拡大し、加えてモバイルゲーム、オンラインゲームのおかげで、ゲーム業界は、拡大しています。
ところで、モバイルゲームをする方ならご存知かと思いますが、多くのゲームが無料ゲームになっています。あの「ポケモンGO」も無料でダウンロードして遊ぶことができます。ゲーム開発には、サービスの構築費用、サーバー費用、コンテンツ制作費、オペレーション費用など、かなりのコストがかかっているはずなのに、無料で提供され、なおかつ市場規模が拡大しているというのはどういう仕組みになっているのでしょうか。それは、ゲームを提供する際に、マネタイズを行うことが不可避になっているからです。マネタイズとは、主にインターネットサービスを使う場で、収益化(お金を生み出すこと)していく仕組みを指します。どういったマネタイズモデルがあるでしょうか。
1.課金モデル
モバイルゲームのアプリ内課金は、最も主流のマネタイズモデルになっています。無料ゲームで始め、キャラクターの一部や、ゲームを有利に進めていくのに必要な機能、上位ゲームへの移行などに課金するモデルです。「ポケモンGO」は無料ですが、有料の「ポケモンGO Plus」も用意されています。一定の機能を無料で提供しつつ、広告などを非表示にするためにアプリ内課金を使うケースもあります。当然ながら、サービスを使うためにお金を払ってもいいと思わせるものを生み出す必要があります。ゲームの世界では、課金をすればするほど、より優れたキャラクターを育てることができたり、強くなったりできるようになっていたりして、課金を促す仕組みができています。
2.広告モデル
ディスプレイ広告やブランディング広告などには一定の需要があります。長く遊べるゲームなら、長期の効果が見込まれ、広告の収益性も上がります。広告モデルは、ユーザーが多いほど広告料がたかくなるので、収益も上がります。検索エンジンでの「検索連動型広告」に見られるように、検索キーワードに応じて広告を表示する手法は、購買層のモデルに近いところに広告を露出することができるようになるため、さらに収益性の高い広告モデルとなっています。
3.ECモデル
Electronic Commerce(電子商取引)の略です。インターネット上で商品を販売し、それを購入したユーザーが支払う対価によって収益を得られるモデルです。ゲームのキャラクター商品などは、ECで売られていることも多く、ゲームの周辺商品でマネタイズすることもできます。
4.有料販売
最もベーシックなマネタイズモデルです。課金と異なり、最初から有料の買い切り設定になっていることが多いです。上位モデルの移行やアイテムの購入などで、課金と組み合わせることも可能で、初期費用を回収しやすい手法です。
ゲーム業界が、無料ゲームで利益を上げる仕組みについてみてみましたがゲーム業界を志望するにあたって、志望動機の基本的なところに、「ゲームが好きだから」という気持ちは必要なものだと思います。その上で、自分は何をしたいのか、どういった貢献ができるのか、利益を上げるためのどういった手法をとることができるのかを考えながら、志望動機に反映させるようにしましょう。
内定をもらった先輩方の、志望動機の例を挙げてみます。どのような切り口なのかというところを参考にし、自分なりの志望動機を作る際に役立ててください。
・ゲームオン
「私はゲームが好きで好きでたまらなく、今後の人生においても、ゲームから離れることはできないと思いました。好きなだけに、ゲームにはかなりの労力とコストをつぎこんできました。どういったものが、ゲームをする人にとって魅力的なのかを、統計を取ってゼミで発表したこともあります。これまでの自分の経験も活かしつつ、お金を払ってでも遊びたいと思われるゲームを作りたいと思い、御社を志望いたしました。」
・カプコン
「幼いころから、御社のゲームをして育ってきました。子供の頃は、キャラクターのおもちゃを集めるのにも夢中になり、お年玉をためては買いに走っていました。御社のゲームは、ゲームをしながら楽しめるだけでなく、付属するものでさらに想像を広げることができます。御社のワンコンテンツマルチユース戦略に魅かれ、豊富なコンテンツを提供する側になりたいと思います。」
「昔から、カプコンのゲームが好きです。カプコンのゲームは、楽しめるだけでなく、感動を与えてくれるところが魅力だと思います。ゲームというコンテンツが、エンターテイメントまで高められている御社は、世界と戦えるゲーム会社であると思っています。そんな御社で、グローバルに働きたいと考えています。」
・スクウェア・エニックス・ホールディングス
「私はファイナルファンタジーシリーズが大好きです。ゲームを楽しむだけでなく、私の世界観を広げてくれました。さらに、私の友人のほとんどは、共にファイナルファンタジーを語り合える人たちです。ゲームは、私にとって、自分を成長させてくれる存在です。国境を越えて、こういった気持を共有できるようなゲームを作りたいと思い、プロデューサー職を志望いたします。」
「大学で学んだシステム構築に関する知識を、御社の研修システムを通してさらに磨き、進歩し続けているゲーム界の、さらに上を行くシステム開発に関わりたいと思います。今まで楽しんできたゲームも、何年か前には想像の世界にしかなかったものでした。そういった、想像を現実に楽しめることにしていくことができるというのは、挑戦のしがいがある分野だと思います。」
・バンダイ
「私は、自分自身がワクワクできるようなことを仕事にしたいと思ってきました。就職活動中に知り合った、御社の社員の方々は、一人一人がユニークで非常に面白い人たちばかりでした。是非とも一緒に仕事をしたい、私も彼らのようになりたいと思いました。私は、ものづくりに興味があり、せっかくなら自分の興味のあるもの、興味のある分野で関わりたいと思い、御社を志望いたしました。」