働くにあたり、「好きなことを仕事にする」か、「あえてしない」かは、その人の考え方次第。例えば漫画を描くのは好きでも、いざ仕事にすると、好きで描いていた時代とは異なり、“売れる漫画”を描くことも求められます。そのとき、自分は喜んでそれを描けるのか、それとも自分の意に反することは描けないのか……。
JOBRASS編集部では、企業の採用担当者232名に、好きなことを仕事にするべきか、それとも好きなことと仕事とは切り離すべきか、意見を聞いてみました。いざ好きなことを仕事にしたら、何が起こるのか。どちらの意見も知って、自分はどうするのかを考えてみましょう。
【仕事について、あなたはどちらが良いと考えますか?】
・好きなことを仕事にするべき 51.1%
・好きなことと仕事とは切り離すべき 48.9%
調査の結果、かなり拮抗しましたが、「好きなことを仕事にするべき」という意見の人のほうが若干多いという結果になりました。では、それぞれの声をみてみましょう。
■「好きなこと」が「キライなこと」になる
好きなことは、あくまでも自分の思うがままにやりたいこと。仕事にして、理不尽な要求をされたり、“義務感”でやるようになると、キライになるのでは……という意見がこちら。
・やりたくないことでも、やらなくてはいけないのが仕事。ストレスを抱えて仕事をしているうち、もともと好きだったことまで嫌いになってしまうから(男性/コンピュータ関連以外の技術職/40歳)
・好きなことが義務感に変わるもので、その時に耐えられるか問題だから(男性/その他/45歳)
・好きなことを仕事にしてしまうと、辛いことがあった時、好きだったのが嫌いになる可能性もあるから(女性/総務・人事・事務/35歳)
■行き詰ったときに、心理的に立ち直れなくなる
好きゆえに、うまくいかないと挫折もしやすいのでは? という意見もあります。
・そこで行き詰ってしまった場合に、心理的な立て直しが困難になるから(男性/その他/36歳)
・うまくいかないときにすぐに挫折する(女性/営業・販売/41歳)
■好きなことであるゆえに、冷静な判断ができず、自我との間で自分が苦しむ
好きであるがゆえに客観性を保つことができず、苦しむことになる可能性を指摘する人も。
・ケースバイケースだが、好きなことすぎるとかえって自我が出すぎる(男性/営業・販売/40歳)
・好きなことを仕事にしてしまうと冷静な判断が出来なくなるから(男性/その他/42歳)
・好きなことを仕事にすると興味本位が優先され、自己判断に陥りがちとなるから(男性/コンピュータ関連技術職/44歳)
・好きな事は周りが見えなくなる可能性がある(男性/営業・販売/42歳)
■オン/オフの区別ができなくなり、疲れる
「好きなこと」を仕事にすると、結果として公私混同状態になり、辛くなるのではという意見も多く見られました。
・公私の区別ができなくなる(男性/総務・人事・事務/49歳)
・好きなことを仕事にすると、その仕事は趣味になり、仕事と趣味のメリハリがつかなくなり、最後は疲労となる(男性/その他/46歳)
・仕事と趣味の境界線があいまいになり、常に仕事をしている気になって病む(男性/総務・人事・事務/37歳)
■そもそも仕事は好きなことばかりできるわけではない
ある元芸人志望の女性は、「お笑いは好きだったけれど、笑わせるのは苦手だった」と告白。自分の「好きなこと」が、「仕事として向いている」かどうかは、人それぞれです。
・仮に好きな仕事だとしてもすべて好きなようにできるわけではない(男性/総務・人事・事務/47歳)
・多かれ少なかれ好きでないことが仕事の中に紛れ込む。放棄することは出来ず、対応せざるを得ないのだから、最初から割り切って就業すべき(男性/その他/42歳)
・好きなことと、仕事内容に向いているかは別と考える(男性/総務・人事・事務/43歳)
■「好きではないこと」のほうが、自分を成長させる
自分の視野を広げるためには、「好きなこと」にとらわれず、そうではないことにもチャレンジすべしという意見もありました。
・好きなことは取り組みやすい。スキルアップには、苦手なことを克服するべき(男性/その他/47歳)
・好きなことを仕事にするのも良いが、その狭い価値観で成長していくよりは自分の好きな事以外で経験を積んだ方がより豊かに感性を養うきっかけになる(男性/営業・販売/31歳)
一方、「好きなことを仕事にするべき」という人の意見は、「仕事は自分の人生の中でも大きな軸となるもの」、「大半の時間を費やすもの」なので、(1)好きでないと続かない、(2)好きなら少々辛くても乗り越えられる、(3)楽しく情熱を傾けられる という3つのポイントに集約されます。
■好きなことでないと、長続きしない
・1日の3分の1以上は仕事をして生きているので、好きでないと40年も続けられない(男性/会社経営・役員/45歳)
・好きこそものの上手なれという言葉があるから(男性/研究・開発/41歳)
■苦しくても頑張れる
・苦しい時でも頑張ることができる(男性/総務・人事・事務/43歳)
・嫌なことがあっても頑張れるから(男性/その他/41歳)
・好きなことを仕事にすると、つらいことがあっても乗り切れると思うから(女性/その他/44歳)
・好きなことを仕事にすればどんな困難も乗り越える努力をするから(女性/総務・人事・事務/42歳)
・好きなことだと苦に感じない。確かに大変なこともありますが、だからといって辞めたいという発想にはならない(男性/出版・マスコミ関係/49歳)
■楽しい、やりがいを感じられる
・イキイキ取り組めるから(男性/会社経営・役員/49歳)
・すきなことを仕事にすると楽しいから(男性/総務・人事・事務/48歳)
・やりがいを感じるから(男性/会社経営・役員/49歳)
・好きでなければ、情熱を傾けられない。大半の時間を費やす仕事に情熱がなければ、なんの人生なのか、意味がない(男性/公務員/40歳)
また、興味深かったのは、どちらの意見にもみられたのが、「仕事を好きになる努力も必要」ということ。
・好きな仕事ではなくても、好きな部分を見つけることが大切。好きな仕事は自分で作り出すものだと思うし、その方が人間の幅が広がると思う(女性/総務・人事・事務/48歳)
・仕事は「やらされる」ものではない。好きなことを仕事にする、もしくは仕事を好きになること。それはイコール「自分の人生を自分で歩くこと」だと思います(女性/その他/31歳)
・就いた仕事をまず好きになるように自分なりに努力をすること、どうしても好きになれなかったら、それは一生の仕事ではない(男性/総務・人事・事務/47歳)
職業を考えるにあたり、「好きなこと」がハッキリしている人は、まずそれを仕事にするのかしないのか。好きだから何があっても頑張れるのか、反対に好きだからこそ、“譲れないものは譲れない”と、義務になったら辛いのか、自分はどちらのタイプかを考えてみること。
そして「好きなこと」がボンヤリとしている人は、自分の「得意なこと」や、企業の「共感できるポイント」などを探すようにすると良いかも。そして、最初から好きなこと、興味をもてることでなくても、まずは好きになろうという意識で仕事をし続ける「能動的な姿勢」こそが大切であり、一生のやりがいにつながっていくものといえそうですね。
【調査概要】
方法:JOBRASS就活ニュース調べ(インターネット調査)
調査期間:2016年9月16日~2016年9月26日
対象:企業の採用担当者 計232名