就職活動では「育児休暇をしっかり取りたい」「キャリアをしっかり積みたい」「家庭と仕事を両立させたい」など自分が思い描くライフ プランが叶いやすい企業を見つけたいということは誰しも思うはず。いったいどのような企業が女性にとって働きやすいのでしょうか。今回は厚生労働省、企業の活動に焦点をあて「女性が働きやすい会社」について考えていきます。
厚生労働省では、男女雇用機会均等法をはじめとして「女性が働きやすい」「女性が活躍する社会」を推進するために、さまざまな法律に則って政策をすすめています。そのなかでも近年できた新しい法律や仕組みを紹介します。
2016年には女性の職場における活躍を推進する「女性活躍推進法」が制定されました。
この法律により301人以上の労働者を雇用する事業者は1.自社の女性の活躍の状況把握・課題分析、2.行動啓作の策定、3.情報の公表が義務付けられるようになりました。
つまり企業は「女性が活躍できるような仕組みづくり」「求職者への情報公開」を行う必要があるのです。そのなかでわたしたちが「女性が働きやすい企業」を把握するのに「くるみんマーク・えるぼしマーク」という基準を知っておくことをおすすめします。
・くるみんマーク…次世代育成支援対策推進法に基づく認定制度。このマークは「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証です。
・えるぼしマーク…今年4月にスタートした女性活躍推進法に基づく認定制度 「女性活躍推進に関する取組みの実施状況が優良な企業」と
して厚生労働大臣の認定を受けた証です。
【くるみんマーク】
くるみんマークが認定される基準は、雇用環境の整備、策定、計画・行動期間、男性の育児休業取得状況の他に、女性の育児休業取得率が
75%以上であること、3歳から小学校就学前の子を育てている場合、時短制度などの措置を取っていること、所定外労働削減のための措置 もしくは有給休暇取得の促進のための措置、短時間制社員制度、在宅勤務など多様な労働条件の整備のための措置となっています。2016年 6月末時点で2,570社が認定を受けている状況です。
さらに、2015年4月1日より、くるみん認定企業を対象に、支援の制度の導入や利用が進んでいる企業を評価するプラチナくるみん認定がはじまり、こちらは94社が認定を受けています。(2016年6月末時点)
プラチナくるみん認定基準は、くるみんマークの認定基準に加えて、男性労働者のうち、配偶者が出産した男性労働者のうち、育児休業を取得した人の割合が13%以上、育児目的の休暇制度を利用した人の30%以上かつ育児休業を取得した者1名以上を満たすなど具体的な数値達成が求められます。女性が注目することの多いくるみんマークですが、男性・労働時間が気になる求職者にとっても重要な指標となります。
▼くるみん認定・プラチナくるみん認定企業一覧はこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/jisedai/kijuntekigou/index.html”
【えるぼしマーク】
2016年4月1日に全面施行。1.採用、2.継続就業、3.労働時間等の働き方、4.管理職比率、5.多様なキャリアコースの5つの基準 で認定。どれほど「女性が活躍しているのか」の指標とすることができます。5月時点では国内にある従業員数301人以上の企業15,398社の
うち、85.0%の13,087社が提出、46社が認定されています。
▼えるぼしマーク認定企業一覧はこちら
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11902000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Koyoukintouseisakuka/0000124047.pdf
・女性の活躍を推進する企業を一目で知るには?
厚生労働省では委託事業として、女性活躍推進(ポジティブアクション)のための企業の取り組みを一目でわかるようにしたポータルサイト「ポジティブアクション応援サイト」もオープンしています。就職活動中に気になる、正社員に占める女性の割合や女性のトップの役職などの情報も見ることができます。一度確認してみましょう。
厚生労働省が中心となり、各省庁が女性活用、働きやすい企業を増やそうと政策を打ち立てています。
またさまざまなサービスを展開し企業の情報を閲覧できるようにしています。
まずは
1) 自分にとって「働きやすい企業の基準」とは何なのか
2) その基準がわかる指標は何かないか
という視点から公的機関が行っているサービスを上手く活用していきましょう。
次に女性積極活用企業として有名な企業の取り組みをいくつかみていきます。
今回は毎年女子学生に人気の化粧品メーカー、百貨店に属する企業をピックアップして紹介します。
(1)化粧品メーカー 資生堂の場合
国内外で社員数40,000人以上が在籍する日本を代表するメーカー、資生堂は取り扱っているサービスが化粧品ということもあり、女性が多く働いています。(※日本国内では83.0%が女性社員(全雇用形態))
資生堂は日経ウーマノミクス・プロジェクトが主催する2016年度「女性が活躍する会社BEST100」に3年連続で総合ランキング1位を受賞しています。
1990年以降、育児休業・育児時間制度等の社内制度の整備や、事業所内保育所の設置など
法律に先駆けた取り組みを進めてきました。2004年以降は経営戦略として女性活用推進を組み込んでいます。その結果、2016年1月の時点で女性リーダーの割合が27.0%と高い数値を出しており、資生堂では今後女性リーダー比率を30%に上げられるよう「一人別人材育成」を強化しています。
特徴的なのは「カンガルースタッフ体制の導入」です。接客をメインとしたビューティーコンサルタント(BC)は夜遅くまで働く必要があり、なかなか育児や介護に勤しむことが難しい職種でした。しかし、夕刻以降の店頭活動をサポートする「カンガルースタッフ」を派遣する体制を2007年に導入し、制度利用者は1000名を超えるほど社内でも浸透しています。これまで販売・接客職ではなかなか難しかった育児・介護との両立を実現させる糸口を作ったといってもよいでしょう。
その他にもワークライフバランスを実現するために「男女ともに育児・介護をしながらキャリアアップ」できる会社をめざし、「出産後8週間以内の父親の育児休業取得の促進」など女性だけではなく男性にとっても活用しやすいさまざまな制度を先だって取り入れているのが特徴です。
参考:https://www.shiseidogroup.jp/csr/labor/working.html
資生堂のHPをみると、人事関連データで離職率や、管理職の割合、労働時間・有給詩取得率など就活生が気になるデータをかなり詳しく掲載しています。興味のある人は必ずみておきましょう。
参考:https://www.shiseidogroup.jp/csr/performance/personnel/
また、2016年度の国内資生堂グループの職種別男女別の月例基本給与平均の実態は、管理職 男性100:女性98、総合職 男性100:女性100 、美容職 男性100:女性112の比率となっており、男女で差があるのではなくしっかりと能力・成果によって定められていることもわかります。(2016年1月1日時点)
参考:https://www.shiseidogroup.jp/csr/labor/employment.html
(2)百貨店 三越伊勢丹ホールディングスの場合
従業員数12000人以上が在籍する三越伊勢丹ホールディングスも女性の割合が70%と、女性が多く働く企業の一つです。三越伊勢丹ホール ディングスの取り組みは厚生労働省の女性の活躍に向けた取組を積極的に行っている企業の好事例として取り上げられているほどです。その報告書によると前提として経営トップが「女性を企業の力にしていく」と強いメッセージを発信し、人事部が一体となって取り組みをすすめていることによって「女性が不可欠な存在」であることを社内で価値観を共有しております。
また、育児に関わる従業員への取り組みとして、人事部に育児短時間勤務者による専任担当、育児関連制度相談窓口を設置。休業を取りやすい環境だけではなく「復職」のフォローも手厚く行っており、ワーキングセミナーやワーキングマザー情報交換会などを実施。出産・育児を理由として退職率の減少に繋げています。結果、「育児休業制度」を取得した従業員の出産後の復職率は9割を超えています。
さらに短時間勤務者に対しても、子供の面倒を見る人がいる場合は、フルタイムで働ける仕組みを設けるなど、「休業」に焦点があてられがちな女性への制度を「より充実し働きやすい環境」まで視点をあてて、制度をつくりあげていることが特徴です。
参考:https://www.imhds.co.jp/csr/2015/effort/labor_practices/wlb.html
(3)意外と知られていないあの企業も?
化粧品メーカー、百貨店、生保などは女性が働く割合が高く、みなさんのイメージでも「女性が働きやすい企業」として思いつきやすいのではないでしょうか。しかし現在、多くの企業で「女性が働きやすい企業」にするための取り組みを行っています。
例えば、商品・サービスから「男性のイメージ」が強い、株式会社オートバックスセブン。以前JOBRASSのイベントにも参加いただきましたが、産・育休後の復帰率は100%です。確かに男性社員の多い企業のため、化粧品メーカー・生保などと比較すると母数としては少ないですが、制度としてしっかりと整っている証拠です。こうした制度が整っていることは「女性を企業の戦力」としてしっかりと認識していることのひとつの指標であり、今思うような制度が無いとしても、今後社員の意見によっては柔軟に対応されることも考えられます。
みなさんが必要なことは「イメージだけでとらわれない」ということ。
男性向けの商品を作っているから、女性社員が少ないから=女性に対する支援が少ないとは限りません。先程紹介した厚生労働省のくるみんマーク・えるぼしマーク、ポジティブアクション応援サイトを活用したり、会社説明会などの説明を参考にしてみましょう。
また、内閣府男女共同参画局では女性の活躍に積極的に取り組んできた男性リーダーの方々が集まり「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」を2014年に設立。マルイグループやサイボウズ、カルビーなどの社長が名を連ねています。 こうした指標も参考にすると良いでしょう。
ポイントは2点です。
(1)女性ではなく「あなた」が働きやすい環境を考える
「女性」とひとくくりにし紹介をしていきましたが、一人ひとり働きやすい場所や働きやすいと思う環境はさまざま。まずはあなたにとって、どのような企業が働きやすいのかを考えていきましょう。
・キャリアアップがしやすい
・男女平等で評価される
・育児制度が整っている
・男性も育休が取れる
・研修制度がしっかりと整っている
・女性の管理職が多い
などなど、たくさんの視点が考えられます。皆さん自身が指標を作っていきましょう。
(2)制度に使われるのではなく、使いこなす
これはどのような制度でも共通ですが、「女性が働きやすい企業」と紹介されていたから入社する、という考え方は危険。なぜならばその制度・評価ありきで入社してしまうと、「業務自体」にやりがいを持ちづらく、いってしまえば「制度が変わるたびにモチベーションが変動する」ことにもつながってしまうからです。
大切なのは制度をつかいこなすこと。ある会社のある制度だけに囚われるのではなく、そもそもどのような制度があるのか、取り組みがあるのかを知っていくことで今後入社した際に制度を使いこなすことができます。
まずは、自分に合った企業に出会う努力をしていくことが大事です。