就職活動を始めると、まず必要になるのがエントリーシート。そして履歴書、面接と進んでいくのが、採用選考のオーソドックスなパターンです。そんな就職活動に共通して言えることは、履歴書や面接でほとんどの場合に自己PRを求められたり、自分の強みや長所・短所について質問されたりすることが多いという点。
「自分の強みはどのようなことだと思いますか?」
「あなたのセールスポイントは?」
「あなたの長所を教えて下さい。」
などと問われた場合、いったいどんな回答をするでしょうか。就活においては自己分析を行い、自身の強み、長所・短所を再認識しているはず。そんな中、強みとしてよく回答に登場するのが「誠実さ」です。
取りたてて「これには自信がある!」ということが思い浮かばない場合、どうしても多くの学生が同じような言葉を述べる傾向にあります。中でも多いのが、「粘り強さ」「誠実さ」「コミュニケーション力の高さ」など。確かに相手に良い印象を持たれそうですし、これらの裏付けとなる経験も、アルバイトやサークルなど機会が多いでしょう。
しかし本当に、この回答は面接官にとって魅力的に思えるのでしょうか。実際、たった1度や2度会った人が自ら述べる「誠実です」という言葉を、「なるほど、それは素晴らしい」と感じることがあるのか。そう考えると、少々疑問に感じる方は多いはずです。
誠実という言葉は、「他人や仕事に対して、真面目で真心がこもっていること」を表します。しかし仕事において真面目であることは、社会人として当然といえるかもしれません。そのため「強み=誠実さ」だけでは、「ありきたりだ」などと感じられてしまう可能性があります。就活戦線で勝ち残るためには、どうしても不安が残ってしまうことでしょう。
就活では一定の期間仕事を一緒にしたり、プライベートで付き合いを持ったりすることはできません。あくまでエントリーシートや履歴書などの書面、あるいは面接での質疑応答だけで、人柄を判断されてしまいます。インターンシップなら多少同じ時間を共有できますが、誠実であると判断してもらえるかは微妙なところでしょう。
また、誠実であることは、確かに人として素晴らしいことではありますが、企業から見た場合、それが利益に繋がるとはイメージしにくいものです。企業は営利を目的とした組織ですから、どうしても自社に利益をもたらす学生を採用したいと考えています。誠実で人柄が良くても、それが直接企業に貢献できるアピールでなければ、企業にとっては意味がありません。
では「誠実さ」しか強みが思いつかない場合、どうすれば良いのか……。ここで少し発想の転換をしてみましょう。ただ「誠実さ」だけを強調するのではなく、もう一つ、あるいは二つキーワードをプラスしてみるのです。あるいは自分にとってマイナスな面を「誠実さ」に結びつけてみることで、マイナス部分をプラスに転換できるかもしれません。
具体的に加えたいキーワードとしては、
・誠実に仕事をする一方で、企業に貢献するために結果も積極的に求めていく姿勢
・誠実かつ、どんな人とも協調しながら仕事を進めていくことができること
などが考えられます。そのためには、やはり基準が曖昧な言葉を並べるのではいけません。他者との関係性が見える具体的なエピソードを添え、あなたの人間力を企業側に分かりやすく伝えましょう。ここで3つ、具体例を挙げておきます。
<例文1>
「『あなたの強みは?』と聞かれたら『誠実さ』と答えます。その理由は、第一に友人達によくそう言われるためです。また、それに加えて、より良い結果を求める貪欲さも強みと考えています。学園祭においてサークルでカフェを出店した際、心をこめて淹れたコーヒーとサンドイッチの組み合わせで、売り上げ目標を達成することができました。終盤に客足が途切れたのですが、学園内を歩き回り、頑張って呼び込みを行ったことが、結果に繋がったのだと考えています。このように、最後まで諦めず、目標に向かって進むことができるのは、私にとっての大きな強みです。社会に出ても、心のこもった誠実な仕事、そして成果を追及する姿勢を忘れず、貪欲さを持って頑張ります。」
<例文2>
「私の強みは『誠実さ』だと思っています。しかし、それゆえのウィークポイントを指摘されることが少なくありません。それはフットワークの重さです。インテリアショップで販売のアルバイトをしていた時、先輩に『丁寧で心のこもった対応はとても良いのだが、もう少しテキパキと仕事を進めることも考えて動こう。』と忠告されました。お客様に商品とお店の良さを理解頂けるようにと気を付けるあまり、他の仕事にまで手が回らなくなっていたからです。しかし、クレームやキャンセルがほとんど無かったことを考えると、やはり誠実さは大切だと感じています。今後は、誠実かつフットワーク軽く働くことを肝に銘じていきたいと思います。」
<例文3>
「私は学生時代、カフェでアルバイトをしていました。アルバイトをする中で、どうすればお客様に喜んでもらえるかをいつも考えながら、そのことを意識して仕事に取り組んできました。ある日、列に並んで待っているお客様にメニューを見てもらいオーダーを尋ねました。すると、そのお客様は何がお勧めかを聞いてこられました。ビジネスで通りかかって入店された初めて利用するお客様でしたので、年齢なども考慮してある商品をお勧めしました。この時の想定外の対応から、私は店に常備されているものとは別に、一言コメントを付けたメニューを作りました。コメントは味や飲みやすさを書くだけでなく、「主婦の方におすすめ」や「年配男性のごひいき」など、どんな人に好まれているかをわかるようにして、悩んでいるお客様が選びやすくしました。この試みをすることで、お客様からもアドバイスやコメントをさらにいただき、お客様が何を求めているかを知ることができました。この商品の提案方法によって、月間の売上をアップさせることができました。」
自己PRの場では、相手から良い印象を受けようとするあまり、耳触りの良い曖昧な言葉が使われがちです。しかし、それを裏付けられる実際の行動がなければ、単なる言葉の羅列に過ぎません。「誠実さ」という強みも、プラスアルファの要素を加えることで、また異なる印象を与えることができるでしょう。ぜひ企業側の目線に立ち、「何を伝えれば、誠実さが企業にとって役立つアピールになるか」を考えてみてください。
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