エントリーシート改造講座5回目の今回は体育会系についてです。
一般的に体育会系は就活に有利、とされています。ところが、同じ体育会系でもESが通過する学生もいれば、そうでない学生がいます。
それから、当の体育会系の学生からすれば、諸説入り乱れる噂に戸惑います。
「レギュラーなら通りやすい、と聞いた」
「やはり団体競技なら有利。個人競技は不利らしい」
では、実際のところはどうか。そして、体育会系ネタを書くとしたらどうすればいいか、解説していきます。
今回の参加者
▽犬山達郎さん(日本大学)
※名前は仮名です
犬山さん:よろしくお願いしますっ!
石渡:元気がいいね。体育会系?
犬山さん:はい、サッカー部です。エントリーシートを添削していただきたいのですが、やはり、大学時代の話を書いた方がいいのでしょうか?
石渡:見る前から質問?うーん、まあ、諸説あるけど、できれば大学時代の方がいいかな。学生なんだし。ただ、設問によっては、高校時代の話でも十分だけど。
犬山さん:そうですか、僕が書いたのは高校やそれ以前の話なんです。
石渡:なるほど、それでは拝見しましょう。
犬山さん:はい、こちらです。志望企業は商社の総合職、お題は「これまでに頑張ったこと」です(制限文字数・400字)。
●犬山さん・作成:
石渡:犬山君は小学校・中学校時代が一番良かった?
犬山さん:そうですね。キャプテンでしたし、周囲からも慕われていました。高校、大学はそれほど大したことはやっていないので…。
石渡:役職に就いていないことは不満だった?
犬山さん:いえ、そんなことは。高校、大学ともレベルが高くて。他の選手より技量が劣ることは自分がわかっています。だから役職に就いていないことも納得していますし、そこに不満はありません。
石渡:高校、大学の話をほぼ書かない、ということはあまりいい思い出ではなかった?
犬山さん:頑張ってきたことは僕にとっていい思い出です。
石渡:いい思い出なのに、それを書かない、となると、よほど不幸だった、とか、色々考えてしまうのだけど、どう?
犬山さん:えっ…。
犬山さん:小中高の話を書くのはダメ、ということでしょうか。
石渡:書いちゃダメ、というわけではないよ。この企業のお題も「これまでに頑張ってきたこと」だからね。大学の話ではなく、高校全の話を書いても問題はない。ただ、中学校時代のキャプテンの話も、ちょっと平凡すぎる割に長すぎ。となると、高校・大学ではよほど何もなかったかな、と勘繰ってしまうのさ。
犬山さん:実は役職に就いていた方が有利、と聞いたのです。役職だと小・中とはあっても、高校・大学以降はないので、だったら中学校の話、と思いました。
石渡:大学のサッカー部では、どんな感じだった?楽しかった?つらかった?
犬山さん:あー、楽しかったです。練習はしんどかったですけど。
石渡:チームの雰囲気はどんな感じだった?
犬山さん:僕からすれば、技術が高い代わりに、ちょっとおとなしい点が気になりました。ちょっとミスが続くと、モチベーションも下がってしまって。
石渡:そういうとき、犬山君はどうしたの?
犬山さん:声出しですね。試合に出るレギュラーでも、ベンチにいても、どんどん声を出して、雰囲気をよくするようにしました。ヤジ将軍、なんて言われたこともあります。
石渡:声を掛けると結構変わる?
犬山さん:そうですね、試合中にも、「あのパスはないだろ」とか、相手を委縮させてしまうタイプがいます。私が「どんどん出せ~」とか、前向きな声出しをすると、結構変わりますね。その逆もありますし。
石渡:逆って?
犬山さん:相手チームにも、モチベーションが落ちている選手がいます。たとえば、右サイドのディフェンダーがへばっていたら、左サイドにボールが集められていても、「右に出せ!」とか。それで得点につながることが結構あります。
石渡:結構、チームメイトや相手のことを観察するものなんだね。
石渡:犬山君は観察眼に優れているんだね。
犬山さん:自分で言うのもなんですが、そこは自信があります。それと、もう1点、自信があって。
石渡:ほう。
犬山さん:割り切る力、と言いますか、合理性はあるかな、と思います。
石渡:どういうこと?
犬山さん:私の場合、高校ではキャプテンになれず、役職にも就けませんでした。ただ、意外と腐らなかったです。技量の違いなどは、はっきりとしていましたし。
石渡:それが合理性?
犬山さん:はい。別にみんながみんな、キャプテンなり副キャプテンなりに、なれるわけではありません。なれないから、と言って腐るのもどうかな、と。それなら、自分にできることをやる、チームのためにできることをやって、チーム全体を盛り上げる方が前向きかなあ、と思いまして。
石渡:将棋の駒みたいに割り切った、ということだね。
犬山さん:駒でいいかな、と。中学生のキャプテンだったとき、我の強いタイプに苦労しました。逆の立場になったとき、それはないかなって。それよりも、与えられたポジションで頑張り、チームを第一に考えた方が、と。それが合理性です。
石渡:高校時代から、そういう割り切りができたの?なんかすごいね。
犬山さん:中学生のときの経験と、それから実はスポーツ漫画の影響です。
石渡:いや、それでも大したものだよ。で、そういう話をなんで書こうと思わなかったわけ?
犬山さん:うーん、やはりキャプテンとか役職とか、わかりやすい話の方がいい、と噂に聞いたのでそれに影響されました。
石渡:せっかく、犬山君らしい話があって、企業も欲しがる人材のポイントに当てはまるのにもったいない。
●石渡・改造例:
犬山さん:キャプテンじゃなくても、うまく書けるものなんですね。
石渡:せっかく、大学時代、頑張ってきたのだから、それをちゃんと書くべきだよ。
犬山さん:ありがとうございました!
<お知らせ>
石渡嶺司さんからエントリーシートの添削指導や、悩み相談を受けたい就活生の方は、下記のメールアドレスに氏名・メールアドレス・添削または相談内容などをお知らせください。なお、必ず掲載ないし返信することをお約束するものではありません。
jobrass_magazine@aidem.co.jp
【講演情報】
8月18日(金)13時~15時30分 【アイデム西日本(大阪・本町)】2019年・2020年・2021年卒対象「大学1・2・3年生が就活を前に考えたい大学生活」
>予約はこちら
9月5日(火)13時~18時【アイデム西日本(大阪・本町)】2019年・2020年・2021年卒対象
「世界一・日本一・関西一企業大集合@関西」半日で業界研究&人事と交流が出来る!
>予約はこちら
石渡嶺司(いしわたり れいじ)
大学ジャーナリスト
1975年生まれ。北海道札幌市出身。1999年東洋大学社会学部卒業後、日用雑貨の実演販売、編集プロダクション勤務などを経て2003年から現職。大学・就活関連の取材、執筆活動を続ける。当初から「大学勤務も採用担当者経験もないくせに」と批判されているが、14年経った現在も仕事が減りそうにない変わり種。
3月からJOBRASSマガジンの他、日本経済新聞サイト(日経カレッジカフェ)でも連載開始。
著書『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書) 、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)、『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『教員採用のカラクリ』(共著、中公新書ラクレ)など多数。