ぼちぼち面接などの選考に入りだす時期、皆さんいかがおすごしでしょうか?
面接も初期選考のグループ面接だとあまり言われませんが、中盤以降、特に個人面接で必ず出てくる定型文が今回のお題。すなわち、
「最後に何かご質問はありますか?」
就活生からすれば、何を質問すればいいのか、あるいは黙っていればいいのか、わからない質問です。
就活マニュアル本・サイトでも、
「黙っているのは最悪、落ちる元」
「いや、特に質問がないならないで構わない」
など、きれいに分かれます。
では、実際のところはどうか、学生の対応について勝手にランキングしました。
例によってと言いますか、このランキング、私、石渡が勝手にランク付けしているだけで、JOBRASS編集部は関与するものではありません。
結論から言えば、意図はあまりないですね。
いわゆるテンプレというか、定型文というか。
とりあえず、最後に付けておこう、みたいな。
そのため、質問がなかったとしても、それはそれで大きなマイナスにはならないでしょう。
ときどき、
「最後にご質問は?に質問できない学生はコミュ能力が低いと見られて評価が下がる」
と断じるカウンセラーの方がいます。
これは就活マニュアル本・サイトでも同じ。
そうかあ? と私は思うわけです。
むしろ、下手な質問をすることで、ネガティブにとらえられる方がよっぽど評価は落ちるはず。
今回のランキングでは、その様子をそれぞれ再現してみました。
なお、人事の思いの再現(括弧の部分)にあたっては相当「盛って」います。実際にあったかどうかは神のみぞ知るということにしましょう。現状と異なる場合は現状を優先します(不動産屋的決まり文句)。
面接評価への影響:大幅な減点
コメント:2000年代後半から、選考中に学生に対してフィードバックをする企業が増えました。それもあってか、フィードバックのない企業の選考でも「最後の質問」に絡めて聞く学生がいます。
が、これはあまりうまい手ではなく、大幅な減点。
下手すれば、この質問によって落ちる、ということもあり得ます。
フィードバックがない企業は、学生にわざわざフィードバックしても意味がない、と考えてのことかもしれません。
それから、企業によっては、面接担当者ではなく、面接会場外で採用担当者がフィードバックをする、ということもあります。
いずれにせよ、学生の方から、それも面接でわざわざ聞く内容ではないでしょう。
なお、フィードバックですが、本音ベースで話す企業は少数派。大体は当たり障りのない話か、注意点をものすごく包み込んで話す程度か、どちらかです。どの程度、包み込むか、と言えば、ちょい高めの居酒屋の定番メニュー・だし巻き卵と同じくらい、フワフワです。
で、そういう包み方なので学生の大半は真意に気づかないまま、というのがよくあるパターンです。
面接評価への影響:大幅な減点
コメント:何を聞いていいかわからず、福利厚生や残業時間などを聞く学生がいます。採用担当者によっては、フィードバック要求より大きく減点することも。
というのも、企業のサイトなどを調べればわかる話だからです。
仮に、出ていなかったとして、それを面接の場で聞いてどうなのか、という問題があります。
残業時間が月平均20時間ならよくて30時間なら入る気がない、ということでしょうか。
保養所は箱根にあれば良くて、草津だと良くない、ということでしょうか?
そんなわけないでしょう。残業時間の抑制はどの企業でも課題です。が、あくまでも平均値。繁忙期の月だと残業抑制がどうこう、と言っていられないのが現実です。
保養所もどこにあるのか、など些細な話です。社員によっては保養所などより給料を上げてほしい、という人だっているでしょうし。
どうしても気になるのであれば、面接とは無関係に採用担当者などに聞く方がまだましです。
面接評価への影響:大幅な減点~小幅な減点
コメント:志望企業の事業展開などは気になるところです。最後の質問でちょっと聞いてみよう、と考える心境はわからなくはありません。
が、企業側からすれば、選考に参加する学生は、社員でもなければビジネスを共有する関係企業でもありません。単なる部外者です。
部外者からビジネスの細かい点や今後の展開を聞かれてもそうそう答えられないのは当たり前。
相手が答えづらい内容は聞かない方が無難です。
このパターン、似たところだと、ビジネス展開以外にも、
「この企業に入社していなければどこに入社していましたか?」
「今、働いていて不満なところを教えてください」
「社長の尊敬できるところはどこですか」
などを聞いてくる学生もいます。やはり評価は低くなってしまいます。
ただ、福利厚生やフィードバックを聞く質問よりはまだましです。企業への関心はある、として小幅な減点にとどまるか、聞き方によっては中立評価ないし加点となる場合もあります。
面接評価への影響:プラスマイナスゼロ~わずかな加点
コメント:特に質問が思いつかない、ということであれば、「特にありません」で十分です。
ただ、思いつかないなら思いつかないで、うまくコミュニケーションは取りたいところ。次の2例をどうぞ。
学生A「特にありません。
学生B「特にありません。本日は最後まで私のつたない話を聞いていただいてありがとうございました」
同じ返答内容にしても、Bの方がきれいな返し方と思いません?
あたり。これで十分です。
面接評価への影響:小幅な減点~大幅な加点
コメント:「特になし」をきれいに返すのと同じ1位としました。おそらく、採用担当者や就職カウンセラーによってはこれを単独1位とするはず。
うまいのは、質問をぶつけるのではなく、面接の延長を申し出ている点です。しかも、自分の話をする、という前提、すなわち、学生側に主導権があります。そのため、加点評価を得やすい、とも言えます。
この「補足」パターン、減点評価になってしまう学生もいます。そこで私は同率1位としました。
減点評価となるのは、延長戦であることを理解していない学生です。学生からすれば、あれも言えなかった、これも言えなかった、と思うからこその延長戦です。
しかし、延長戦であればこそ、時間は限られています。そこにあれもこれもと長々話しても、「こいつ、話、長いなあ」で終わり。
この「補足」パターン、あくまでも延長戦なので、どうしても話すのはたくさんあっても1ネタ、数分話して切り上げることが重要です。
面接評価への影響:小幅な減点~小幅な加点
コメント:似たパターンだと、「ストレス解消方法を教えてください」など面接担当者の個人への質問です。
このパターン、まず、「それ聞いてどうするの?」というツッコミがあります。
そこで、きちんと返せる理由が必要となります。
お勧め本だと、
「色々勉強したいので毎回、聞いています」
とか。
ストレス解消法なら、
「オンとオフの切り替えが大事、と思うので」
とか。
かくのごとく、質問したかった理由をクリアしたとしても、別の問題があります。
本だと、読んでいて当たり前というものもあれば、面接担当者によっては嫌いなものもあります。
読んでいて当たり前の本を読んでいないとわかれば、
「あれ、本好き、という割に意外と勉強不足なのかな」
と、評価が下がります。
嫌いな本も同じ。
一方、うまくはまれば好感度が上がり、加点評価になりやすい、とも言えます。
ここまでお読みいただいてお気づきと思いますが、「最後の質問」、聞くとしたら単に「気になった点を質問すればいい」ということではありません。
面接会場の空気感を壊さないように、しかも相手の立場もちゃんと考える。そのうえで自分を見てもらうことが必要となる質問、それが「最後の質問」です。
私であれば、リスクを取れる自信があるなら個人ネタ、そうでないなら、「補足」か「特になし」ですね。
最終面接のみ限定。しかも、本当に第一志望の企業、という前提条件付きであれば、私なら最終面接で、補足パターンを使います。
仮に自己PRなど十分に話せていたとしても、こんな風に持っていきます。
それで、自分の言葉でなぜ第一志望か、自分なりの思いを補足として話していくのです。
ちなみに、この手法、学生に話をして、試した学生はほぼ内定をもらっています。
理由は簡単、石渡のアドバイスがすごいから。
では、ありません。
企業にもよりますが、最終選考では、志望度の高さも推し量るポイントです。
正真正銘の第一志望企業であり、その思いを最終選考で話せる学生は企業からすればポイントが高いのです。
よほど、面接の受け答えで大失敗していない限り、内定が取れる確率は上がらない訳がありません。
それでは最後にご質問があればどうぞ。
石渡嶺司(いしわたり れいじ)
大学ジャーナリスト
1975年生まれ。北海道札幌市出身。1999年東洋大学社会学部卒業後、日用雑貨の実演販売、編集プロダクション勤務などを経て2003年から現職。大学・就活関連の取材、執筆活動を続ける。当初から「大学勤務も採用担当者経験もないくせに」と批判されているが、14年経った現在も仕事が減りそうにない変わり種。
著書『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書) 、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)、『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『教員採用のカラクリ』(共著、中公新書ラクレ)など多数。