グループディスカッションにはいくつかの役割があります。司会、書記、タイムキーパーなどです。どの役割をするかで評価が変わるのか、というのは気にかかる所だと思います。実は、どんな役割をするにしても重要なのはその役割の果たし方にかかっているので、役割を全うできなければ、評価はされません。では、タイムキーパーになった時には、どういったことに気を付ければよいのでしょうか。考えてみましょう。
まず、グループディスカッションを企業はなぜ行うのでしょうか。応募者が多い企業の場合、グループディスカッションを行うことにより、効率的に選考を進められます。また、複数の学生を同時に見ることができるため、比較がしやすく、評価がつけやすくなります。また、個別面接のように、採用担当者によって評価のばらつきがあるといったことが少なく、同じ基準で選べます。
グループディスカッションは、複数の志望者が企業の指定するテーマをグループで話し合います。最後の発表だけでなく、話し合っている様子も面接官の観察対象になります。グループディスカッションで選ばれるテーマは、ほとんどの場合、正しい答えが一つではありません。ですから、答えがどうこうではなく、話し合いのプロセスの方が重要です。企業が、グループディスカッションを通して知りたいのは、志望者の本来の姿なのです。グループディスカッションでは、初対面同士の就活生がグループを作り、他者との関係を作り上げながら、結果に結びつけていくという活動を行います。その過程で、志望者の本来の姿や、組織の中でどのような動きをするのかを見ることができるのです。
グループディスカッションでは、自分一人がいくら頑張っても、グループとして機能していないと、全員が落選してしまうことがあります。あくまでも、「グループ」で「ディスカッション」する場なので、グループの半数がほとんどしゃべらなかったりすると、グループとして評価されず、グループディスカッションを通過できなくなってしまいます。逆に、グループの連携がうまくいくと、全員が通過することもできるのです。アピールするべきはコミュニケーション能力と協調性です。うまくいくと、全員の評価が高くなり、全員通過ということもあり得るだけに、グループディスカッションを一緒に行うメンバーは、選考のライバルというよりも協力者だと思うようにしましょう。
グループディスカッションの役割を決める際、司会や発表者といった、目立つ仕事をしたがる人が多い中、実は、「タイムキーパー」はポイントの高い役割です。「司会」ほど難易度は高くないものの、要所要所で発言をしつつ、役割を果たすこともできる、グループディスカッションの成功に貢献しつつ、アピールすることもできる役割なのです。
タイムキーパーはなぜ必要なのでしょうか。グループディスカッションは、決められた時間の中で議論を行い、結論を導き出さなくてはいけません。ですから、議論を始める前にまず時間配分を決める必要があります。自由に意見やアイデアを出しあう時間が10分、出た意見やアイデアを整理したり、それぞれのアイデアに関して議論したりする時間が10分、議論の的を絞るのに5分、まとめに5分といった形で、時間配分を決めます。タイムキーパーは、この決めた時間通りに話し合いが進むようにする「司令塔」のような役割を果たします。タイムキーパーがいないと、話し合いを時間内に収めることができなかったり、結論を出すことができなかったりするおそれがあります。グループディスカッションを成功させるために、タイムキーパーは不可欠なのです。
では、タイムキーパーの仕事は具体的にどういったことでしょうか。「10分経ちました」、とか、「10分経過」という風に、ただ時間を言うだけではアラーム機能と同じで、「役割」としては不十分です。「アイデアを出す時間、残りあと2分です。」「10分経過しました、次の段階に進みましょう。」といった形で、最初に決めた時間配分通りに話し合いが進んでいくよう、動かしていくのがタイムキーパーの仕事なのです。場合によっては、「議論が盛り上がっているところ申し訳ないけれど、最初に決めたまとめの時間になるので、対立点と合意点を整理して、チームとしての結論を出す方に集中しませんか?」といった、建設的な意見のような形で、話し合いを促すこともできるかもしれません。
あらかじめ決めた時間の管理が仕事なら、簡単な仕事のように見えるかもしれません。ところが、タイムキーパーの仕事は、かなり難しく、責任も大きな役割です。
1.時間管理をミスするとそのまま失敗につながってしまう。
タイムキーパーが時間管理をミスして、アイデア出しを10分ではなく、3分オーバーしてしまったとしましょう。そうすると、まとめの時間を3分減らすことになってしまいます。まとめは最も重要であるにもかかわらず、拙速なまとめで済ませることになってしまいます。きちんとまとめられないと、発表がうまく行かず、グループとしての評価が大きく下がってしまうかもしれません。
2.時間だけでは貢献できない
ただ時間をアナウンスするだけでは、議論に貢献できません。タイムキーパーであっても、議論に参加しなくては、評価されません。一言も発言しないまま、残り時間をアナウンスしているだけでは、次のステージに進めません。タイムキーパーも積極的に議論に参加する必要がありますが、議論に集中しすぎると、時間のことを失念してしまいがちです。そうならないために、時間と議論の進み具合を見比べ、時間配分を調整する、議論を先に進めるような意見を出すようにしましょう。
3.時間管理がうまくいっていないと思われると評価が下がる
議論が盛り上がると、時間をオーバーしがちになります。アイデアがつぎからつぎへと出てくると、途中で切るのは失礼になる気がしますよね。そんな時には、自分から提案していくことが必要になります。「アイデアが沢山出ているのでせっかくなので2分延ばして、その分、まとめのプレ準備を短くしませんか」といった形で、自分から調整するなら、マイナス評価を受けないですみます。
グループディスカッションの役割に関するアンケートで、有利になる役割として「タイムキーパー」を選んだ先輩たちは、「社会人は時間管理能力を求められるので」、「司会者より意外と冷静な目線で入られる」、「実は中心となってまとめる存在だから」といった理由を挙げていました。社会人として働く場においても、議論しながらも冷静に時間配分や議論の進み具合を気に掛ける必要があるタイムキーパーの資質は必要なものだと言えます。グループディスカッションで、タイムキーパーの役割をきちんとこなし、議論がうまく進むよう時間管理をし、グループに貢献することができるなら、きっと評価してもらうことができるはずです。
タイムキーパーの評価ポイントは、しつこいようですが、ディスカッションの方向性を決定づけるような時間管理、アナウンスができるかどうかです。普段から作業をする際に、「10分でこれをして、次に30分でこれ、最後に20分でまとめられれば1時間以内に収められる。」といった形で、時間を意識しながら作業することを癖づけておくなら、就活だけでなく、就職してからも役立つことでしょう。