「ここだ!」と思う企業に内定が出て就活を終えられたあなた、おめでとうございます! さて、就職活動を気持ちよく終えるには、入社する企業を1社に決めて、それ以外に内定をいただいた企業にはきちんと内定辞退の連絡をしましょう。
家に帰るまでが遠足、といったようにきちんと連絡を終えるまでが就職活動です。決まった作法があるわけではありませんが、企業に内定辞退の連絡をするときにどうすればいいのか?と迷ってタイミングを引き延ばしてしまう人も多いようです。
そこで、今回は内定を辞退するときの方法について説明します。これを読んだみなさんが少しでも気が楽になり、携帯電話を握りしめて気が重くなる時間が無くなればと思います。
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内定辞退の連絡方法は何がいいのでしょうか? 選考プロセス途中の辞退であれば相手の手間を取らせないようにメールで十分でしょう(ただし、選考当日にメールでの辞退連絡はだめです)。内定をいただいた企業に対して辞退する場合は、双方向の会話ができて直接相手に言葉を伝えられる電話がいいでしょう。人によっては、ちょっと勇気がいるかもしれませんが誠意をもって対応してください。
企業に電話をするときは、電話をする時間を事前に調整する必要はありませんが、忙しい時間を避けて連絡をするようにします。以下の時間帯は避けた方が無難です。
1. 業務が開始して30分~1時間程度
始業時間からすぐの時間は、朝会や前日までの対応、当日準備で慌ただしくなります。業種にもよりますが、午前中の電話は10時半頃からを目安にしましょう。
2. お昼の時間
12時~13時すぎは、昼食の時間で不在がちになります。
3. 業務後の遅い時間
基本的には業務時間内の18時までに連絡します。業種にもよりますが、20時以降の時間帯はすでに担当者が帰っている可能性も高く時間も遅いので、翌日以降が無難です。
また、電話をするときは周りがざわついていない、落ち着いて話せる場所で電話をかけましょう。
少し気が楽になる話をします。あなたは、人生はじめての就職活動で、内定辞退の電話ひとつにしても緊張してしまうかもしれませんが、人事は内定辞退の電話には慣れっこです。だからそんなに構える必要はありません。
私も企業で採用担当をしていた時は、もちろん内定を出した人には全員入社してほしいと思っていましたし、その中でも特にこの人には入社してほしいなと思っている人もいました。だからといって、ほかにもたくさんの選択肢がある就職活動生ですから、企業の思惑通りになるわけでもないことも十分理解しています。
つまり、何度もフラれたことのある理解ある大人ですから、必要以上に怒られるのではないかとか引き留められるのではないかと不安がる必要はないです。これまで一度でも内定辞退の電話をしたことのある人は、よく「想像よりも、相手の反応がとてもあっさりしていました。」と言います。誠実な対応は大切ですが、重くとらえすぎないことです。
ではイメージしやすいように、実際の会話例を紹介します。もちろん関係性や担当者の方によっていろいろなコミュニケーションが考えられますが、一例として参考にしてください。
学生:海山大学の佐藤美香と申します。採用担当の山下様はいらっしゃいますか?
社員:はい、しばらくお待ちください。
人事:はい、山下です。
学生:海山大学の佐藤です。お忙しい所恐れ入りますが、ただいまお時間少々よろしいでしょうか。
人事:はい、大丈夫ですよ。
学生:ありがとうございます。先日は内定通知を頂きありがとうございました。誠に申し訳ありませんが、今回、御社の内定を辞退させて頂きたくご連絡いたしました。
人事:そうですか、それはとても残念ですが……。辞退の理由を教えて頂けますか?
学生:はい。他社より内定を頂き、そちらにお世話になることに決めました。
人事:そうですか、どちらの企業に入社されるのですか?
学生:東京工業株式会社です。元々希望していたメーカーで働きたいと思い決めました。
人事:もし弊社に何か不安があってのことでしたら、社員と話す場も設けられますが、気持ちは変わりませんか?
学生:はい、大変悩みましたが、よく考えて決断いたしました。
人事:わかりました。佐藤さんの意志ですからしょうがないですね。そちらで頑張ってくださいね。
学生:はい。ありがとうございます。御社に内定をいただき、内定までにもたくさんの社員の方にお話しをきかせていただいたことにとても感謝しています。この度は本当に申し訳ありませんでした。失礼いたします。
このように、内定辞退をするときは、担当の方につないでもらってから結論を伝えます。うまく話そうとするのではなく、感謝と謝罪の気持ちをもって正直に話すのがいいでしょう。
相手に入社する企業名を聞かれた場合は、話してしまって問題ありません。企業から、あなたの内定先に連絡がいったりすることはありません。内定先を聞く理由ですが、人事は内定を出した人がどこの企業に行くのかということを情報として蓄積して、今後の採用活動の参考にしています。どんな企業が新卒採用をする上で競合になるのか、というのは人事にとってはとても参考になる情報です。
内定先の企業によっては、他社に対して入社する企業の名前を出さないでほしいと言われることがあるようです。その時は「内定先企業から、企業名をお伝えしないように言われているので私からはお伝えできないのですが、○○業界の企業の総合職として採用していただきました。」などと業界や職種までに留めるなど気を使った伝え方をするのもいいでしょう。
内定辞退は、先延ばしをしても誰も得しません。企業は、毎年何人の採用をするかという目標をもって新卒採用活動をしています。ある程度、内定辞退をする人が発生するのは予想済みで採用活動をしています。そうはいっても、入社しないのにいつまでも内定を保持しているのは企業にも採用のチャンスを失わせてしまうことになるかもしれません。
自分も連絡をしないまま放置しているのはいまいちスッキリしないはずです。ほかの企業に入社することに決めたら、企業から催促されるのを待つのではなく、自分からすみやかに内定辞退の連絡をしましょう。
また、もしどの企業に入社するかを迷っている段階で企業の話をもう少し聞きたいのであれば、遠慮なく企業の人事担当者に連絡を取って相談しましょう。不安に思っているところについて説明の機会を持ってくれたり現場の社員に会わせてくれたりする企業もあります。企業ごとに対応は違いますが、自分のためにも内定を出してくれた企業のためにも、正直に話し、誠実な対応をすることをおすすめします。
入社しないことになっても、たくさんの企業の中からあなたが応募して、またたくさんの応募者の中から一緒に働きたいというオファーをくれた企業です。後々何かご縁があって関わる可能性もゼロではありませんから、気持ちのいい対応をしたいものです。この記事を読んでポイントを理解できたら、すぐに行動しましょう。
井上 真里(いのうえ まり)
キャリアアドバイザー。石川県金沢市生まれ。慶応義塾大学経済学部在学中より、人材教育企業にて学生キャリア支援のサポートに関わり、卒業後は東証一部上場の富裕層向け住宅メーカー・IT企業にて中途・新卒社員採用をはじめ、教育研修、異動や退職など学生のキャリア選択から、社会人のキャリアに関する領域を幅広く経験。新入社員マナー研修講師としても高い支持を受ける。現在は全国の高校生や大学生を対象に面接トレーニング、キャリア、マナー分野でのマンツーマン指導やセミナーを多数開催。毎年マンツーマン指導や勉強会に参加した200名以上の大学生が、大手企業・人気ベンチャー企業に複数内定している。