今やインターンシップに参加する大学4年生の割合は6割を超えていると言われています。本来のインターンシップの目的は業界研究、就業体験により学生が就業意欲を高める目的で実施されていて、経団連の「採用選考に関する指針の手引き」にも、採用選考活動とは一切関係ないと謳っています。しかし実際のところ、企業側も学生側もインターンシップについては「採用(内定)」を視野に入れた定番行事になりつつありますね。今回のテーマはそんな学生、企業双方の本音や建前、私の人事時代の経験も含めてお伝えしたいと思います。
インターンシップへの参加不参加は、(一部単位取得で必須な場合を除き)あくまで自由です。就活を視野に入れて考えているのであれば、間違いなく参加したほうが良いと言えます。というのも参加するメリットが沢山あるからなのです。
1. 業界や企業のリアルな状況がわかる
2. 就職活動の練習が沢山出来る
3. 職場や社会人になるイメージがしやすくなる
4. 自分の長所や短所、得意や不得意がわかる
5. 人事の方に名前を覚えて貰える
ざっと挙げただけでもこんなにメリットがあるからです。本やネットや勉強会などのセミナーと比較しても圧倒的に勉強になると思います。
建前としては「自社の採用活動につなげてはならない」という企業同士の協定があるため、「職業体験の場として活用して欲しい」「業界研究に役立てて欲しい」「社会人の礼儀やマナーを体験して欲しい」「社会人の仕事の進め方を学んで欲しい」「社会貢献活動の一環である」といった目的で実施をしていると思います。
ただ、インターンシップを実施する企業は採用活動にも力を入れている場合が多いため、企業側の本音としては「広く自社を知って貰う機会にしたい」「学生と直接交流出来るチャンス」「面接や書類などではわからない学生の個性や能力を知ることが出来る」などの目的で実施している場合も多く、直接的ではないにせよ何らかの形で自社の採用活動に繋げていきたいとするのが本音ではないかと思います。
結論から言えば当然必要だと思います。変に考えるよりも普通に「人として」という観点で考えれば当然の判断かと思います。インターンシップを開催するということは、社員ではない部外者を社内に雇い入れる事。たとえ1日だけでも、1週間のものでも同じく準備や運営、コスト、手間の面で相当な手間と負荷がかかります。上記のように採用活動を視野に入れたインターンシップであったとしても同じことです。
別の話で例えれば、実家などに親戚や友人が泊まりに来る時の保護者の方の感覚と少し似ていて、楽しい思い出ができたり家族が喜んだりとメリットは沢山あるけれど、共同生活をしたり、炊事洗濯、掃除に至るまで、準備や後片付けについても手間や気遣いが増えますよね。企業の方が相手であれば(家族でもない関係の方ですから笑)なおさらのこと「お礼状を出す」という行為は当然の事ではないかと思います。
お礼状を出したからといって評価は上がりません。また、お礼状を出していないからと言って評価が下がることもありません。あくまでも採用活動時の面接や書類、テストで判断するからです。しかし、人事担当者も人ですから「良いイメージを持っているかどうか?」という意味ではお礼状を出した人の方が少し有利かもしれませんという程度です。仮に1つの募集枠を、全く同じ評価の2人の中から選ばなければならないケースがあったとします。こんなケースは稀ですが、お礼状1枚でも有利に働く可能性があるので、軽視はできないですよね。
メールよりも手紙で出すことをお勧めします。メールでのお礼を僕も何度も頂いていましたが、正直誰が送ってくれたか、内容も含めてほとんど記憶に残っていません(当時送ってくれた方ゴメンなさい)。メールの特性として手間やスピードの面で便利な分、メッセージを貰う行為として有り難みにかけてしまうからでしょうか。手紙を送ってくれた人については今でも記憶に残るくらい覚えていて、印象も良く、親近感も沸いたりします。手紙は手間暇かかることもわかりますし、本人の直筆は、誰からであっても嬉しいものです。(仮に字に自信がなくとも、パソコンなどに頼らずに直筆で心を込めて書くことを強くお勧めします!)やはり手紙を送ってくださった方の印象はどうしても良くなります。
手紙を直筆で出すことでどんな印象を与えることが出来るでしょうか?私の経験で述べますと、
1. 自社に対する入社意欲や好意を感じる。
2. 人として誠実に感じる。
3. マメで丁寧な印象を持つ。
4. 内容によってですが、感受性や気づき力の高さを知ることができる。
5. (1〜4を踏まえて、)相対的に仕事に対する熱意、自社に対する熱意、本人そのものから感じる熱さ・エネルギーを感じたりします。
文章はその人の人柄や考え、その熱量が全て感じ取ることができます。文章の上手下手や、文字の上手下手や、便箋や封筒のチョイスも多少は大事な要素ではありますが、一番大事なことはしっかりと自分の気持ちを乗せて書く「ハートで書く(クサい!笑)」事が大事ですね。ラブレターと同じです。
自分らしい文章を書くという意味で何を書けば良いのかな?と戸惑う人も多いと思います。心配要りません、とても簡単な事です。
・インターンシップに参加して良かったと思う理由
・参加して勉強になった事、新たに発見した事
・社員の方から学んだ事、感謝しているエピソード
をできるだけ具体的に書いてみてください。ただそれだけでも自分らしいメッセージを作る事が出来ます!
たまにいるのですが、メールにせよ、手紙にせよ、ネットなどから「例文をコピペしているかのような文章」でメールやお手紙を出される方。定型文そのままなので、その人らしさがなく読んでいて何も感じません。本人はむしろ良かれと思って書いているのかも知れませんが、定型文で出すという事は「手抜きをしている」印象が強くなってしまいかえって印象が悪いです。そもそもお礼状を出さない方がよほど良いと思います。前述のとおり、お礼状は自分らしい文章で書く事が大事です。自分の気持ちや自分らしい文章を書く練習にもなるので、少々手間が増えてでも定型文はあくまで参考にして、自分らしいメッセージを書くようにしましょう。
インターンシップ終了の翌日に発送できればベストです。何事も早いレスポンスはそれだけでも好印象を持たれるからです。でもなかなか授業や他の用事で難しいはずなので、遅くとも企業さんに1週間以内に「到着する」日程で出すようにしましょう。くれぐれも忘れた頃に出すような事の無いようにしてくださいね。却って印象が落ちる可能性があります。
最後に昨今話題になっているブラック企業、ブラックバイトなどありますが、ブラックインターンシップもあるそうです。無償の学生の労働力をあてにしているインターンシップの事ですが、明らかにブラックな印象があった場合に限り、お礼状は出す必要はありません。相手の企業に勘違いをさせるだけですので無駄な手間は省きましょう。
いずれにしても、お礼を出す、感謝を伝える、手紙を書くという行為は、社会に出た後も役に立つのでぜひ練習のつもりで実践してみてください。
佐藤 大(さとう だい)
神奈川県出身。採用コンサルタント。就活アドバイザー。神奈川県の自動車販売ディーラーにて人事、採用に関する業務に約8年携わり、累計で延べ3,000名の学生の面接や就職相談に応じる。「人」の持つ可能性や組織に与える影響のの大きさを数多く目の当たりにしてくる中で、さらに追求すべく2015年より独立。高校生、大学生に向けての就職指導、企業の採用支援、採用担当者育成などにに携わり現在に至る。