あなたは就職活動をしていく上で「ワークライフバランス」を重視していますか?
2015年、弊社アイデムの就活生に対するアンケート(*1)で、「あなたがキャリアを選択するときに、最も大切にしている価値観や欲求はなんですか?」と聞いてみたところ、「個人的な活動、家族、仕事のバランスをうまくとりたい」という回答が最も高いという結果が出ました。
一方、企業側は「新卒採用活動において自社のアピールポイントにしているのはなにか?」という質問に対して、「ワークライフバランスが実現可能なこと」という回答が最も低いという結果が出ています。
つまり、この調査によって、学生が求める価値観と企業側のアピールが合致していない様子が浮き彫りになったのです。
そこで今回は、この「ワークライフバランス」に注目し、企業や国の取り組み、新卒から意識すべきことなどについてご紹介します。
そもそも、なぜ「ワークライフバランス」が注目されるようになったのでしょうか。
まず、日本は2007年以降、人口の最も多い団塊世代が退職し、企業にとって大きなダメージとなりました。また少子化が進み、今後さらなる労働力の減少が不安視されています。
しかし、いまだ長時間労働が常態化している企業も多く、結婚・育児がしやすい環境が整っているとは言えません。さらには高齢化社会が進み、ベテラン社員が老親の介護で退職に追い込まれるケースも増えてきました。それらのしわ寄せは、特に中間管理職などに重くのしかかり、うつ病など心身の健康を害する人も後を絶たない状況が続いています。
このような時代の変化に対応せず、悪循環のまま多様な人材を生かすことができないと、企業の競争力はますます低下していくでしょう。つまり、企業にとっても「ワークライフバランス」に取り組むことが、これからの経営戦略として重要になってくるのです。
実は海外と比べてみると、日本人は一人当たりの生産性が低いことがわかっています(主要先進7か国で19年連続最下位! *2)。これは長時間労働による疲労の蓄積が、非効率的な仕事を生み出している原因とも考えられますよね。
しかし、もし「ワークライフバランス」が実現すれば、心身の健康も維持され、勉強に時間を使う余裕ができるため、生産性の向上が期待できます。また、家庭との両立、地域活動への参加などによって豊かな生活が送れるようになり、仕事への意欲や満足度も高まるでしょう。
このことは、国にとっても重要な課題だと言われています。内閣府は『仕事と生活の調和憲章』(*3)を策定し、「ワークライフバランス」の実現に向けた大きな方向性を示しました。現在は、ホームページでも政府や地域、企業や民間団体など、それぞれの取り組み・関連資料を紹介し、社会経済の長期的安定を実現する改善活動を推進しています。
▼「労働時間に対する国家戦略の必要性について」▼
衆院予算委員会公聴会
株式会社ワーク・ライフバランス代表 小室淑恵さんのプレゼン
このように見ていくと、「どうして『ワークライフバランス』はすぐに実現されないのだろう」と疑問に思う人もいることでしょう。しかし、何十年と続いてきた意識を変え、組織を動かすのは簡単なことではありません。理想論はいくらでも言えますが、現実的にはなかなか実現が難しいからこそ、これだけ注目されているのかもしれませんね。
また、個人によっても「ワークライフバランス」に対する捉え方、意識は様々です。以下は、よく誤解されがちな意見ですが、みなさんも思い当たるものがないでしょうか。
■「仕事をラクすることでしょ」→×
……定時時間内に成果を出すことが要求されるため、むしろ高い生産性が求められます。企業の視点に立ってみると、ラクをするだけの社員なんていらないということが、容易に想像できますよね。
■「女性のためのものだから、男性の自分には関係ない」→×
……共働きが多い現代、育児や介護は女性だけの課題ではありません。また、ライフは勉強や地域活動など多様な要素が含まれますので、当然ながら男性にとっても必要です。
■「プライベートとの両立を重視するなら、仕事内容は妥協するのが当たり前」→×
……長く働くつもりだからこそ、やりがいを感じられる仕事をして、自分に付加価値をつけるという考え方もあります。手放したくない社員がいれば、企業も働きやすい環境を作るはず。
■「ワークライフバランスとは、仕事の時間を減らした分だけ、プライベートの時間が増えること」→△
……たしかに時間の比率を変えることでもありますが、ワークとライフの相乗効果こそが「ワークライフバランス」を実現させる真の目的とも言えます。ライフで得たアイデア、健康、より良い人間関係などによって、一人ひとりの生産性が上がり、好循環するのが理想のカタチです。
それでは、ワークライフバランスを実現させるために、企業はどのような取り組みをしているのでしょう。以下に例をあげてみました。
・ ノー残業デーの実施
・ フレックス制度や、テレワーク勤務を取り入れ、様々な人が柔軟に働けるようにする
・ タブレットやスマートフォン、モバイルPCなどを活用して「見える化」し、互いの業務を把握できるようにする
・ 仕事時間を計測してムダな業務を見直す
・ 会議中に砂時計を置いて時間意識を高める
・ 希望の働き方を皆の前で発表し合う時間を作る
・ 男性の育休の推進について社内メッセージを発信する
・ 育児・うつ病・介護休業者の復職支援プログラムや相談窓口の設置
このように、社員が退職せざるをえない状況を回避することにより、優秀な人材を確保して強い組織を作ろうと、様々な取り組みが行われています。
もちろん、そういった企業はまだまだ少ないという現実もありますが、「働きやすい環境作りを目指しているか」といったことに注目してみると、志望先が長期的な視点で戦略を考えているのかどうかが見えてくるかもしれません。
ここまで読んでお気づきの方も多いと思いますが、企業は“長く働いて欲しい優秀な人材”がいるからこそ、働きやすい会社を目指します。つまり、新卒のみなさんはまず“企業がずっといて欲しいと思う人材”になることが重要! 仕事が出来ないうちから権利ばかり主張するのは、あまり良いことではありません。第一に自己の生産性を高め、勤務時間内に成果を上げられる人材を目指していきましょう。
ちなみに、「ワークライフバランス」を重視して企業選びをした場合も、志望動機としては挙げないほうが無難です。もし伝えるときは、「長く働きたい」という意志を強調して伝えるなど、仕事に対するやる気をしっかりとアピールしましょう。
【参考先リンク】
*1 人と仕事研究所
2016年3月卒業予定者の就職活動に関する調査(2015年4月1日状況)
https://apj.aidem.co.jp/upload/chousa_data_pdf/235/file.pdf
*2 日本の生産性の動向2015年
https://www.jpc-net.jp/annual_trend/
*3 内閣府は『仕事と生活の調和憲章』
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html
*4 内閣府『ワークライフバランスのための仕事の進め方の効率化に関する調査報告書』
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/research/kouritsu/index.html
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