今回は業界研究と企業研究のやり方についてです。これらは、似ているようで全く違うもの……。
まずは、毎年200名以上の大学生を大手企業・人気ベンチャー企業に複数内定させているキャリアコンサルタント井上真里さんから、業界研究のやり方を解説していただきます。
自分のことがわかっていくのが面白い! と自己分析は時間をかけてじっくりしても、業界研究や企業研究となると、イマイチどう進めていいのかやりかたがわからなかったりして手薄になる人がいます。そこで今回は、私がよく就活生におすすめしている業界研究についてお話しします。
業界研究をはじめるにあたって、まずは“業種”と“職種”の違いをはっきりさせておきましょう。学校生活で体験してきた行事やアルバイト、家族も同じように、どんな小さな単位でも複数の人が力を合わせて価値を生み出す場合、みんなが同じことをするのではなく、分担・分業で作業をすることが多いでしょう。たとえば学校にある放送委員会、図書委員会であったり、飲食店のアルバイトでは、ホールやキッチンであったりと役割がわかれていますよね。
社会全体も分業をして成り立っています。企業は、社会の中で何らかの「社会での役割」を引き受けていますし、また企業の中ではさらに細かく「企業内での役割」を分担しています。企業が社会で引き受けている役割のことを「業種」、企業内で分けている役割のことを「職種」といいます。
この「業種」のひとつひとつが○○業界といわれるものです。製造業とか広告サービス業とか卸売業とか……。流通業をとってみると、社会の中で商品を運ぶ役割としての「業種」であり、その企業の中での役割として営業や事務などの「職種」があるのです。だから、業界研究をするにあたってはまずその業界が社会においてどんな役割を引き受けているのかを理解しましょう。その中で、自分はどんな役割に興味があり、また向いているのかを考えていくのです。
そもそも日本に業界はいくつあるのでしょうか? 総務省による日本標準産業分類では以下のように大きく20に分類されています。実際はもっと大まかにもわけられるし、もっと細かくもわけられますが、イメージしやすいのではないでしょうか。
1. 農業、林業
2. 漁業
3. 鉱業、採石業、砂利採取業
4. 建設業
5. 製造業
6. 電気・ガス・熱供給・水道業
7. 情報通信業
8. 運輸業、郵便業
9. 卸売業、小売業
10. 金融業、保険業
11. 不動産業、物品賃貸業
12. 学術研究、専門・技術サービス業
13. 宿泊業、飲食サービス業
14. 生活関連サービス業、娯楽業
15. 教育、学習支援業
16. 医療、福祉
17. 複合サービス事業
18. サービス業(他に分類されないもの)
19. 公務(他に分類されるものを除く)
20. 分類不能の産業
まずは書店の就活コーナーに毎年並ぶ、『業界地図』を読んでみたり、大手就職ナビの記事にある業界の特徴がわかりやすくまとめられていたりするページを眺めてみると自分が全く選択肢に入っていなかった業界にも視野が広がってきます。
業界研究をするときに注目したいのは、業界の今後の流れや未来予測です。たとえば10年後にこの業界はどうなっているかということを想像してみましょう。新卒入社のタイミングこそこの視点が大切だと思います。
なぜ、未来を考えていく視点が大切なのか。それはあなたが仕事で活躍できるタイミングは、すぐではなく、知識や経験を重ねた後のちょっと先の未来だからです。もし数年後、その業界で経験がつき仕事ができるようになってきたとして、市場そのものが小さくなっていく流れの中にあったらどうでしょうか? せっかく知識や経験を得ても、市場の縮小と共にあなたの活躍できるフィールドは小さくなっていってしまいますよね。
だからこそ、あなたが活躍できるようになったちょっと先の未来に向かって、その業界は成長しているのか? どうなっていくのか? という視点で考えることが大切なのです。もちろん実際に業界がどうなっていくのかを正確に当てるのは経済学者だって難しいでしょう。100%正解はだれにも予想できませんが、業界は社会全体の動きとつながっています。だから、社会全体でキーワードとなっていることにアンテナをはると自分でも大まかに考察できるようになってきます。たとえば、以下にここ数年でトレンドになっていたキーワードを一部紹介します。
人口減少、少子高齢化、消費税増税、クラウド化、TPP、女性の活躍、Eコマース、グローバル化、IoT、スマートシティ、人工知能、リノベーション、待機児童、環境負荷低減、O2O、食糧危機、マイナス金利
世界のトレンドと、日本国内のトレンドにも違いがあります。たとえば世界では今後人口が急増して、食糧危機に陥ると言われていますが、日本国内では人口減少による高齢化に悩まされています。このように、世界は? アジアは? 日本は? と視点の高さを変えて未来を想像していきましょう。
社会字全体の流れやトレンドと業界の成長との関係は……というと難しく考えすぎてしまうかもしれませんが、業界が成長する要因はシンプルにすると以下のように考えられます。
1. 買う数が増える(顧客数か買う回数の増加)
2. 買う値段があがる
つまり、社会的な流れの中で、その業界が提供している商品やサービスを買う数が増えるのか? または高い価値がつくようになるのか? という視点で考えます。風が吹けば桶屋が儲かるといった言葉もありますが、頭の体操の気分でいろいろ考えてみてください。無数に出てくるはずです。
例)
・国際的なスポーツの祭典の開催→海外からの渡航者増える→日本の観光情報へのアクセス増加
・待機児童増加→ベビーシッターの利用が増える
・Eコマース→ネットで商品を購入する機会が増える→小売店での購買回数が減る
社会の流れに合わせて自分の見ている業界が成長路線にあるのかどうかを考えていくと、未来を考える視点が身についてきます。そうすれば新聞やテレビで報道されているニュースも、企業活動や仕事と結びつくようになってきておもしろくなってくるのではないでしょうか。
業界の動向について具体的に調べる方法をいくつか紹介します。
■帝国データバンク 統計・レポート https://www.tdb.co.jp/report/index.html
「統計・レポート」のページにある、景気動向調査には各業界の直近の動向と見通しについてのレポートを読むことができます。
また、業界動向では主要業界の昨年と今年の展望を晴れや雨、雷雨など天気で表していて簡単なコメントを記載しています。インターネット上で見られるものは最近の動向と短期的な未来の見通しをざっくりと要約した情報ですが、社会のどんな流れが業界に影響しているのかということが見えてきます。
■SMBCコンサルティング 最新業界レポート https://www.smbc-consulting.co.jp/company/mcs/industry/
「最新業界レポート」のページには、シンクタンク各社が発表している各業界の調査が掲載されています。ミネラルウォーター市場、宝飾品(ジュエリー)市場など具体的に絞られた業界についての調査も掲載されているので、調べている業界があれば役に立つ情報を見つけられるでしょう。また「注目市場レポート」には、矢野経済研究所による市場規模と動向(過去4年間と将来展望)についての調査がまとまっています。4半期ごとなのでかなり最新の情報にアップデートされています。
■インターネット検索
「○○業界 動向」「○○業界 見通し」などと、検索ワードを工夫するとインターネット上で発表されている分析情報を見つけやすくなります。書籍に比べてありとあらゆる情報発信者がいるので、上位に出てきた情報だからといってうのみにせず、情報の出所が信頼できるものを確認して読むようにしましょう。
■ニュースメディア・Googleアラート登録
ある程度志望業界が絞られてきていて、最新の情報を読みたい場合はニュースメディア(Web専門ニュースサイト、新聞社のWeb版)やGoogleアラートで特定のキーワードを登録しておくと便利です。関連するニュースについてまとめて読むことができます。
私は、仕事上「就活」や「採用」といったキーワードを登録していますよ。
Googleアラート https://support.google.com/alerts/?hl=ja
■その業界を代表する企業のIR資料
企業研究とも重なりますが、その業界のリーディングカンパニー(業界をけん引する代表的な企業)のWebサイトでも業界研究はできます。投資家向け情報のページで、決算短信のはじめのほうに市場の状況について解説されています。
また同じページに掲載されている中期経営計画や○○ビジョンといった将来の計画資料も役に立ちます。
業界研究は、興味のある業界を探すまたは興味のある業界について詳しく調べるという目的でがんばる人が多いですが、そもそも行きたい業界に自分が向いているか? という視点が役に立つこともあります。
自分が気になる業界に向いているかどうか? という観点での業界研究については、以下の2冊がおすすめです。
『2社で迷ったらぜひ、5社落ちたら絶対読むべき就活本』海老原嗣生著(プレジデント社)
『転職の赤本』鈴木康弘著(エンターブレイン)
主に広告・コンサルティング・商社・金融・IT・メーカー・小売などといった業界にどんなタイプが向いているかといったことが解説されています。どちらの本でもすべての業界は網羅できませんし、同じ業界であっても一社一社個性が違うので、あくまで大まかな傾向の理解になります。しかし、誰が顧客でどんな手段で価値を提供しているのか、どんな名目で報酬を得ているのかといったビジネスモデルから向いている人材の傾向を教えてくれるので、業界ごとの人物タイプを知ることができます。
理系研究職で、技術職を目指す場合はあまり進路にばらつきがないと思いますが、文系就職活動生はこれといった専門が決まっていない分、幅広く業界を検討する人が多いです。結果的に毎年、マスコミ・コンサルなどの人気業界や、出版・旅行など消費者向けの業界には応募者が増えますが、中には憧れやファンとしての気持ちで業界を目指して就職活動に苦戦する人が多いのもまた事実です。
企業も、お金をもらって社員を教育するのではなく、お金を払って社員を会社の一員として迎え入れてお客様に対応してもらうわけですから、採用したいのはその業界のファンではなく向いている(適性がある)人です。だからこそ、好きかどうかという視点で突っ走るだけではなく自分が目指している業界が、自分に合うのかどうかを考えることは大切です。先程紹介したような書籍などを読むことで、憧れではなくビジネスモデルから適性を冷静に考えていくのが役に立つ人は多いと思います。
以上のように紹介した方法で、業界研究をしていくと業界の今後のことが少しずつ想像できるようになってくるはずです。
そこで想像した未来のイメージを、自分はそこで会社をもっと成長させるためにどのように活躍していたいか? と具体的に考えるための参考にしてください。よく就職活動では「会社に入ったら将来何がしたいですか?」「10年後どうなっていたいですか?」といった質問があります。まさにこの質問に自信を持ってはっきりと答えるためには、業界研究が必要なのです。
業界研究をしていないと、自分よがりになってしまったり、逆にどんな業界でも同じような漠然とした話になってしまったりすることがよくあります。代表的なのは、頼られる人になりたい、後輩にも指導できるようになっていたいなど……。これでは他の人と差別化できませんし、本当にその企業で何かを成し遂げてくれそうな期待はもてません。
しかし、業界研究がきちんとできていれば、まさにその業界のトレンドや未来にかなった提案を考えられるようになります。その結果、企業からしても「本当にこの人が入って成長したら、将来会社を成長させてくれるエンジンになりそうだ」と思われるような提案ができるのではないでしょうか。自分が業界を選ぶためだけではなく、自分が選んだ企業により強くアピールするためにも、その企業が属している業界について詳しく調べてみてください。
せっかく社会人生活の第一歩をスタートさせる会社です。社会を支えていく一員として、自分が大きく成長した未来に活躍できる期待が持てるようなフィールドを見つけていきたいですね。
続いて、延べ3,000名の学生の面接や就職相談に応じてきたキャリアコンサルタント佐藤大さんから、企業研究のやり方を解説いただきます。
「就職活動とい言えば?」と質問をされて、何を思い浮かべますか? まず初めに「企業研究」です! と答える人は実はあまり多くないかもしれません。どちらかというと「自己分析です」とか「面接です」とか「エントリーシートです」と答える人は多いかもしれませんね。
私が学生さんに就職活動支援をする時に一番気になる事の一つ(最も指摘をする事が多い事)が、実は「企業研究」についてなのです。
具体的には、
・志望企業についての知識が圧倒的に少ない事。
・志望企業に魅了されるまで理解していない事。
などです。
就職活動は、何はともあれ相手である企業についてよく知らない事には何も始まりません。昔のことわざで「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」という言葉があるように、敵(=会社です笑!)を知らないまま、「己を知り」(=自己分析)だけしていても一向に面接で勝てないという事なのです。
仮に表層的に人間性を買われたり、面接官との相性が良くて内定をもらえる人は毎年沢山います。しかし、人間関係が嫌だ、社風が合わない、勤務時間が長い、休日が少ない、給料に満足できない……など様々な理由で3年すると3割が離職します。実はこれらの退職理由は僕は本質ではないと思っています。ほとんどの場合が後付けの理由であって、本質的には仕事が好きになれていない、会社そのものを好きになれていない、という事が一番の本質ではないかなと思うのです。
僕は何よりも仕事と会社を徹底的に好きになる事が成功の秘訣だと思っています。そのためにも企業研究は絶対不可欠だと思うのです。ですから、「企業研究」を怠ったまま、違った認識のまま入社して、後からいろいろなギャップに気づいて、後悔している先輩も少なくないという現実がある事をを認識しておいて欲しいと思います。まさに「3年3割離職」という数字は、就職活動の難しさや、多くの就活生の「企業研究の足りなさ」を物語っていると僕は思います。
「かっこいい服(かわいい服)が自分にとって似合うかどうかわからない」のと同じで、企業についても同じ事が言えます。
この会社を選んだ理由は? と聞くと、「評判が良いから」「◯◯の業界ではとりあえず一番有名なので」「業績が好調なので」「名前を知っていたから」「親が大企業に行けと言うので」、極めつけは「大企業だから」という理由しか言えない人もいます。仕事をした事がないので仕方がないとは思うのですが少々幼い理由に感じてしまします。
国内に約400万社ある中で大企業は1%にも満たない数しかありません。残りの99%の中小企業についても視野を広げた上で決めていく事により、新しい考えも生まれてくるのではないかとも思います。本当に自分にフィットした会社がないのかを探す事は将来の自分の人生を決める上でとても大事です。安定しているから、有名だから、業績が好調だからという理由だけで、この先定年までを決めるのは少々浅はかではないかなとも思ってしまいます。
数年前から「ブラック企業」という言葉が出で始めてきて、今や就活生の間で企業の選択条件としてすっかり定着しました。ただ僕はこの「ブラック企業」という言葉が独り歩きをしているようにも思えます。
ブラック企業とは過剰な就業時間を強制的に強いたり、休みを暗黙的に取る事ができない、残業代が全く支払われない、暴言や暴力などのパワハラが常態化しているなど、一部に「真のブラックな企業」は実際にあるは聞きますが、多くの企業は何らかのブラックな要素を持ち合わせている事も少なくはないです。大企業=安定しているとは言われるものの、実際に私の友人でも大企業で勤めていて、休みなしに働いている者も沢山います。中小企業においても同様で、全くクリーンな企業を探す方が難しいのではないかなと思うほどです。
ブラック企業という言葉を多用する就活生ほどあまり企業分析をしていない事が多く、あまり調べる事もなくただ単にブラックではないか? と毛嫌いする事は、選択肢をただ減らしているに過ぎず勿体無いなと思います。
人間と同じで、どの企業にも強みと弱みがあります。「強み」であれば「業績が良い」「評判がいい」「有名だ」「安定している」などありますが、ただそれだけで企業を選択するという発想はあまりに受け身で、敷かれているレールに乗っかるだけの、依存的なタイプと思われても仕方ないかも知れません。面接官からしたら「あなた」という人間を入社させる意味が果たしてあるのかな? と思うでしょう。(その前に、そういう動機で面接を受けて、内定を貰う事は9割9分難しいのですが)
また「弱み」はどの企業も必ず抱えているものです。具体的には、知名度が弱い、売り上げが少ない、賃金が少ない、残業が多い、社風そのものが古い……など様々にあります。この「弱み=課題」を「あなた」にとって「弊害なので避けるべき」と捉えるのか? それとも「チャンスである」と捉えるのかによっても選択肢が大きく変わります。
「チャンスである」と捉える就活生の志望動機は非常に前向きな場合が多いです。例えば、「御社の課題に挑戦する事で、今までの悪いイメージを変えたい」「御社の課題を抑制して、社員満足度を上げたい。ひいては業界全体のイメージアップにつなげたい」などです。このような志望動機を提案できる学生の場合、企業研究はもとより、業界研究、自己分析についても沢山時間を割いて行ってる場合が多かったりします。
その結果、面接官や人事担当者との共通話題が多いため、面接での会話も本質的な部分で大変盛り上がります。人事担当者からすると「いい面接だったな」と思える代表的なパターンの一つです。
・誰もが改善できなかった課題が、(あなたの働きによって)その課題を克服する主人公になった。
・誰もが悩んでいた課題だが、(あなたの行動によって)一変して改善した。
・衰退の一途であったはずが、(あなたのアイデアによって)革新的な商品が生まれた。
などなど、発想の逆転によって普通の会社員では味わえないようなやり甲斐や達成感、対外的な評価を得ている人も沢山いるのです。
「弱み=避けるべきもの」と捉えるのではなくて「弱み=チャンス!」と捉えられる人ほど、大小問わず、企業からの人気は高い場合が多いです。
面接官は就活シーズンになると、毎日何人もの学生の対応をします。10人の学生に会えば、10回「志望動機」を聞きます。私の経験上、10回の志望動機であれば少なくとも8人は同じような内容の志望動機を話します。同じような志望動機を何度も聞かされると、正直退屈になり、本音としては「またか。」という気分になる事もあります。なぜそのような気分になるかと言うと、この8人は、企業研究を十分にして来なかった、入社意欲が弱い、働く意欲が弱いと判断しているからなのです。
つまり内定を貰いたければ、この8人になってはいけない! という事なのです。
なぜこの8人のパターンに陥りやすいのか? 下記のような事が挙げられます。
1. 自己分析ばかりしている
2. 会社説明会で聞いた内容だけで判断
3. 企業パンフレットの内容だけで判断
4. 採用ホームページの中身だけで判断
5. 本などで良くある一般論を話している
などが多いようです。
例えば1などは、自己分析に力を入れている事自体は悪くないのですが、企業研究に使う時間とのバランスが悪いケースです。とても多いケースで、自分についての話は、いろんな企業で話しているせいか慣れていて饒舌なのですが、企業の事となると急にトーンが下がり、静かになってしまいます。
僕は自己分析と企業研究の割合は、少なくとも4対6、できれば3対7以上を推奨しています。企業研究に多く時間を注ぐべきで、その方が効率的で中身の伴った有意義な就職活動が実現できると考えているからです。
ではどうしたら面接官から「興味あり!」と思って貰えるのでしょうか?
それは簡単で、上記1〜5のような単純な準備をしない! につきます。ファッションに例えると、「流行からあえて少しハズす」「ちょっとアレンジする」と言うことです。何が言いたいかと言うと、あえて少しハズす、ちょっとアレンジするというのは、まずは最低限基本的な事をすべて知っていないと出来ない事です。
それに、普通以上に良く調べて研究出来ていて、人が知らないような知識も持ち合わせていないと不可能です。理由は2つあって、「入社したい」という熱意が相当なければ、このような手の込んだ事や時間のかかる準備はしないよね? という事なのと、もう一つは、実際に「どのように働きたいか?」という現実的なイメージが出来ているので、入社をしたとしてもギャップを感じる事なく、すくすくと育ってくれそうだと判断できるからです。
入社後にキャップを感じて退職する、入社はしたものの活躍していないなど、たくさんの事例を私自身見てきましたが、背景には志望動機をしっかり自覚していない=企業研究が不十分である場合が多いと感じます。
逆を返せば、内定を貰う人、入社後も継続的に活躍する人はどんなタイプが多いのかというと、企業研究に時間を十分に時間を注いでいて、その会社の社員になったつもりで、あれこれ今後の会社についてイメージをしていたり、入社後どんな仕事をしたいかの目標を持っていたりします。
また副産物的な事ですが、繰り返し企業研究をしてイメージしているからこそ、「好き」の度合いが強く、面接でのワクワク感も高まり、結果的に面接官に好印象を与えている事も事実としてあります。話もそんなに上手ではないし、成績が飛び抜けて良いわけではないし、というタイプが内定を貰うケースは往々にしてこのようなケースではないかなと思います。まずはその会社の社長になったつもりで、会社をワクワクと誰かに紹介できるかどうか?が勝敗の分かれ目だと思います。
ホームページを読み込む、パンフレットを読み込む、くらいならライバルたちも下準備をしてきます。実際にどんな方法で調べると効果的で差を付けられるのか? について列挙したいと思います。
・内定を貰うレベルの就活生が実践している事
1. IR情報(企業家向け情報)を読み込んでいる
少し大変かもしれないけれど、「過去3期分を3回読む」ように推奨しています。集中すれば数時間で読み終えられます。この数時間があるか無いかで会社の理解度はぐっと差がつくので絶対的にオススメです。
2. OB・OG訪問、または社員訪問
必ずしもOB・OGでなくても良いのですが、現在働いている社員(できればOB・OGや知り合いがベスト)に人事部経由や大学のキャリアセンターからアポを取って貰い、質問をたくさんする事。その際、ただ訪問するのではなくて、しっかりと企業の情報を頭に叩き込み、質問事項を準備してから訪問してください。くれぐれも低レベルな質問をする事(残業、給料などの待遇に関する内容)だけは自制しましょう。場合によっては人事に情報を共有されてしまって選考で不利になる場合があります。
3. 日経電子版を契約する(有料)
日経電子版の凄いところは「検索機能」があるところです。過去に遡って自分の行きたい企業名や業界、その他単語を入力すると過去の記事がすべて読む事ができるという超!優れた機能があるからです。過去の情報も把握する事で厚みのある研究ができます。
4. 同業界のライバル企業の情報も調査する
志望企業の業界内での優位性や、課題、業界そのものが持つ優位性や抱えている課題、将来にわたるビジョンや懸念点は何か? を把握しておく事はとても理解が深まります。周辺状況を把握する事は、志望企業についての理解度が深まるのでオススメです。
情報が少ない中小企業の場合はどうすべきか?
1. 会社見学をさせて貰い、疑問点を質問をする
2. 客になりすましてサービスを受ける
3. 中途採用の求人情報や転職サイトの内容を確認する
4. 業界ごとのイベントをリサーチしておいて参加する
5. 検索サイトで3枚目以降に出てくるような情報も隈なく拾って読見込む
中小企業の情報不足は他の学生も同条件ですので安心してください。
井上 真里(いのうえ まり)
キャリアアドバイザー。石川県金沢市生まれ。慶応義塾大学経済学部在学中より、人材教育企業にて学生キャリア支援のサポートに関わり、卒業後は東証一部上場の富裕層向け住宅メーカー・IT企業にて中途・新卒社員採用をはじめ、教育研修、異動や退職など学生のキャリア選択から、社会人のキャリアに関する領域を幅広く経験。新入社員マナー研修講師としても高い支持を受ける。現在は全国の高校生や大学生を対象に面接トレーニング、キャリア、マナー分野でのマンツーマン指導やセミナーを多数開催。毎年マンツーマン指導や勉強会に参加した200名以上の大学生が、大手企業・人気ベンチャー企業に複数内定している。
佐藤 大(さとう だい)
神奈川県出身。採用コンサルタント。就活アドバイザー。神奈川県の自動車販売ディーラーにて人事、採用に関する業務に約8年携わり、累計で延べ3,000名の学生の面接や就職相談に応じる。「人」の持つ可能性や組織に与える影響のの大きさを数多く目の当たりにしてくる中で、さらに追求すべく2015年より独立。高校生、大学生に向けての就職指導、企業の採用支援、採用担当者育成などにに携わり現在に至る。