(※このコラムは、2015年3月4日に2016年卒学生対象メディアの就活NEWSにて公開されたものです。)
学生は、すでに就活に疲れている。その事実に、私は驚いている。就活はもう始まっているし、就職活動時期の繰り下げに対して疑心暗鬼となり、学生がすでに疲れているのだ。
2015年2月の前半に開かれた、ある新聞社主催の就活応援セミナーでのことだ。会場のホールは約300名の学生でいっぱいだった。まだ、就活を始めていない人も多数なのだが、「就活はもう嫌だという人、いますか?」と手を上げたところ、約半数の学生が手をあげたのだ。もちろん、この聞き方だと、まだ就活を始めていない学生でも手をあげてしまう可能性がある。不安と言いつつ、この時期のセミナーにやってくる学生なので、意欲は高く、顔は元気そうだったのだが。
とはいえ、学生がすでに就活に疲れているというのは、事実のようだ。株式会社アイデムが運営する相互マッチング型就職活動サイト「JOBRASS新卒」が2016年新卒の就職活動本格化直前の就活学生の実態を探るべく行った「2016年新卒 就活学生意識調査」によると、はやくも就活にストレスを抱える学生が83.7%、選考期間短期化で「内定を取れるか不安」と感じる学生95.9%という結果が出ている。ストレスの要因は「内定への不安」や「就職活動時期の繰り下げ」が半数以上であり、選考期間の短期化で「選考期間中に内定を取れるか不安」と95.9%の学生が回答している。要するに時期の変更が影響を与えている。インターンシップ、プレセミナー、企業ホームページでの採用情報のオープンなど、実質、就活が始まっているとも言える状態も影響していることだろう。
というわけで、予想以上に、早くも就活生は疲れているという事実を確認しておきたい。
では、就活で疲れないようにするためにはどうするべきかを考えてみよう。疲れも精神的なもの、肉体的なものがあるし、解消の方法も多様だ。ここでは、「効率化」することによって、乗り切るという方法を提案したい。というのも、この「効率化」が今年のスケジュールから言うならば、キーワードとなりそうだからだ。
ご存知の通り、就活時期の繰り下げになっている。採用広報活動は正式には3月1日、選考活動は8月1日にスタートする。表向きのスケジュールでも、裏のスケジュールでもいくつかポイントがある。まず、正式なスケジュールで言うと、実は採用広報活動の期間は昨年より4ヶ月長くなっている一方で、選考活動の時期は仮に大学4年の3月31日をリミットとすると繰り下げにより4ヶ月少なくなっている。表スケジュールで言うと、選考は短期化しているように見える。
ただ、このスケジュールどおりに完全に行くわけではない。水面下での選考も始まる。ひょっとすると、いきなり自分が早期選考のルートに乗るかもしれない。急なスケジュールで選考が進むかもしれない。
なんとも不透明なスケジュールであるが、効率的にすすめることにより、疲れずに就活をやりきることが可能となる。早めに内定に至るかもしれない。だから、効率化はいずれにせよ重要なのだ。
では、効率化のために、何をするのがいいか。いますぐ出来る技をご紹介しよう。
1. 立ち止まる時間を大切にする
効率化のためには、意外にも立ち止まることが重要。朝に10分〜30分時間をとって、スケジュールや、やることリストの確認、優先順位付けを行う。夜、寝る前に1日の振り返りをすることも有効だ。
2. アポをまとめる
就活で外出する日は、その時に開催されている他社の説明会や合同企業説明会に参加する、OB・OG訪問のアポを入れる、大学のキャリアセンターに立ち寄るなど、予定をまとめると良いだろう。一つのエリア、沿線にアポを集中させるのも手である。
3. みんなでやる
例えば、業界・企業研究、自己分析などは、志望先が似ている仲間と一緒に行うと互いに教えあうこと、指摘しあうことにより時間を短縮することができる。自分ひとりで抱え込まない。
4.エントリーシートは汎用的なものをいったんつくる
自己PR、学生時代に力を入れたこと、志望動機などは、業界・企業に合わせて言い方などを工夫するべきだが、とはいえ、大本になるものは共通点も多いと思う。それぞれ600字程度で汎用的な文をつくり、業界・企業に合わせ、また求められる答の長さを考慮して使う。大本のものがあると、中身もどんどんブラッシュアップされていく。
5.その時間の価値を最大化する
もっとベタなことを言うと、かけた時間のもとをとるということだ。OB・OG訪問をしたら、大学のご友人や他部署の方のご紹介を頂く、企業説明会に参加したら、エントリーシートや面接にとって参考になりそうなことを聞き出す、などである。
まだまだあるが、いますぐ出来そうなのは、これらのことである。就活は考えと行動を社会人基準にする機会でもある。意識して動きたい。
更にもう一つ、就活において効率化のために役立てたいのが、逆求人型サービスだ。自分たちから応募するのではなく、企業からスカウトするタイプのサービスである。
「JOBRASS新卒」の「2016年新卒 就活学生意識調査」によると、すでに「逆求人型サイト」活用したいと思う学生9割以上となっている。「逆求人型就活サイト」の活用理由は「効率良く就活を行いたい」が約7割となっており、これを活用する学生が増加していることは明らかである。就職ナビだけではないリスク分散型の動きが顕著だ。まさに、効率化のために使えるサービスである。
就活生は毎年、入れ替わるから、戸惑うこともあると思うが、効率化の工夫をしてみよう。そのために、普段の考えるパターンと行動を見直すこと、さらに逆求人型サービスを活用した、リスク分散型就活を始めよう。
常見陽平(つねみようへい)
評論家・コラムニスト
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。2015年4月 千葉商科大学に新設される国際教養学部の専任講師に就任予定。
著書に『「就社」志向の研究』(KADOKAWA)『就活の神さま』(WAVE出版)『リクルートという幻想』(中央公論新社)など。