武井壮さんがパーソナリティを務める東京FM「シューカツの王」。vol.56では音楽クリエイター・ヒャダインさんをゲストに迎えました。大阪の名門私立高校から京都大学総合人間学部人間学科で、人間関係論を専攻していたというヒャダインさんが、音楽を志した理由とは? そして、仕事が「成功」することの秘訣とは――。
人間関係論を専攻した理由について、ヒャダインさんは「人間がすげー苦手だったので、学問でどうにかねじ伏せようと思って」と回答。勉強は好きだったそうですが、京都大学進学後、就職活動は一切行っていないとのこと。ちなみに武井さんも就活をやったことがなく、なんと就活をしたことがない人同士でのトーク!
大学2年生のときは、ほとんど大学に行っておらず、「3年生の途中から単位やべぇなと思って(大学に)行き始めた」というヒャダインさん。友だちがほとんどいなかったため、情報を仕入れることができず、大学3年生の夏に学校に行ったら「もう就活始まってるよ」と言われ、呆然。就活は4年生からはじまると思っていたのだとか。
「そこで学生時代にしか出来ないことをとりあえずやろうと思って、2週間ニューヨークに行って、ブロードウェイミュージック見まくって、帰国の前日に9.11の同時多発テロにあってしまって。目視できるくらいの距離にいた。マンハッタンが封鎖され、帰れない。やることねーなーと思いながら、ブロードウェイミュージック見たりして、そこではじめて自分の人生について考えた。その時に自分の好きなことで名を挙げて、お金もちになりたいなって。
望んでもないのに、いきなり命を失った方がいらっしゃって。人生って本当に何が起こるか分からないし。人生は安定も調和もなくて。いきなりこんなことがあって。僕ですら1週間帰れなくなって。やりたいことやるしかないじゃないかと思った」
それで始めたのが、3歳からピアノをやっていたという音楽だった。
作曲のコンペに落ちまくり、ヒャダインさんが気がついたのは「楽曲のクオリティうんぬん」ではなく、「ヒャダイン、まえやまだけんいちっていう名前がある程度認識された後で聞くのと、全くの無名の新人のものを聞くのとではフィルターが違うのかな」ということ。そのために、ニコニコ動画を活用した。
「コンペに落ちまくってたんで、自分の実力がないのかなと思っていて。みなさんも就活で落とされまくるのと同じですよね。それってすごい人格否定された気持ちになると思うんですけど。自分もそうだったんですね。音楽的な人格を否定された気持ちになってたんですね」(ヒャダイン、以下「」内同)
――武井:
今まで作り上げてきた自分の音楽観みたいなものを。
「はい。で、自分が本当にダメなのかなと、1回平場で試してみようということで、直接レスポンスが返ってくるニコニコ動画にゲームのアレンジだったりとかを歌詞をつけて出したら、すごくみんなが受け入れてくれて、あがめてくれて、嬉しくなっちゃって、週1で出しまくってました。
でもそれが悔しくって。実はそれが売れてない作曲家まえやまだけんいちがやってますよ、売名行為でやってますこんにちはっていうのは嫌だったんでヒャダイン=まえやまだけんいちっていうのはずっと隠してたんですね」
――じゃぁ、そのまえやまだけんいちを隠すためのコードネームがヒャダインだったんだ。
「そうですね。その通りです。でもどんどんヒャダインがうまくいって、自己否定されていたのが、自分はこれでいいんだって、いけてんだっていうので自信になって、事務所も変えて、自信を持って色んなコンペに望んでいたら、東方神気さんだったり、倖田來未さんとmisonoさんのデュエットだったりが決まり始めて、まえやまだけんいちのほうも回りはじめたんですよね」
そしてその後、ヒャダインはももいろクローバーZの楽曲も手がけるようになる。
――曲、全否定されてたところから、まえやまだけんいちヒャダインの名前が出てきてから採用されたっていうのは、俺のスポーツとも通じるところ。
俺も日本チャンピオンになっても全然有名にもなれなくて、マイナー競技で、スターになる才能ないんだなって塞いで、スポーツなんてダメなのかなって思ってて。ゴルフやってもスコアそこそこ出すけど、全然有名にもならないし、華もなくって。
それをなんとか自分の職業、生きる道にしたいんだけど出来ない時期が長くて。タレントさんとかと出会ってトークとか、人を喜ばせる数を増やしちゃえば、自分の武器は全部武器になると思いはじめて、タレントになって『百獣の王です』っていって有名になってからやることに関しては全部、みんなが価値をつけてくれる。
ヒャダインの音楽と俺のスポーツは、多分同じ“武器”。同じように価値を後付けでつけたものだよね。これってたぶんみんな参考になることだよね。
「それをいやらしいとか、そういう風に思わないほうがいいよ思うんですよね。僕はそれがこすいやり方だと思ってないんで」
――全部が価値だもんね。クオリティの高さだけが価値じゃないっていうのは、俺は真実だと思ってるから。それを求める人の数が価値だって、俺、いつも言ってるんだけど。たぶんヒャダインの曲を求めている人の数はすごく今、多いし。ヒャダインよりうまいとか、才能がある人はいると思う。俺もそう。スポーツ界で俺よりすげーやつなんて山ほどいるけど、でもあの人のスポーツ見たいって思ってくれるてる人の数は俺が1番多いって風に思ってるし、そうなるように頑張ろうと思ってる。だからたくさんの人に応援してもらえているんじゃないかなと思ってる。
「売り上げがたつ曲を書こうと思ったことが実はなくて。本当すいません。今度はこのアイドルお願いしますって言われたときに、前の曲をいっぱい聞いたり、今の状況とかを聞いて、この子達に今、必要で、売り上げとかじゃなくて何かしら人間的としてステップアップができる曲を作れればいいなっていうのがすごくあって。だって10代ですよ」
――道路工事みたいだね、なんか。高速道路作ってるみたいな。この道行きなさいよみたいな。
「そういったことを提示してあげられればいいなと思ってます。これを歌い続けることによって、何かしらの変化があってくれればいいなという気持ちで曲を作ってることが多いです」
――そんな風に音楽を作ってて、今はゆったら世の中の中で作曲になりたいなんて人山ほどいると思うけどヒャダ様成功してるじゃん?
「成功してないっていったら嘘になるかもしれないですけど、ずっと不安です」
――世の中で言ってる「成功」って、もう絶対安心なとこにいって、どーんと座ること。でも俺らの成功はそうじゃない。ずーっとチャレンジも出来て、ずーっと好きなことで戦えるのが俺らの最高の成功じゃない? ヒャダインも俺も今、そういう場所にいる。お仕事いただいて、それと一個一個戦っていける。そこに辿り着けたこと、お仕事に対する思いってある? お仕事に対する思い。
「やっぱりありますね。やっとバッターボックスに立てた感じ。作曲家になりたい同業者になりたいっていう人はすごくいっぱいいて、若手の曲とかきくんですけど、技術的には素晴らしいし、色々難しいことやってて、若い奴らに勝てねーと思うことあるんですけど、唯一勝てると思うところは僕は絶対に自分のためには曲を書かないんですよ。聞いてもらう人達、もしくはアーティスト本人、周りのスタッフがこういう曲ほしかったなとか、こういう曲聞いたら楽しいなっていうのを作りたいなって思っていて。出来ていないこともあるし、ぼろっくそに叩かれることもあるんですけど、ごめんなさい見当違いでした、ごめんなさいっていう時も」
「自分のエゴのために曲を作って、わし、こんなにすごいんやでって曲を作ることはまずなくて」というヒャダインさん。自分のエゴのために仕事はしないという姿勢が一貫しています。
武井さんも、「スポーツやってるとき、俺がチャンピオンになりたい、有名になりたい、金持ちになりたい、スターになりたいって思ってやってるときは全く評価されなかった。全然人気もなかったし、人に対しても感じ悪かった」「人を喜ばせるには何をしたらいいのかなってところからトークの勉強を8年して、人がちょっとずつ笑ってくれるようになったらスポーツも見てくれるようになったし、すげーとか言ってくれるようになった。何人の人が笑顔になるかだよな」とコメントし、自分よりも人に目を向ける大事さを確認し合いました。
――リスナーに向けて、就活に限らず人生をこれから作っていく仲間に対して何か一言。
「すっごいきれいごとに聞こえるかもしれないし、5%くらいの人にしか伝わらないかもしれないけど、本当に驕りたかぶらず感謝することは大切だなと思う。どんなひどい目にあったとしても、何かしらそこから学べることはあると思う。
もちろん本当にひどい目にあって、怒らなければならないこともあるけれど、100対0で悪いって考えちゃって自分が被害者になったらずっと自分は被害者だし、自分可哀想では何も進歩しない。何かしらそれから学び取って次のステップにいってほしいなと思う。腐らずに被害者意識を持たず、感謝を忘れずにぐいぐい進んでいってほしいなと思います」
今の自分(がいられること)に感謝してハッピーにいこうぜ! というメッセージが込められたヒャダインさんの曲の数々は、武井さんも「自分の就活にプラスになる何かを得られると思います」と太鼓判。例えば面接で凹むことがあっても、面接を受けられた事に感謝し、次に活かす――。そんな姿勢が大切です!