会社説明会では、ほとんどの場合に「質疑応答」の時間が設けられています。学生としては、このチャンスに社員の方からリアルな情報を教えてもらいたいところです。しかし、会社説明会は“選考の場”でもあります。どんなことでも聞いてよいとは限りません。ここでは、会社説明会でどのような質問が要注意なのか、また聞きにくい内容はどのように質問すればよいか、考えてみましょう。
自分で少し調べればわかるような質問は、リサーチ不足、すなわち企業への志望度が低いと思われてしまいます。説明会の前には十分に企業研究をして、以下のような質問をしないように気をつけましょう。
<資料に記載されている情報>
売上高などの数字・主要取引先・事業内容などは、ほとんどの企業のホームページや説明会資料に掲載されています。重複した内容を質問しないように、説明会に参加するときには企業のデータを書きとめたメモや資料を持参しましょう。
<説明会で話された内容>
説明会に遅刻したり、話を聞き逃したりして既に話されたことを確認・質問する人は意外と多いもの。これでは「話を聞いていませんでした」と告白するようなものです。説明会でメモは必ずとりましょう。もちろん遅刻は厳禁です。資料を読み、説明を聞いたうえで更に詳しい情報が知りたい場合は「資料には~とありますが」または「さきほど~というお話でしたが」と前置きしてから質問するとよいでしょう。
有給の取得率や出産後の復職状況などはしっかりチェックしておきたいもの。しかし福利厚生などの条件に執着したり、「きつい仕事があるかどうか」にこだわったりすると、働く意欲がないと受け取られる可能性があります。説明会では、積極的に働く姿勢をアピールしながら質問するとよいでしょう。
<ノルマ>
特に営業職を志望している場合は、ノルマの有無が気になる人も多いはず。「ノルマに追われる」という言葉もあり、“ノルマ=過酷な飛び込み営業”というイメージをもつ人も少なくありません。しかし企業が営業活動をしている以上は、達成を目指す予算は必ずあります。それを“厳しいノルマ”とネガティブに捉えるか、“目標”ととらえるかは社員としての資質が問われるポイントかもしれません。質問するときは、「ノルマはありますか」ではなく「営業職を希望しておりますが、個人の営業目標はどのように設定されているのでしょうか」とすれば、意欲的な姿勢が示せるでしょう。
<残業時間>
仕事と生活のバランスを重視したい場合、残業が多いかどうかは気になるところですが「残業はしたくない」という姿勢で質問すれば仕事に対して消極的な印象を与えてしまいます。残業時間は部署や個人によって違うので、平均値を聞いてもあまり参考にならないかもしれません。残業について質問するとすれば「御社では海外とのやり取りも多いと存じますが、夜間の取引業務などはどのようにして行っていらっしゃいますか」などとすれば、仕事の実情に即した回答が得られるでしょう。
また最近では残業廃止の方針の企業も少なくありません。その場合、「夜遅くまでの残業も厭わずやります!」という姿勢は、企業研究不足をアピールする結果にもなりかねません。質問する前に、志望企業の傾向を把握しておきましょう。
事業内容や売上高などと違って社員個人の事柄についてはケースバイケースのことが多く、質問しても自分に当てはまるかどうかわからないという場合もあります。個人の配属・評価などについて気になることがあれば、「キャリアアップ制度がどのようになっているか」「研修制度はあるか」など制度面に着目して質問してみてはいかがでしょうか。
<給与・賞与>
働くうえで給与は大事な要素ですが、最近は年功序列の賃金形態が減っているので生涯賃金も人それぞれという企業が少なくありません。特に中小企業では「御社での生涯賃金はいくらくらいでしょうか」と質問しても、的確な回答が得られないことも多いでしょう。賞与であれば年2回・給与○ヵ月分などと明記されていることもありますが、部署や個人の業績によって変動するので参考程度に理解しておきましょう。四季報には各企業の生涯賃金が記載されているので、同業他社の数字を参考にしてみるのもひとつの方法です。
<配属先>
入社後の配属先はどこになるのか、というのも説明会でよくある質問です。しかしその学生がどのような適性があるかわからない説明会という場では、企業としては「適性をみて判断します」としか言えません。事業展開などによっても人員配置は変わります。特に希望する部署があれば「○○部の仕事に興味がありますが」と伝えたうえで「具体的な仕事内容を教えてください」「どのようなスキルが必要でしょうか」などと聞いてみてはいかがでしょうか。
<産休・育休から復帰後の配属>
女子学生にとっては特に切実な質問ですが、上記と同様に「配属先」については個人の適正と職場の状況によって決まるとしか答えられないことが多いでしょう。産休・育休後の復帰しやすさについて知りたいなら「育休から復帰した後はどうなりますか」ではなく、産休・育休の取得率や、復帰した社員がどれだけいるかという実績について聞くのがよいでしょう。
このように、同じ質問でも聞き方によっては悪い印象を与えずに、より具体的な回答を得ることが可能です。どうしても聞きづらいことについてリアルな情報を知りたい場合には、説明会ではなく、親しい先輩などに個人的に尋ねるのがよいかもしれません。あくまでも説明会では、自分の知りたい事柄を企業の答えやすい形で質問するのがポイントです。質問のしかたを工夫して、できる限り多くの情報を収集できるよう取り組んでください。