編集者、ライターで「内定童貞」(星海社)の著書がある中川淳一郎氏。自身は一橋大学卒業、博報堂入社(2001年退職)という経歴の持ち主だ。そんな中川氏に「コネ」についての考えを聞いた。
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「コネ」はそんなに悪いのか!?
なんだかよぉ、世の中、「コネ」とか言うとネガティブな印象が強いよな。「ヒソヒソヒソ、彼、コネ入社なんだって」「あの娘、ヤマダさんとのコネがあるからいつも仕事もらってて不公平よね」みたいな感じになりがちである。
しかしオレは言いたい! コネは能力であるっ! と。いいか、人間の能力なんてもんは、100メートル9秒78です、とか微分積分ができるかどうか、とか「こ・こみゅにけーしょん力ばつぐんです」みたいな話になりがちだが、「コネ」も能力であることを認める風潮を作ろうぜ! とオレは声を大にして言いたい。
「コネがあるヤツの方が優秀」な理由
なぜかといえば、世の中はコネがあるヤツの方が圧倒的に優秀だからである。たとえば、会話が得意なヤツ、プレゼンが上手なヤツ、やたらと市況の分析がウマいヤツがいたとしても、「相手」がいない限り、その能力は役に立たないのである。
その「相手」とはあなたにお金をくれる主体、つまり「コネがある人」のことであり、それこそ所属企業の別部署の社員であったり、取引先のおエラいさんだったりもするワケだ。その人との接点がない限り、カネは降ってはこない。「コネ」という言葉の解釈は「あなたが持っている能力をより活用し、換金するための第一歩であり扉」だとすべきなのである。
「絆」だって「コネ」の一種
なんだかケムに巻いているような感じがしてきただろう。いやそんなことはしていない。意識高い系の学生がよく使う言葉に「人脈」という言葉がある。あとは、どうせすぐに疎遠になってしまうくせに、現在の人間関係こそすべて、仲間サイコー! 一生の友達だぜ! なんて学園祭の後に大はしゃぎする高校生が言うところの「絆」にしても言い換えてしまえば単なる「コネ」である。
ほかにも「繋がり」「接点」「知り合い」「知人」「旧知の仲」「親友」など、人間同士の関係については様々な表現があるが、突き詰めて考えれば、どれも「コネ」である。
普段の人間関係については美しいもの、尊いものと捉えるくせに、「コネ」と言われると途端に嫌悪感を抱くようになる。一体なんなんだ、これは! これはつまりだなぁ、お前らが、こうした人間関係においての最上位階層にある「コネ」を持っていないためひがんでいるだけなのである。
コネを持っている人間をひがむ前に、お前があらゆる場所にコネを持つ人物になり、大らかに「コネ」という言葉を使えるようになった方が人生幸せだし、ラクだぞ。
人間はそもそも「フェア」に生まれない
コネが悪いものではないことはこれで分かったと思うが(強引だな)、お前らが問題視するのは「コネ入社」だろ? 「フェアじゃありません!」と。ただな、人間なんてどうやってもフェアに生まれないものなのよ。仕方ないじゃないか。コネ入社のツテがなかったヤツは、その不公平さをどうやって払拭するか、ってことを考えろよ。そりゃ、オレだって老舗一部上場同族経営企業の創業家に生まれたかったさ。そして「淳一郎おぼっちゃん!」なんて言われては、プリン・ア・ラ・モードなんかを毎食後食う生活をし、クルーザーでカジキ釣りでもやりたかったわぃ。
世の中に色々な格差や不条理があることってのはさ、公立小学校で「十二面の筆箱」を持っているヤツとか「6段ギアの自転車」を持ってるヤツがクラスにいるのを知る時点で分かるものなんじゃないの? コネに文句を言うヤツは、ガキの時にその感覚を味わわなかったんだろうな…。まったく感受性の鈍いヤツだよ。だからお前はオッサンになってもコネに文句言っとるんだ。
コネ入社社員、優秀なヤツ案外多いぞ!
あとな、オレはコネ入社の宝庫(イメージ)ともいえる広告代理店出身だが、コネ入社と推測できる社員(超大手企業の社長の息子とか、超有名企業の創業者と同じ苗字の人がいるわけよ)と接したけど、優秀な人、多かったよ。
何しろ、クライアントのエラい人と喋っていても動じないし、やたらと知り合いが多いものだから、その人脈(コネのことだぞ)を使ってひょいひょいと問題解決をしてしまう。そうした人々と一緒に仕事をしてきただけに、オレは「コネ入社=バカ」論には懐疑的である。そりゃ、どーしようもないぐうたらのボンボンとかもいるにはいたが、コネ以外で入ったと思われるヤツにも同様のバカはいたぞ。
というわけで、コネは「人間関係」の最上位概念である、とお考えいただきたい。スマホゲームでよく階級があるじゃん。「真・剣豪聖」とかそんな感じでさ。そう思い、皆さまも「コネ」をガンガン獲得する人生をお送りください。
で、オレが博報堂入った時コネがあったか? ねぇよ。いや、あったかな。当時は一応出身大学別にリクルーターがいて、そこを経由して入ったから。「大学コネ」はあったかもしれないな、ガハハハハ。
中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
編集者
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行い、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)や『内定童貞』(星海社)など。