6月に入ると、夏のインターンシップ(以降、インターンと略)をどうするか、3年生は意識しだします。1・2年生も参加を検討するかもしれません。
さて、このインターン、学生が考えているような単純なものではありません。意外と知られていないウソというか誤解が多い行事でもあります。
今回は大学3年生の90%(石渡推定)が知らないインターンのウソ、誤解について勝手にランキングしました。
例によってと言いますか、このランキング、私、石渡が勝手にランク付けしているだけで、JOBRASS編集部は関与するものではありません。
→実情:むしろ落ちやすくなるだけ
解説:まずは、次のインターンESの志望理由をどうぞ。
この志望理由から読み取れるのは、「企業様はすごい」「働くことを体験したい」この2点のみ。
17字で済む話を331字書いても全く響きません。しかもどの社でも使えそうな志望動機でもあります。当然ながら落ちる可能性が高いでしょう。
わざわざエントリーシートを出すのであれば学生本人の話を書くべきです。これは本採用でも同じ。
ウソをつく、盛るというのも論外。むしろ落ちる確率が高くなるだけです。
では、何を書けばいいか。この連載シリーズの「エントリーシート改造講座」をどうぞ。
→実情:志望業界以外も含めて考えたい
解説:志望業界・企業のみのインターンに参加した方がいい、とか、志望業界・企業が決まっていないならインターンは参加しない方がいい、という学生が毎年、相当数います。
志望業界・企業が決まっていなくても、視野を広げる意味でもインターンの参加はおすすめです。
それと、志望業界・企業が決まっているにしても、違う業界・企業のインターンも含めて検討した方がいいでしょう。その理由は3位と重複するのでここでは省略。
大学が講義に組み込むインターンだと学生が志望していない企業や業務を割り振られることがあります。それでふてくされる学生や、やる気をなくす学生もいます。
私からすればせっかく視野を広げるいい機会を自ら捨てるのはちょっともったいない、と思うのです。
→実情:逆転する学生はいくらでも
解説:これも3年生がよく誤解する話。近年は、どの企業でも夏のインターン以外だけではありません。秋・冬のインターンや各種セミナーなど採用関連のプログラム・イベントを多数展開するようになりました。
それと、夏のインターンに落ちたら就活で負け組、とする発想はあまりにも打たれ弱すぎます。
夏がだめでも秋、秋がだめでも冬、というくらいで強く生きてください。
→実情:就業体験以外にも業界研究から就職支援まで様々
解説:インターンは直訳すれば「就業体験」。しかし、海外のものを輸入したら何でもカスタマイズしなければ気が済まないのが日本人です。
インターンについても、5日以上の就業体験型(大学が企業と協定を結ぶものが大半)、「就業体験できる」と言いつつ単なるアルバイト要員としか見ない「アルバイターン」(アルバイトとインターンの造語/ベンチャー企業やホテルなどに多い)、プログラム作成などを通じて報酬を支払い、さらにその出来次第で内定を出す直結型(IT業界が大半)、理工系の技術職志望に限定する技術インターン、1日でビジネスゲーム体験や業界研究などを進める「1日」(ワンデイ)など色々あります。
さらに近年増えているのが、「就職支援型」。本来なら大学の就職課・キャリアセンターが展開するような就職ガイダンス・模擬面接・自己分析セミナーなどを展開するものです。日数は1日で終わるところが大半。
なお、実施企業は商社、メーカーから流通・小売・サービスに至るまで就職情報会社とは限らず多種多様です。
この就職支援型のインターン、大阪に本社のある技術系商社の日伝が2010年ごろから展開。2015年には日本経済新聞社の就職人気ランキング(関西地区)で1位となる原動力になりました。
他にインターンとは銘打たないものでもセミナーや複数企業によるコラボイベント・セミナーなども広義ではインターンと言えなくもありません。
ここで5位「志望業界・企業以外でも」の理由がお分かりになる方もいるでしょう。
就職支援型などは志望業界・企業に当てはまるかどうかは無関係なのです。企業からすれば、まずは一度、自社を見てほしい、という思いがあります。そこで就職のノウハウを手に入れて、気に入らなければ別の業界・企業を改めて考えればいいのではないでしょうか。
→実情:「おみやげ」を出す企業が増加中
解説:「おみやげ」と言っても別に豪華なノベルリティをくれるわけではありません。
夏ないし秋・冬のインターンに参加した学生には「インターン参加学生だけの説明会を開催します」「インターン同期で食事会を開催」などの案内がインターン終了後に届くはず。そこに参加すると、今度は「インターン参加学生のみの特別選考」が連絡されます。
つまり、「おみやげ」とは「特別選考とその前段階のセミナー」を意味します。
企業からすれば3年生の夏ないし秋から動き出している学生はそれだけ就職へのモチベーションが高く、欲しい人材であることを意味します。その学生がインターンに参加しているのであれば、選考でプラスアルファを、と考えるのは自然なことなのです。
なお、特別選考と言っても、本採用選考と同じ選考基準、という企業が大半です。
→実情:12月以降のインターンは実質的な会社説明会を兼ねている企業も
解説:夏から11月ごろまでのインターンは別ですが、12月ないし1~3月のインターンは実質的には会社説明会という扱いをする企業が増えています。
そのため、例年、「3月が広報解禁だから、それまでは何もしなくていい」という学生が、就活のスピードについていけず苦戦する、という傾向があります。
このようにインターンは学生が思っている以上に様々な側面があり、それを理解していないと思わぬ落とし穴にはまることがあります。これから就活を迎える3年生の方はご注意を。
石渡嶺司(いしわたり れいじ)
大学ジャーナリスト
1975年生まれ。北海道札幌市出身。1999年東洋大学社会学部卒業後、日用雑貨の実演販売、編集プロダクション勤務などを経て2003年から現職。大学・就活関連の取材、執筆活動を続ける。当初から「大学勤務も採用担当者経験もないくせに」と批判されているが、14年経った現在も仕事が減りそうにない変わり種。
3月からJOBRASSマガジンの他、日本経済新聞サイト(日経カレッジカフェ)でも連載開始。
著書『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書) 、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)、『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『教員採用のカラクリ』(共著、中公新書ラクレ)など多数。