(※このコラムは、2015年2月19日に2016年卒学生対象メディアの就活NEWSにて公開されたものです。)
自分の家族間で普通に行われていたことが……
友人の家では通用せず、恥ずかしい思いをしたことはありませんか?
ずっと中にいる人からすると当然に思っていることでも、外から見ると異様に映ることはよくあることです。
では、日本独特と言われる就職活動事情について、留学生たちはどう感じているのでしょう。
今回は、日本での就職を希望する留学生4名に集まっていただき、座談会を行いました。
今回集まっていただいたのは、
A:24歳男性 早稲田大学 シンガポール出身
B:24歳男性 武蔵野美術大学 中国出身
C:29歳男性 中央大学 中国出身
D:23歳女性 中央大学 ベトナム出身
の4名です。
ではここから、座談会の様子を見ていきましょう。
A:すでに10社程度の説明会に参加し、面接の日程が決まっているものもあります。僕はエンジニア職志望なので、そういう募集をしている企業を探しています。大手企業に就職するつもりはなく、外資系やベンチャー企業を中心に受けているので、インターンなどの選考も含めてもう動き始めています。
B:僕は自動車業界を志望しています。大学ではデザインを学んでいるので、デザイナーとして就職する予定です。デザイナー職の採用活動は、早いところだと去年の5月からインターンが始まりました。12月頃から大手自動車メーカーの選考はいくつか始まっていて、すでに作品のポートフォリオを作成し、提出しました。今はすでに選考に落ちてしまった企業もあれば、結果待ちのものもあります。
C:年が明けてから、留学生向けの説明会に行きました。特にまだ選考は始まっておらず、今はエントリーシートの準備をしています。
D:12月に学校が主催した説明会と、留学生向けの説明会に行きました。また、様々な企業のOB・OGの方と会って話を聞かせてもらいました。現在は、志望する企業にエントリーを始めています。業界は特に決めておらず、社風やモチベーションが持てる仕事内容かどうかを考えながら活動していく予定です。
C:中国では学校の成績に基づき教授の推薦で就職することも多いので、学校説明会などは少ないです。大学や先生たちも就職活動において積極的ではなく、そこまでフォローはしてくれません。日本の大学はサポートが手厚いと思います。
B:中国でも地域によって違いはあるのですが、大きな企業に入るためには「英語の成績が何点以上」、「国立大学出身者のみ」など、制限される場合も多いです。仮に採用となっても、1年間はインターンのような形で契約し、試用期間があります。そこで成果を収めることができれば、契約延長となり正式に採用されます。それに比べて、日本の企業は学生の将来性を考慮して採用してくれるのが良い点だと思います。中国では、入社時点でのスキルが重要視されるので、中途採用のほうが入りやすいです。
A:日本はインターンが短すぎて、スキルを磨く機会が少ないと感じます。エンジニア職の場合、学校の勉強だけでは足りません。シンガポールでは半年~1年間程度といった長期間のインターンを行ってくれる企業も多く、そこから採用につながることも多いです。
入社試験を受けるタイミングに、特に制限はありません。しかし、日本はある決められた時期を逃すと採用してくれない。その時期を逃したら、また1年待たなくてはいけないという決まりには違和感があります。その待つ時間がもったいなく感じます。
D:ベトナムでは経験のある人が好まれるので、たいていの学生は卒業して、アルバイトしながら経験を積んでから就職します。新卒で就職するためにはコネがなければ厳しいです。
C:僕はすでに中国で一度、職に就いた経験があるので、一般的な大学生に比べて年齢を重ねているのが懸念点です。日本の企業は長く働くことができる人を好むと思うので…。
A:グループディションが苦手です。先日、選考でグループディスカッションに参加したとき、人事担当者が見ている瞬間だけアピールをする人もいれば、前に話した人と同じ内容の意見を言い換えて堂々と自分の意見のように言う人もいて、ディスカッションではなく、全員で同じ波にのっていくような場になっていると思いました。そういうのは「話し合い」とは呼べない気がします。僕が他の人と違う意見を言ったとき、変な目で見られたこともありました。
B:去年参加したある大手車メーカーのインターンは、良い結果を収めた学生が次回もまた呼ばれるという形式でした。僕も参加したのですがそのとき、日本の企業は選考に落ちる学生を最後に褒める傾向があると感じました。褒めてくれたので手ごたえを感じ、次回も呼んでくれるだろうと思っていると、呼ばれません(笑)。「これで会うのは最後だ」と思ったときに褒めるという行為は、日本企業特有の礼儀のような気がします。
A:僕も面接のときに人事の方からアドバイスをいただきました。その企業のインターンは不合格だったのですが、最後にこれからの就職活動に関してのアドバイスをくれました。選考を通して、日本ならではの「本音と建前」の区別が難しいと実感しています。
A:授業を平気でさぼりすぎです(笑)。いくら就活が重要でも、学生の本分を外れるのは変だと思います。
D:私も同感です。今回、就活時期が後ろ倒しになったことで、卒論をさぼる人が多くなりました。他には、急に全員髪の毛を真っ黒にするのが不思議です。終わった後にまた急に明るい髪色になるのも変だと思います。海外で特に女性は、そこまで奇抜でなければ、黒でなくても問題はないので。
A:ルールが多いという印象です。特に大手企業は特有の決まりが多いイメージがあるので志望していません。さらに、新卒時代だけを考えると、大手は給料が低く、物事の決定に時間がかかってしまうという印象があります。一方で、ベンチャー企業はスーツを着なくてもよく、自由なところが多いと思います。
B:日本の企業は、自動車業界だと世界トップクラスだと思っています。デザインも素晴らしく、電気自動車などをはじめとして、常に業界の最先端を走っています。また、日本の企業はコンセプトを考えるのが上手です。
他には、日本だと3連休が所々にあって、少しずつ休めるのがいいですね。中国ではまとめて休みをとることが多いです。僕はそれより3連休がたくさんある方がいいです(笑)。
C:とにかく残業が多いというイメージがあります。「仕事がなくても、上司がオフィスに残っているから帰れない」という雰囲気が不思議です。中国では気にせず、仕事が終われば帰ることがほとんどですが、もし僕が日本の会社に就職してそういう状況になったら……、きっと雰囲気を読んで帰らないと思います。
女性の管理職が少ないのも独特です。世界的に見ても少ない割合だと思います。中国では出産した場合でも、子供を両親に預けて1~2ヵ月で仕事に復帰することがほとんどなので、大きな問題にはなっていません。共働きも多いです。
D:自由度が低いと感じています。急な転勤があったり、同じ仕事を何年もやり続けているという話を聞いてそう思いました。仕事が終わらなくて家に帰れなかったり、過労死したりする働き方は変だと思うし、怖いです。
一方で、チームワークがあって助け合いながら仕事をしているという良いイメージもあります。海外では、個人で働いている意識が強い人が多く、他の社員と助けあうことはあまりありません。
A:就活は恋愛と同じだと思っています。最初に付き合った人と結婚する人は多くないですよね。時とともに価値観は変わっていくので、最初に就職する企業へのこだわりはありません。昔は「どうしてもこの企業がいい!」と思っていたのですが、様々な企業を見ているうちに、面白そうな企業が意外とたくさんあると気付き、1社にこだわる必要はないと思い始めました。
「人生は統計」が私の信条です。自分から行動を起こし、知っている数を増やせば増やすほど、当たる確率は上がると思うので、積極的に活動していきたいです。
B:では、一言。日本で就職できるように頑張ります。
C:同じです(笑)
D:卒論もしっかり書きながら、就職活動も頑張ります。
当たり前だと思っていた学校説明会や先生たちや大学からのフォローは、実はありがたいものだと改めて気が付いた人もいるのではないでしょうか? その一方で、全体的に日本の就職活動は理不尽なルールが多いように見えるようです。就職活動で行き詰まったとき、当たり前だと思っているものをもう一度見直してみると、新たな切り口が見つかるのかもしれません。
(取材・文/JOBRASS編集部)