Q)ネットニュースの読み方がわかりません。ヤフーのトップページにあるニュースや、スマートニュースを押さえたらいいですか?
A)それでいいと思いますよ。様々なメディアの集積体であるヤフーやスマニューなどを見るのは良いことです。ただしそればかりでは、見え方が偏っている可能性があります。ネットの場合は、とりあえずアクセスランキングが高いものをついつい見てしまう。となると、偏ったものが上位に来ていることが多いので、そればかり読むとロクなことはないのです。
あとは、就活期間中だけでもいいので、日経新聞を読んだ方がいいかもしれませんね。たとえば、自動車メーカーの面接を受ける時に、「ドナルド・トランプが本気で日本の自動車メーカーに対して関税を大幅に増加した場合、いかにして利益を確保すべきか?」といった質問をされるかもしれません。
この場合、「大幅」というのが一体どのくらい分かっていなくては、答えることすらできないんですよ。これまでは2.5%でしたが、トランプ氏は38%にすることも示唆した過去もある。こうした件が日経新聞には出ているわけで、恐らくは面接官も読んでいる日経新聞に書かれてあるネタぐらいは把握していた方が、面接ではスムーズに答えることができると思います。
さて、ネットニュースについてですが、「読み方がわかりません」の意味がわかりません。だって、そこに見出しがあってそれをクリック・タップすれば文字が出てくるわけですよね。それがなんで「読み方がわかりません」なんですか? あなたは「わかりません」なのではなく、「わかろうとしない」んですよ。学生だから無知でいい、といった気持ちで生きているんじゃないですか?
今はモラトリアムで色々なことを知らないけど、これからの長い人生をかけ、オレは成長するのだ! と思っていらっしゃるかもしれませんが、21歳や22歳になっていれば十分な大人です。多分、あなたの問題は、恥を恥だと思っていないことなのかもしれませんね。
そう突き放すのも申し訳ないので、ネットニュースの読み方について解説すると、「二方向の記事をちゃんと読め」ということになります。昨今のホットなテーマとしては森友学園にまつわる各種報道です。今回は、「政権派」「反政権派」が、籠池泰典前理事長を中心とした学園側からの証言、安倍昭恵・首相夫人からの情報を元に「これで政権が倒れる!」「野党にブーメラン刺さるwww」とやり合っています。その時、根拠となるのが各種ニュースサイトです。
どちらが正しいのかは結局分かりません。ただし、両論を見たうえで、「どちらがより正しいかな……」という判断力をつけ、面接で堂々と意見を言えるようになってください。前出・自動車関税についてですが、「このままでは日本の貿易はヤバい」と危機感を煽るメディアもあるし、「だったらアメリカなんて捨てとけ」というメディアの両方があります。
面接の場では、こうした「前提となる知識」を元にした「あなたの見解」を問われることが案外あります。ネットニュースは両論を読み、紙の新聞はとりあえず日経を読んでおいてはいかがでしょうか。或いは、自宅で親が購入している新聞の前日の夕刊でもとりあえず電車の中で読んでおけば、スマホを使ってまとめサイトを見て無駄な知識を得たり、どうでもいい友人のFacebookやツイッターを見ていちいち「いいね!」を押すよりも有意義ではないかと思います。
中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
編集者
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行ったり、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書) や『内定童貞』(星海社)など。