Q)もしだれかを採用する場合、「何」を重視しますか? あるいはどういう人は避けますか?
う~ん、漠然とした質問ですねぇ。では、まずは漠然と答えますが、「なんか良かった」とか「なんかコイツ、ウチに合いそう」とか、「コイツが活躍している様子がなんとなく想像できる」といったことしかないんですよね。
これって、会ってみればすぐに分かる話でして、私のような編集・モノカキ系の会社を経営している人間からすると、恐らく「目を合わせられないヤツ」は一発アウトでしょう。なにせ、取材をする人間というのは相手の顔をきちんと見て、ハキハキと質問できなくてはいけない。
あとは大学の体育会ラグビー部とか、相撲部にいたような方が大声を張り上げて「自分はー! これまでー! 大学でー! 日本一をー! 目指してー! 死に物狂いでー! ライバルのぉー! 打倒にぃー! 1日ぃ! 24時間っ! かけてぇー! きましたぁー!」なんてやられても、「ちょっちょっ、キミ、ウチ、そんなアツい会社じゃないんで……」と言いたくなります。
別に人と目を合わせられない人も体育会のアツい人も、優秀か無能かでいえば、多分優秀なんですよ。ただ、私の「編集」「執筆」をメインとする会社には向いていないんですよね。だから「何」を重視するかといえば、本当にシンプルで、「弊社のカラーに合ってるか」ということに加え、「この人は弊社で幸せになれそうか」の2点に行きつくのではないでしょうか。
基本的に入社のための面接って、学生をいじめるためにやっているのではありません。面接する側にしても、貴重な時間を使って面接しているわけですから、できればいい人を取りたい。本当に欲しい人材であれば、次のステップに上がってほしい。その時に「何を重視するか」みたいなことはよく分からないんですよ。
こうして企業ごとに基準は違うのですが、まぁ~、強いて共通点をいうのならば、以下の人はどこでも求められる人材ではないでしょうか。
・すぐに辞めなさそう
・あまり文句を言わなさそう
・女癖/男癖が悪くなさそう
・SNSをやっている場合、そこでの発言がまとも
・挨拶がちゃんとできる
・お礼がちゃんとできる
・身なりがきれい
・ちゃんと風呂に入っていて、髪の毛も手入れされ、ヒゲも剃っている
・自己顕示欲が強過ぎない
・犯罪歴がない
・言い訳をしない
・笑顔がステキ
・質問にスパッと答えられる
と考えると、逆に「欲しくない人材」はこれらの真逆の方々です。特に最後の「質問にスパッと答えられる」は重要なんですよ。例えば「学生時代一番頑張ったことはなんですか?」と聞かれた場合、こう答えたくなるじゃないですか。
「はい、居酒屋のバイトです。私は、居酒屋のバイトを通じ、お客様の笑顔をいかに生み出すかということに心を注ぐ体験をしました。また、バイトリーダーとして、社員さんと一般のバイトさんの間をつなぎ、現場が円滑に回り、さらにはお客様を笑顔にするために粉骨砕身日々自己研鑽を怠らなかったのです。そして、私は、このバイトによって、親からの仕送りがなくてもなんとか生活ができました。仕送りをもらい、余裕のある生活をするそんじょそこらの学生には負けないぐらい、濃密かつ努力をする学生生活を送ることができました……」
いや、これって聞かれたことに答えていないんですよ。聞かれたことは「学生時代に一番頑張ったことはなんですか?」ですから、回答は「バイトです」の一言でいいんです。
さらに面接官から「頑張ったエピソードを教えていただけますか?」という畳み掛けの質問があるようなら、そこで「ある時、突然お客さんの一人が心筋梗塞を起こしてしまい……」といったエピソードを語る。
とにかく仕事というものは、「聞かれたことに的確に、簡潔に答える」ことが求められます。余計なことはしないでいいのです。上記ポイントに反する人と、聞かれたことさえできない人はいりません。
中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
編集者
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行ったり、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書) や『内定童貞』(星海社)など。