就職するにあたり、学部は関係あるのでしょうか。採用担当者に聞いてみると「理系の研究職を除き、総合職では文系・理系問わずあまり関係ない」という声が多数ですが、一方で都市伝説として根強いのが「文学部は他の学部に比べ、変わり者だと思われる」なんていう噂。経済学部や法学部など、“実務”とは遠い学問だからそういう噂が生じたのだと思われますが、果たして実際、文学部の人はどういう就活をしているのでしょうか?
今回JOBRASS編集部では、文学部出身で、現在は出版社に勤める山村さん(男性・41歳)に話を聞いてみました。ここで明らかになった、意外な“文学部の就活”とは?
文学部って、就職しない人が結構いる学部でもあるんです。法学部とか経済学部に比べて、そもそも実学を勉強しようという人ばっかりではないので、留年率も高いかも(笑)。
僕の場合、大学受験時に普通に興味があるところ、あるいは興味を持てない分野を除外したら文学部だったというだけで、そもそも入学する時点で、“趣味人”の集まりのようなところがあって、就職しようという意識が他に比べて遅い気がします。就職を目標として何か資格をとるとか、そういったことをあまりせず、役に立たない方向で学生生活をエンジョイしちゃう。だから文学部の人たちは、就活にあたっても案外あくせくしていない。
――大学院進学は考えなかったのですか。
考えたけど、結局就職したのは、上の人たちをみていて、そこで(研究者として)一生食べていく覚悟がないとダメだということがわかったから。修士までいって、そこから就職しても即戦力として役に立つわけでもない。
――就活にあたり、何から始めたのか教えてください。
僕の場合、3年生の終わりくらいからESとか出し始めた。興味があるところはマスコミで、テレビ、新聞、出版、広告、ラジオなどすべて。野球が好きだから、いちばん行きたかったのはスポーツ新聞。OB訪問とかはしていない。オーソドックスな就職活動でした。1年目で全部落ちて、秋募集もだめで、就職浪人。卒論を出さずに留年しました。
――1年目と2年目の就活で、自分のなかでどういったところが違いましたか。
1年目は勘違いしていたんです。“企業側から、何か自分のいいところを見つけて評価してくれるだろう”っていう。自分からアピールするのはカッコ悪い、面接官の引き出し方が良くないとか思っている。言いたいことありませんかって言われて、「あれ、全部聞いてくれるんじゃないの」くらいに思っていた。
2年目の就活では、ESでこういうこと書いたらこういうこと突っ込んでくるよねとか、何を聞かれるのかということがわかってきました。こういうエピソードを言えば反応がいいという経験値、相手に突っ込んでもらいやすい書き方のテクニックをあげていった。
2年目は切羽詰まった状況で、業界の幅を少し広げて、書店や流通も受けました。そして大手書店の内定はもらったけど、そこで働く自分が想像できなかった。本が好きだからって受けたけど、本を売るという行為に限定されず、ものづくりに携わりたかったんです。
僕はマスコミに絞ったけれど、他の文学部の人はマスコミ、銀行、生保、メーカー、商社とか、さまざまでした。最終的には、相性だと思います。今働いている出版社は、“普通”に話していたら、次へ次へと選考がすすんでいった感じがしました。
選考では作文、筆記試験もありました。作文はもともと得意で、面接は4回。挫折経験を聞かれました。これは今自分が面接官になったときにも聞いています。(学力が)優秀でも、罵声も飛び交うような職場でやっていけるかどうかというしぶとさを見るんです。
僕の挫折経験? 「失恋です」って答えました。よくある面接テクの、挫折してこれこれを学びましたとか、長所につなげるテクなんて頭がまわらず、普通に「人格否定された気になりました」って。
僕はこれといって得意技もない。入社後、いちばん近い先輩が5歳くらい上で、こうなれる自分が全く想像つかないなかで、目の前の仕事をやり続けなくちゃいけない状況でした。ものを考える余裕がなく、よく怒られました。今から思えばあんなによく怒ってくれたなっていう感じです。
辞めようと思ったこと? ないです。始めたことを辞めるのが苦手だっていうのはある。凝り性なんです。それは“文学部っぽい”のかもしれません。
文学部の就活という意味では、出版社には文学部が多い気がします。だから他と比べて“偏見”もない職場。「なんで文学部なの?」とか「何ができるの?」なんていう疑問も聞かれない。文学部に面倒くさいヤツが多いっていう意見? さあ……でも、出版社はそんな人たちばっかりだから(笑)。
面接には、理系も含め、いろんな学部の学生がきます。「ものをつくりたい」と思っている学生を採用したいですね。何をやってきたかっていうよりも、何をやりたいかっていうことをもっている学生。ESにはバイト、サークルとか書いてあるけど、面接ではそれらについてほとんど聞きません。それよりは最近のニュースで興味をもったものを聞いて、じゃあ週刊誌志望なら、それをテーマにどんな記事を作りますかっていうことを聞きます。
「作ろう」だけじゃなくて、「お金を儲けたい」という気持ちがあってもいい。でも、最初から「コンテンツビジネスでおカネを儲けられるから」という視点だけで受けに来られるのは、ちょっと違うかな。
例えば過去、テレビ局である有名なキャラクターAをたくさん売ってきたっていうバイト経験をしたことがあって、イベント重視でお金を儲けるのはどうですかっていう学生がいた。その学生に「Aのように日本を代表するコンテンツを自分で作りたいとは思えないのか」と質問したら、「思わない」という答で、残念でしたね。せめて「次のキャラクターAを自分で作りたい」と答えてくれる人が良かった。
出版社では、根っこで“ものづくり”が好きな人、面白いと思ったものを、みんなに届けたいっていう思いがないといけない。最低限それが感じられる姿勢がみたいって思っています。
僕の就活1年目がダメだったのも、“受け身”だったから。文学部の人に言えることがあるとしたら、そうですね、好きなことをやっているだけじゃなくて、「自らアピールする」意識をもつことかな。学部なんて気にすることはまったくありません。ものごとにコツコツ打ち込む姿勢をアピールするのもいいし、何より好きな学問があるっていうのは素晴らしいことなんですよ!
出版業界は応募者のレベルや志望度も高く、採用へは狭き門といえます。そこで必要なのは、企業・業界研究。企業ごとでどのような取り組みをしているのかを早く知っておくことが必要です。また、できればこうしたネット上ではなく採用担当者やスタッフなど実際にそこで働いている人の声を聞いておくことが必要でしょう。
そこでジョブラスでは、11月に集英社が参加する特別セミナーを実施します。インターンシップをこの夏行っていないため、リアルな声を聞くにはとっておきの機会です。さらに本イベントでは、採用担当者だけではなく、「るろうに剣心」や『新テニスの王子様』など、数々の話題作を生み出している「ジャンプスクエア」のスタッフも登壇!この機会にぜひご参加ください。
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