(※このコラムは、2015年1月13日に2016年卒学生対象メディアの就活NEWSにて公開されたものです。)
JOBRASS編集部が実施したインターネットアンケート調査によると「就職活動で最も辛かったことは?」という質問に対して、45.5%の人が“面接”と回答した。コミュニケーション能力が重要になってくる面接…。しかも、アピールのために与えられる時間は10分程度。いや、勝負は最初の数秒で決まってしまうのかもしれない。
短い時間で相手の興味を惹かなければ生き残れない面接に、「コツ」はないのだろうか? そこで今回、JOBRASS編集部は、一瞬で相手に興味を持ってもらうことに関してのスペシャリストである「ナンパ師」の方に、「コミュニケーションのコツ」についてお話を伺った。
インタビューに協力してくださったのは「口ベタ営業マンが渋谷ギャルをナンパし続け半年後に1億の契約をとった件」という書籍の著者・なべおつさん。すごい、これは期待できそうだ…!
就職後に、ナンパ好きな先輩についていったことがきっかけでナンパデビュー。メキメキと才能を発揮し、周りの友人からは“スター”と呼ばれ、本を出すほどの実力に。著書『口ベタ営業マンが渋谷ギャルをナンパし続け半年後に1億の契約をとった件』は、Amazonのランキングでも上位にランクインし、セールス・営業部門では1位に輝いたこともあるほどの人気書籍。
‐ナンパと就職活動の共通点はありますか?
ナンパとは、街で歩いている知らない人に声をかけて、そこから話をつないで食事やカラオケへ誘って、連絡先を聞くっていう一連の行動のことなのですが…
‐存じ上げております(笑)。
ですね(笑)。就職活動における面接との共通点というと、「相手が何を求めているのか、その場のわずかな時間で判断して、ニーズに応えた会話をしなければならない」という部分があると思います。簡単なことで言うと、「この人は固そうな人だな」とか、「ノリがいいな」とか、雰囲気から読みとって、話し方を変えます。いくつかパターン化しておくのもいいかもしれませんね。
そして、自分の強みを相手のニーズといかに合わせるか、という視点が重要になってきます。
例えば、寒そうにしている人がいたら、「お姉さん寒そうだから、渋谷イチおいしい鍋の店で温まりに行きません?!」とアピールしてみます。相手としては「寒いから鍋が食べたい」と積極的に思っているわけではないけど、言語化することで「確かに食べたいかも…」と思ってもらえる(ニーズ化できる)かもしれません。「渋谷に詳しい」という強みとも、自然に結び付けられます。
「渋谷イチ」っていうのはウソでもよくて、相手に「ん?」と思わせるような、フックとなるワードを入れることを意識します。まぁ面接ではこんな適当なこじつけでニーズ化しても薄っぺらいやつと思われるだけなので、しっかり企業研究しておく必要がありますね。
‐「自分の強みを相手のニーズに合わせる」のは、面接でもかなり重要になってきますよね。
はい。でも、学生のほとんどは、企業や面接官のニーズを考えて話すというよりも、「自分の良さをどれだけアピールできるか」という気持ちが強すぎる気がします。実際、私も過去はそういう学生で、就職活動には失敗しました…。どんなにすごいことができても、相手が興味を持っていないことだったら、気にも留めてもらえません。ナンパも同じです。
‐ナンパをするとき、初対面の人に好感を持ってもらうコツはありますか?
まずはちょっと並んで歩きつつ、横から明るく“あいさつ”します。「こんばんはー」って。
大切なのは、目を合わせて声をかけること。それが自信の表れにもなるし、目を合わせて話せば、「あ、嫌がってるな」「そこまで避けられてないな」のように、相手との心の距離感がわかります。相手の反応や所作を見ながら会話を組み立てていくのは、コミュニケーションにおいて非常に重要なポイントです。
‐なるほど。やはり自信や信頼は、目を合わせることで伝わるのですね。緊張はしないのですか?
緊張は、もうしませんね。最初はすごく緊張しました。いろいろ対策みたいなものを考えて、散々試したのですが、落ち着いたのは“経験こそが重要”という結論です。面接で緊張してしまうのは「初対面の相手とのコミュニケーションに自信がない」か、「どんな会話をすれば自分の魅力を伝えられるか、が分からない」からだと思います。逆にいえば、コミュニケーションに自信があって、どんな会話をすべきかが分かっていれば緊張は軽減できます。
それは「志望していない企業のエントリーを増やして面接の経験を増やせ」ということではなく、「初対面の相手」とのコミュニケーション機会の絶対数を増やすことが重要だと思います。
「渋谷の路上でじゃんじゃんナンパをしろ」とは言いませんが(笑)、OB・OG訪問をしたり、説明会などで他の就活生に声をかけてみるのも良いのではないでしょうか。初対面の相手(特に社会人)とのゼロからの会話に自信がつけば、面接の緊張はほぐれるはずです。
‐相手の興味を惹くコツってありますか?
ナンパのときは、まず声のトーンを高くして話しかけて明るい印象を与えます。あとは相手に突っ込ませるポイントをつくることで、笑いを引き出すことを意識していますね。笑いが起きると場が和みますし、フランクな会話で打ち解けやすくなるので、相手の興味を惹きやすくなります。
ただ、よく面接で印象に残ろうとして一発芸をしたり、ギャグを言ったり、という方法で笑いを誘う人もいますが、笑いがとれたり目立てればいいというわけではなく、相手のニーズを捉えたやりとりの中で、「自然と笑いを生めるコミュニケーション力があるか」が重要だと思います。
それは形式張った一問一答でも起きないし、暗記だけのトークでも起きない。目の前の人と心の通ったコミュニケーションをしながら、相手がどういう人なのか見極める視点が必要だと思います。
‐断られたり、精神的に辛かったりしたときはどうしていますか?
とりあえず話してくれそうな人を選んで、自信をつけることですね。ハードルの高そうな人ばっかり狙って、断られ続けると、一向にメンタルが回復しないので。(笑)
‐人気のある企業ばかり受けていないで、自分に興味を持ってくれる企業を探して自信をつけるみたいな感じですかね?
あ、そうですね! そのバランスを取るのって、精神的な部分を考えると、かなり必要になってくると思います。メンタルが一度折れちゃうと、回復するまで時間がかかりますし、ナンパでも面接でも、自信なさそうにしている人に魅力は感じませんから。
筆者は女性なのですが、ナンパされる側の目線で考えると、最初にインパクトがあって面白いと好感を持った場合でも、そのあとにカフェまで一緒にいくとは限らないと思う。最終的には、「気さくだけど、話していて信頼感がある」とか、「気が利く」とか、無意識にそういう部分で判断しているような気がする。イケメンだからとりあえずついていくという人もいるかもしれないが、長期的に付き合うと考えた場合、コミュニケーション能力を重視する人が多いのではないだろうか。
インタビューを通して、ナンパのテクニックには、就職活動に活かせそうなものがたくさんあると実感できた。ただ今の時点でコミュニケーション能力がない人も、安心してほしい。なべおつさん自身も口ベタな性格から“伝説のナンパ師”になった。
「コミュニケーション能力は育ちます。僕の場合はナンパで育ちました(笑)」というように、訓練すれば育てられるものなのだ。今からトレーニングをすれば、就職活動が本格化し始めるまでに間に合うかもしれない。「ナンパ」というと低俗なイメージがつきまとうが、合同説明会などで他の就活生に声をかけて情報交換するのも、ある意味ナンパだ。「見知らぬ人には声をかけるべきではない」という意識を少し緩めて、積極的にコミュニケーションをとってみることは、面接のいいトレーニングになるかもしれない。