「バスにゴルフボールは何個入りますか?」
「都内のマンホールはいくつありますか?」
就職活動の選考では、たまにこのような問題が出題されることがあります。
「そんなこと聞いて何になるんだ」
「知らねーよそんなこと」
と思うかもしれませんが、これにはひとつの意図があります。
このような特定できない数や調査をすることが困難なものなど、その場では絶対に正確な回答が出せないような難しい問題を論理的に推論し、回答を導き出す考え方を「フェルミ推定」と呼びます。
今まではマイクロソフト、Googleなどの外資系企業を中心に出題されることが多かったようですが、こうした企業に続いて出題しているところも増えてきているそうです。
フェルミ推定では、回答を導き出すための論理的な考え方が重要視されるようですが、とても難しい問題であることが多いです。
そこでJOBRASS編集部は、就活生の役に立つ情報が提供できないか、と考えた結果、「500mlのペットボトルに“ごま”は何個入るか?」を実際に数えることにしました!就活生の皆さん、これで超難問に即答できますね!
≪真面目に知りたい方はこちら≫
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★フェルミ推定の攻略法
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さっそくペットボトルをスタンバイ。
そしてごまを用意。このときは、ここから始まる小さなごまとの戦いが、想像以上に過酷なものになるとは、思ってもいませんでした。
まずはペットボトルをごまで満たします。おおおお! 結構な数になりそうな予感…。
さっそく少しずつごまを取り出しながら数えていきます。
「ごまってこんなに小さかったっけ?」と疑ってしまうほどの細かい作業に…
やっとここで、3分の1程度が終わりました。ここの時点では25609個。もう一度言います。2万5千609個です。「やらなきゃよかった…」なんて、1ミリも思っていません。これもすべて就活生のため。このとき既に、約3時間が経過していました。
ちょっと休憩をして、また数え始めようとしたその時…
ペットボトルを倒してしまい、数え終わったものと混ざるという最悪の状況に。
他のスタッフも、ここは「励ます」という大人の対応をしますが…
しかし、手もとには怒りがこみ上げている様子が、目からは明らかな殺意がうかがえました。
気を取り直して、再び数えます。「さっきまではウォーミングアップ…本番はもともとここから」と各々言い聞かせ、数えていきます。
何時間も真剣にごまと向き合っていると…、正直、なぜこんなことをやっているのかがわからなくなってきました。田舎で暮らす両親に「あんた最近どんな仕事してるの?」とたまに聞かれますが、「ごまを数えている」と言ったら、どんな気持ちになるでしょう。
しかし、なんとかここで就活生の力になりたいという気持ちを思い出し、突き進みます。この時点で、37891個。
数え直してから、約3時間30分(始めてからは6時間30分程度)が経過。
この辺りでコーヒーを飲みながら休憩。
先ほどのようなミスを犯さないように遠く離れたところで飲みます。こんなことをやっているうちに、気が付けばこのブラックコーヒーのように外も真っ暗…。すっかり夜が更けてしまいました。
その後もひたすら数えていきます。カウントしている正の字も着々と増えていきます。ちなみに1本で100、つまり正の字1つで500。まだまだ戦いは続きます。
ようやく終わりがみえてきたのではないでしょうか! この時点で、58909個…!
真っ黒なごまの色に相反して、意識が朦朧としてきたスタッフはとうとう白目に…。
数えるのにも慣れてきたのか、心なしかペースも上がってきているような気がします。ここまでで、約6時間が経過しました。
人が「生涯、ごまと触れ合う合計平均時間」をこの日だけでゆうに超えた自信があります。
終わりがみえてきたので、自然と正の字のなかにも笑顔が垣間見えました。
そして最後のごまが放出され、ペットボトルは空に。
側面にくっついたごまをカウントし…
念願のフィニッシュ!
やっと終了しました…。約7時間の戦い(こぼす前も含めると10時間以上)の結果は…、
62578個!
皆さん、これで「500mlのペットボトルにごまは何個入りますか?」という問題が出たときは2秒で答えられますね!(※この後、ごまはおいしくいただきました)
さて、本題です(笑)。
まずはフェルミ推定攻略の前に、企業がフェルミ推定で「見ている」ポイントを整理しましょう。
フェルミ推定で測れる能力を大雑把にいうと「地頭力」です。
「地頭力」の定義は主に次の3つです。
「知識力」「機転力」「論理的思考力」
そのなかで、フェルミ推定では特に「知識力」と「論理的思考力」が必要となります。ところが、そもそも「地頭」は幼少期からの学習や体験活動によって培われる能力であり、一朝一夕で身につくものではありません。
じゃあ、攻略法はないの?
と思うかもしれませんが、「最小限の努力で」平均点を取る方法はあります。攻略の糸口は「最低限の知識を覚えること」と「解法に当てはめること」だけです。
最低限の知識は6つ!
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まずは6つの「知識」を覚えましょう!
フェルミ推定では、前提知識がないと「仮説」が立てられません。
例えば、「アルゼンチンで眼鏡を所有している人は何人?」という質問が出た場合、アルゼンチン人口がわからないと見当もつきませんよね。
■必須■
1)日本の人口:約1億2千万人
2)日本の面積:約38万㎢
■余裕があれば■
3)日本の可住地:約30%
4)1年の出生数:約85万人
■さらに余裕があれば■
5)大学進学率:約54%
6)日本の法人数:約350万社
この知識を覚えたら、次は解法です!
最低限の解法はこれだ!
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残念ながら、実験例のように「ペットボトルに入るゴマの数は、62578個!」と正解だけを提示しても評価はされません。フェルミ推定では、正解を導くための<前提知識+仮定の仕方>を評価の対象としています。
例えば「日本に郵便ポストはいくつあるか?」という出題の場合、こんな感じです。
<1.前提>
▼郵便ポストの数
=郵便局+ポスト+コンビニ内ポスト
▼日本の面積は38万㎢
▼可住地は約30%
<2.仮説>
▼ポストは可住地に存在する
▼可住地は約12万㎢
▼1㎢にポストは約2本(郵便局0.4局、コンビニ0.6軒、ポスト1本)と推測する
※1000メートル歩いたら一つはコンビニかポストがありそうですよね。
<3.結論(計算)>
24万本=[1㎢に2本] × [12万倍の広さ]
※調べると郵便局が2.5万局、ポストは18万本
繰り返しになりますが、大切なのは、思考の過程を伝えること。前提知識のもと、どのような仮説を立てて結論に導くかをつたえられるようにしましょう。
ちなみに、ゴマの問題は…
<前提知識>
ペットボトルの体積は500㎤
ゴマの大きさは大体円錐
円錐の体積 = 半径 × 半径 × 3.14 × 高さ ÷ 3
<仮定>
ゴマの直径は1㎜・高さは2㎜とする
<結論・計算>
ゴマの体積
=0.5㎜×0.5㎜×3.14×2㎜÷3
=0.52㎣
=0.0052㎤
500㎤÷0.0052㎤
=96,153粒
(取材・文/JOBRASS編集部)
2021年7月再掲