就活で常にものごとがうまくいくなんてことは滅多になく、常にどよーんとした気持ちになりがちです。ましてや周囲からは「内定取ったぜ」という話がちらほら聞こえてきたらもう焦りはピークになり、まさに「行き詰った」状態になってしまうわけです。
そんな時は、一旦信頼できる社会人に「模擬面接」をやってもらうといいと思いますよ。というのも、多くの学生は、志望企業から好まれるであろうエピソードを勝手に予想し、渾身の自己PRを作り上げてしまっていることが多いから。例えば、広告代理店の面接で「私はサークルの幹事長の立場として、学校当局とサークルの間の橋渡しをする役割を務めあげました。異なる両者の言い分をきいて、なんとか落としどころを見つけるのが仕事です」みたいな話を言って
しまいがちです。
――よくありがちな自己アピールですが、中川氏によると、これが問題なのだとか。どこが? どうして? その理由を解説!
学生は、「広告代理店の仕事は、異なる立場の主体の仲介をすることだから、両方の言い分をいかに聞き、落としどころを見つけるかのエピソードを入れればいいんだな!」と判断し、この自己PRをつくってしまったのかもしれない。
でも、もしかしたら、「私は学園祭でいかに安く仕入れ高く売るかを考えた結果、メーカーの賞味期限直前のものを使うことを考えた。そのために、専用の業者と懇意になり、結局はタダでもらえるぐらい仲良くなった」といったエピソードの方が使えるかもしれない。いや、私がかつて広告代理店で採用をやっていた時は、後者のエピソードの方がグッときますよ。だから、一度自己PRがマズいのでは? ということを信用できる人に相談してください。
あと、私は「コネ入社」を狙うべきじゃないかと思います。よくある新卒採用のシステム(ES→会社説明会→グループ面接→個別面接 など)の流れがあまり得意ではない人ってのは、同じことを別の会社でやっても同じ結果になってしまう。
ここで言う「コネ入社」は、別に実家が一部上場企業の社長で、そのコネを活かして関連会社に入ってしまえとかそういうことではありません。小さな会社で働いている知り合いの社会人に「○○さんの会社、入れてもらえませんか?」と言ってしまう。
不思議な話ですが、就職活動を頑張って大企業に入ったものの、2年ぐらいで聞いたことのないような小さな会社に転職してしまう人は案外多いです。最近よくあるIT系のコンテンツ制作会社とか、あとはアプリ開発会社なんて、「友達同士で始めた」「そうしたら別の友達も入ってきた」みたいなことがよくあるので、そうした緩い人事の方針を持っている会社に入れてもらうことを考えてみるのもいいですよ。
それこそ、Facebookで「スイマセン、一度会社見学させてもらえる方いらっしゃいますか? そのうえで、僕、働きたいんですけど」みたいにメッセージを送ってみる。さらには、社会人の知り合いに「○○さんがツテのある会社ってありますか?」と聞いてみる。
これらはあまりにもエキセントリック過ぎる事例ですが、2014年新卒の「即戦力男」として話題になった菊池良さんって人がいるんですよね。この人は、自分のPRサイトを作って、ネット好きな方々の気持ちをかっさらっていった。「即戦力」ってうさんくさい言葉だけど、いかに自分が「即戦力」かをパロディ仕立てのサイトにした。インタビュー動画を公開したり、TOEICのスコアが160点しかないことなども含め、とにかくウケました。菊池さんは、多分、就活の理不尽さに怒っていたんじゃないかな。だから、就活そのものを茶化してしまえ、と思ったのかもしれない。
結局、ウェブ系制作会社のLIGに入り、今年の春は先輩同僚2人と一緒に5000人規模のIT企業に移りました。3人一緒に入れるのか? もしや出向か? なんてことも思ったりするのですが、まぁ、とにかくLIGという比較的人事も柔軟な会社に入り、それなりに楽しくやっている感じでした。彼自身は表情があまり変わらない人物で喜怒哀楽は見せないため、本当のところで何を考えているのかは分からないけど、LIGに入ったという事実はある。
別に菊池さんみたいに目立つことをやれと言いたいワケではありません。世の中には、正規のルート以外の就職というのも案外あるので、そちらの方法も同時にやってみてはいかがでしょうか。もちろん、大企業がそんなことをやっている例は稀でしょうが、中小だったら案外人手不足で「社員の知り合いの知り合い」が欲しかったりもすることもあるものです。
――こうじゃなくちゃいけない、という概念にとらわれすぎている可能性があるかも、ということかもしれませんね。行き詰まったら、まずはいろんな社会人に話を聞いてもらいましょう。そこでは単なる愚痴ではなく、どうしたらいいかなど、具体的な話ができたらいいですね。
中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
編集者
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行ったり、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書) や『内定童貞』(星海社)など。