私は最近、「仕事で活躍すると、男は不細工でもモテる」といったことをツイッターで述べた。すると、反発が来るのである。まぁ、多いのは「仕事ができるイケメンにどうせ勝てない」や「そんなの嘘」ということである。
前者についてはまぁ、仕方がない。しかし後者の「嘘」呼ばわりはどうなのだろうか。
こういった反論をしてくる方々は、多分仕事で活躍していないのだろう。だからこそ「嘘」だと言う。自分自身が活躍していないことを認めたくないため、モテない自分自身の状況を鑑みた上で「自分は活躍しているのにモテない」と述べているのだ。結局仕事において有能ではないと自覚しているから、コンプレックスを抱いているのである。
まぁ、そういう方はその考え方でも開き直ればそれなりに幸せに生きていけるので、いちいち反論する気もないのだが、正直今の日本で「ヒモ」なんてものは流行らない。NHK朝ドラ『あさが来た』の新次郎さんぐらい妻がしっかりした人なのであれば構わないが、あれはあくまでもおとぎ話のようなものである。
私は別にマッチョ思想を持つわけでもないのだが、「男なら働け」と言いたい。理由は、社会がその風潮にあるからである。もちろん男女同権なのは言うまでもないし、「主夫」の存在も否定するつもりはない。それは各々の家庭の事情に則した形態だから。
だが、私が言いたいのはたとえば結婚をしていない23歳の男が無職だったら、それってどーよ? という話なのである。38歳の男がバリバリ稼ぐ妻と役割分担をして「主夫」をするのは、それはいいことだろう。だが、自分一人で生きていたり親元に住んでいるというのに働いていないというのは、いささか心配してしまう。
というのも、カネが入らないばかりか、成長の機会を逸してしまうからだ。23歳の段階で同世代の男は日々何らかの吸収をし、成長を続けることとなる。そんな中、「やりたいことが見つからない」や「まだ雌伏の時。オレは臥龍であり、いずれ天を駆け巡る龍になる!」などと意識の低い諸葛孔明のようなことを言って仕事をしないのは、実にもったいない。
というのも、社会人にとっての成長というものは仕事を通じてしか得られないから。幸いなことに今の日本では、個々人の成長を換金することが可能だ。何も成長しない者はそれなりのポジションに就くことは難しい。機会は平等ながら、その後はかなりの実力勝負である。だからこそ、より成長してラクな人生を送るためには若いうちに必死に働いた方がいいのだ。
それこそ、「謝罪の仕方」だってある程度学ばなくては適切なことができないもの。かつて船場吉兆のオッサンが脇に母である「ささやき女将」をはべらせ、テキトー過ぎる謝罪会見をしたことを覚えている中高年は多いだろう。あの店は、「一流店」とされていたものの、一旦客に出したものを使い回すという客商売にあるまじき不正を行った。
取締役である息子は謝罪会見に登場したのだが、脇には母が同席。恐らくこの息子は緊張したのと、いい家のおぼっちゃまとして、それほどの修羅場をくぐったことがなかったのだろう。仕事はしていただろうが、それはあくまでも「誰かが何かお膳立てしてくれる仕事風の何か」でしかなかった。だからこそ、ささやき女将から「頭が真っ白になったと(言いなさい)」といった助言をされ、それをオウム返しのように言い、その様子が全国に流され信用ならぬ店だと断罪され、廃業したのである。
仕事をしない男の末路というのはこういったものである。仕事というものは日々、針の山の上を歩いていくようなものの連続である。会社に入ったばかりの頃は、電話がかかってきてそれを取るだけで恐怖体験になる。その後、得意先で喋ることも恐怖体験だろうし、自分の作った企画書を印刷する時も「あぁ、これから先方に着くまではもう直せないんだ……」と緊張をし、戦慄する。
書類に不備があったらどうしよう――。そんなことを考えるかもしれないが、仕事をし続けていれば、多少の不備ぐらいはどうってことない。仕事経験があればあるほど、いかようにもリカバリーは可能である。
「おぉぉ! すいません! ここ、書類が間違えていました。本当の数値は725万人です。失礼しました。さて……」
海千山千の仕事師といったものは、幾度もの失敗をくぐり抜け、なんとか相手から取引を切られない程度のレベルのアウトプットを提出する技に長けている。しかし、仕事をしていない人間というものは、そのレベルがよく分からない。それが分からないと、あまり他人からは信用されない。いや、結局世間様の目が「仕事をしていない大の男」を評価しない時代であれば、仕方ないから仕事をしてみてはいかがだろうか。
気が進まないかもしれないが、案外それでモテたりもする。あと、日本国内に働いている人は何千万人もいるわけで、病気があるわけでもないのに働かないというのもどこか後ろめたくならないか?
とにかく元気ならば働け。どこの世界に「キャッ! 無職のあなた、素敵!」なんて言う女がいると思うのか。あと、あなたの友人だって無職のあなたを暖かく見守るほど余裕があるワケもない。「あいつ誘うと、こっちが少し多く出さなくちゃって思うんだよな……」「そうそう、それもあいつが惨めに見えるから学生時代の安すぎる飲み屋に行くけどそれもどうよ、オレらの年齢でさ……」「あぁ、あいつ、もう誘うのやめようか」なんて会話が裏で展開されていたら実に寂しいことである。
中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
編集者
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行ったり、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書) や『内定童貞』(星海社)など。