とある大学の就活生・M君。「自分は凡庸過ぎて、光るものが何もない」として、憂鬱そうな表情を浮かべています。「僕はいわゆる“一流大学”といわれる大学の学生です。でも、就活するとなると、同じ大学での“競争相手”が多すぎて、うまくいく気がしません……」
よく「光るものを持っている学生」がいいっていうけど、「光る」ってどういうこと? あるいは、どういうもの?
「だって、別に優秀な成績で入学したわけでもないし、在学中も“単位を落とさない”ことだけが大事で、成績は常にギリギリ。サークル活動もなんとなくやっていただけで、毎日適当に遊んで、適当にバイトして、適当に過ごしていました。
何故そうしてきたかというと、ものすごくセオリー通りの“大学生ならでは”のことをしてみたかったんです。勉強はもともとキライで、やっと大学に入ったのに、もう勉強はしたくなかったし。“みんなと同じ”ことに、安心感があったのかもしれません。
就活する先輩たちを見てきましたが、僕は “自分のときはどうなるかわからないし”とばかりに問題の先送りで、何も考えずに就活をする学年に突入してしまった、という感じです」
M君は、目の前に迫った現実に直面し、ようやく自分のこれまでを振り返っているようです。しかし実際のところ、こういった学生が大半なのではないでしょうか。
M君の話を続けます。
「イケメンでもないし、やってきたことで目立つものもない。家柄もフツーだし……。得意なことも別にありません。そういった“光る”ものを持っている人が、心底羨ましいです。僕はどうしたらいいのでしょうか。このままでは、どこにも就職できない気がしています」
そうですね。「光るもの」の有無はさておき、ネガティブな表情をした学生を採用したいという企業はないでしょうね。その前に、ESに書くこともスカスカで、面接までにたどり着かない可能性も大きいでしょう。
でも、ものすごい才能を持っていたり、成績がずば抜けて優秀な学生のほうが少数派であることは確か。採用担当者は、学生のどこを見て「光る」ものがあると判断しているのでしょうか?
製造業で人事・採用を担当しているUさん(39歳)は、「光る学生」について、こう話してくれました。
「ESや面接で自己PRをするときに、心のこもった説得力があるかどうか、ですね。特に面接で、準備してくるのはいいですが、学生にとって想定外の質問だったり、こちらが深掘りした質問をしたりると、途端にしどろもどろになる人が多いです。そういう人は、人から言われたことを咀嚼して返す力が弱く、臨機応変に仕事ができないのかな、と見えます。
例えば成績とか、才能といった、いわゆる“目立つ”ものについては、あまり重視しません。もちろん「おおっ」とは思いますが、それが仕事で役に立つかというと、別ですからね……。
例えば英語にしても、日本語ができれば仕事ができるわけではないように、英語でコミュニケーションを図り、仕事ができるまでが大事なので、もちろん英語が得意に越したことはありませんが、面接する側としては、“英語をどのように使ってきたか”といったことのほうが知りたいのです。つまり点数だけ良くてもね、という感じ。必ず英語を使う部署に行くとも限りませんし。汎用性という意味では、バイタリティがありそうなほうが有り難いです」
M君のやるべきことは、志望企業に対し、「説得力をもって語る」力をつけること。まずはその企業で“どうしても”働きたい理由を考えてみることからです。ちなみに、この“どうしても”が案外大事。「御社の商品が好きだから」だけでは全くダメ。企業はファンと働きたいわけではありません。
面接官は、その学生の潜在能力、磨けば光りそうなものを見出すのも仕事。学生側が「僕は光っています!」とアピールするものではない、ということを理解し、地に足をつけた就職活動ができればいいですね。