2016年卒の就職市場は、学生優位の「売り手市場」といわれました。でもその一方で、ハイスペックなのに内定がもらえなかった学生も続出。これってどうして?
「売り手市場」「買い手市場」とは何なのか、そして2017年卒の学生は就職に有利? 不利? 今年の就職事情を分析するとともに、「売り手市場」なのに内定がもらえない学生について解説します。
まず、「売り手」「買い手」の意味をおさらいしておきましょう。
就職活動において、「売り手」は学生のこと。「買い手」は企業のことです。
「売り手市場」とは、学生が“優位”であること。基本的に企業の募集人数が多くなれば、学生にとっては就職しやすくなります。ただ企業は優秀な学生の争奪戦になるため、学生優位の「売り手市場」となります。
反対に、就職を希望する学生の数は変わらないのに企業の募集人数が絞られると、学生は就職しにくくなりますが、企業は優秀な学生をじっくりと選考することができるようになり、企業側優位ということ。これを「買い手市場」といいます。
ここのところ景気回復に伴う求人増で、「売り手市場」といわれています。昨春卒業した大学生の就職率は96.7%。これは、過去最高だったリーマン・ショック前の2008年春の96.9%に次ぐ高水準だったそうです。2016年卒予定の学生も「売り手市場」だったことが報じられています。
採用開始時期の変更があったため、企業は採用活動の量を増やすことになりました。学生との接点を作り続け、面接から採用までの期間を「つなぐ」必要があったためです。
また学生も、スケジュールの変更で“何がどうなるかわからない”と、漠然とした不安を抱えることになり、結果として“とにかく頑張る”と就職活動に貪欲にならざるを得ませんでした。
2017年の就職市場も引き続き「売り手市場」になるのではないかとみられています。
ところが、ある製薬メーカーの採用担当者は、これに警鐘を鳴らします。
「“売り手市場”と報じられているからか、“簡単に内定を貰えるだろう”と思っている学生が多い。企業研究や志望動機などをじっくり考えず、ぶっつけ本番で面接に臨もうとするケースがみられます。そしてこれは特に、偏差値でいうところの“中堅”から“高い”大学の学生に顕著。慢心してしまうのでしょう。
今の時代、大手企業、人気企業を目指す学生が多い傾向がありますが、大手・人気企業は、どんな時代でも狭き門であることに変わりはありません。あくまでも『数』の計算上が“売り手市場”なだけであって、決して“自分”や“自分の卒業大学”が採用されやすくなっているわけではないのです」
また別の採用担当者も、これらの理由から、“ハイスペック”な学生が、案外内定をもらえていなかったりすると説明。そして、これは活動を始めた時期が遅かったり、自己アピールがきちんとできていなかったりという理由ではないかと分析してくれました。
いくら「売り手市場」といえど、準備不足では内定はもらえません。2017年卒の就活スケジュールは、経団連加盟企業の会社説明会(及びエントリー)が3月1日解禁。選考開始時期は6月スタートです。3月1日まであと1か月。どの企業にエントリーするかなど、今から準備を始めましょう。