「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」
―2015年12月18日に日本で公開された、興行収入60億円を突破しているシリーズ7作目の話題作です。
突然ですが、皆さんはこれほどまでに話題になっているスターウォーズの過去6作を見たい! と思ったとき、どうしますか?
テレビで放送されるのを待つのか、ケーブルテレビ(有料放送)を見るのか、DVDやブルーレイをレンタルするか……
様々な方法がありますが、こういう経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。
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インターネット上で「スターウォーズ 過去」と検索。
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検索結果をクリックすると有料の動画サイトに
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「レンタルするより安くて楽だなあ、他にも面白そうな作品があるし……」
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登録
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いまではテレビだけではなくタブレットでも楽しんでいる――
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このように、ある作品を観たいと考えたときにこうした動画配信サービスを利用する人が増えているのです。さらに2015年9月、アメリカの全世帯の約4分の1が利用している世界最大級の動画配信サービスであるネットフリックスが日本でサービスを開始し、大きな話題となっています。
動画配信サービス市場は日本でも今後拡大していくと考えられており、現時点でもテレビ局・TVメーカー、携帯会社を巻き込んでいます。今回はそんな動画配信サービスをご紹介します。まだまだ新規ビジネスのためキャリア採用が多く、新卒採用をしている会社は少ないのですが、テレビ、映画などコンテンツ業界に興味のある学生も知っておくとよいでしょう。
まずは、これまでの主な作品の視聴方法を振り返ってみましょう。
・テレビ……番組プログラムをもとに、放送開始時間にテレビをつけ、視聴する。CMなどが挟まれるが無料でみることができる。
・映画館での映画視聴……映画館の上映スケジュールをもとに、映画館へ出向きチケットを購入し鑑賞する。
このように映像コンテンツは決められた時間に見るということが主流でした。しかし利用者の多様なライフスタイルを背景に、決まった時間以外のコンテンツの視聴を求められるようになりました。そこで広がったのが作品レンタルや、HDDなど録画機能を持つ製品です。こうして人々は「いつでも(時間)」見られる状態を手に入れましたが、インターネットやスマートフォン、タブレットの利用者が増加すると、「どこでも(場所)」「どれでも(デバイス)」を求めるようになってきました。
そこで拡大したサービスこそが「動画配信サービス」ともいえるでしょう。
「いつでも、どこでも、どれでも、好きなモノを」というニーズをより抽出したのが、このサービスです。動画配信サービスは、作品一本あたりに料金が発生するTVOD(都度課金制)と月額定額料金が発生するSVOD(定額制)があり、現在はSVODが一般的となっています。主にスポンサーからの広告料金により、無料で視聴できるテレビ放送と異なり、動画配信サービスはこの視聴料金がコンテンツを生み出す資源となっています。
・NETFLIX
運営会社:米ネットフリックス
オリジナルコンテンツ:ハウス・オブ・カード 野望の階段(エミー賞)、テラスハウス、アンダーウェア、火花など
解説:ソフトバンクと業務提携、フジテレビが番組制作に協力している。またネットユーザーのみならず、TVリモコンにネットフリックスのボタンを付けるといったTV中心のユーザーにも対応するなどTVメーカーも巻き込んで展開している。
サイト:https://www.netflix.com/jp/
・Hulu
運営会社:HJホールディングス(※日本テレビ放送網子会社)
オリジナルコンテンツ:THE LAST COP/ラストコップ、フジコなど
解説:「笑ってはいけないシリーズ」など日本テレビコンテンツの配信のみならず、各局(NHK・テレビ朝日・フジテレビ・TBS・WOWOWなど)コンテンツの配信を行っている。
登録者:100万人超(2015年3月)
サイト:https://www.hulu.jp/
・dTV
運営会社:NTTドコモ、エイベックス・グループホールディングス
オリジナルコンテンツ:進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 反撃の狼煙、「AAA」「三代目J Soul Brothers」など音楽ライブ配信。
解説:ドコモが提供するdアカウントで利用が可能。2009年に開設されたエイベックス・デジタルとNTTドコモの合弁会社、エイベックス通信放送が運営する動画配信サイト「BeeTV」のオリジナルコンテンツも閲覧することができる。
登録者:約480万人(2015年9月末)
サイト:https://pc.video.dmkt-sp.jp/
テレビ局各局は、動画配信サービスに対して番組制作などに協力しながらも、メイン事業である「テレビ放送」への対策として見逃し配信サービスを強化する動きを見せています。
2015年10月に在京キー局5社が共同で展開するスマートフォン向けアプリ「Tver」を開始しました。これはテレビ放送終了後の番組をCMも含めて、1週間無料で配信するサービスで、開始3週間で100万ダウンロードを超えました。
テレビ離れが叫ばれるなか、まずは、一人でも多くの利用者に、テレビ「で」見るのではなく、テレビ(のコンテンツ)「を」見てもらう動きを進めているということができるでしょう。
就職活動をするみなさん(特に映画・テレビなどコンテンツ業界希望の学生)に動画配信サービスを通じて考えてもらいたい視点は以下の通りです。
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(1)コンテンツ内容の充実
(2)利益をどの段階で発生させるのか
(3)消費者の時間をいかに勝ち取るか
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(1)コンテンツ内容の充実
動画配信というと、過去の作品が充実している印象がありますが、各サービス力を入れているのはそこでしか見られない「オリジナルコンテンツ」です。世界トップのサービスである、ネットフリックスも、日本ではフジテレビが番組制作に、Huluは日本テレビが携わるなど海外のサービスをそのまま取り入れるのではなく「日本人が好む内容」の充実をはかっています。
コンテンツの質の向上は動画配信サービスにかぎらず、本・音楽CD・DVD・映画・ウェブサイトなどコンテンツ業界すべてに通じて求められていることです。テレビでも「人気タレントが出ているから」「時間帯が有名だから」といって視聴率が取れる時代ではなくなりました。利用者のニーズを察知し、ニーズに合わせて「王道の面白い」コンテンツを制作する観点と、いち早く時代をリードする「画期的」なコンテンツを生み出すことが求められるでしょう。
(2)利益をどの段階で発生させるのか
この記事を読んでわかるとおり、テレビ・映画・動画配信それぞれで料金が発生する段階が異なります。これはどの業界でも言えることですが、今まで当たり前であったビジネスモデルはどんどん変化します。例えば、広告業界においても一律掲載料金をとる形態が当たり前でしたが、現在は、効果が出るとはじめて料金発生する、という「成果報酬型」も出てきました。コンテンツにおいても、「誰」が、「どの段階」で、「どれくらいの料金」を発生させ利益を得るのか、という点を常に考えておく必要があります。
(3)消費者の時間をいかに勝ち取るか
今後のコンテンツ業界を考える上で、この点が最も重要かもしれません。
いまや、テレビ業界のライバルは他のテレビ局にとどまらず、映画会社であり動画配信サービスを提供する企業であり、音楽であり、さらにいえばスマートフォンのアプリのゲーム制作会社ともいえるのです。
これらの業界は「利用者がコンテンツに費やす時間」を奪い合っているという意味で全て競合といえるのです。例えば電車の中で、本や新聞を読む人を見かけることは少なくなりました。代わりにスマートフォンを使ったSNSや動画の視聴や、ゲームをしている人をよく見かけるのではないでしょうか。
家の中でも、ネットサーフィンや友達とLINEをしている時間が増え、テレビを視聴する時間が少なくなってきているということも言えるのです。
今後は「いかに多くの人々に、1秒でも多くコンテンツに触れてもらえるのか」という観点でも、サービスを考えていく必要があるでしょう。
いかがでしたか。
動画配信サービスは「いつでも、どこでも、どれでも、好きなモノを」見たいというニーズが増え、発展してきています。このようにコンテンツ業界で必要な観点は「多様なニーズに対して、いかに応えていくのか」ということ。これは以前記事にした「出版社」とも共通していることです。(▼出版業界学生必見!!集英社・講談社・小学館を徹底比較!(https://agent.jobrass.com/?p=4643))テレビはテレビで、本は紙で、という固定観念にとらわれることなく「どうしたらこの作品をより多くの人に見てもらえるのか」というある種、コンテンツの発信の原点ともいえることを深く考えていくことが大事でしょう。