バレンタインデーは、製菓会社が始めたという話ですが、半世紀を経て今では1,000億円越えの一大イベントとして定着しています。昨年のバレンタインデーの経済効果は1,080億円! 業界の戦略はとてもうまくいったといえます。中でもシーズン中のチョコレートの売り上げは500億円とか。バレンタインといえばチョコレートと思っていましたが、チョコレートが占めているのは経済効果の半分ほどの売り上げなのです。では、他にどういった業界がバレンタインによって経済効果の恩恵を受けているのでしょうか。バレンタインをテーマにした業界研究をしてみましょう。
日本でバレンタインデーにチョコレートを贈ることを最初に提案したのはどこか、いくつかの説があるようです。
・洋菓子の「モロゾフ」といえば、チョコレート。日本のバレンタインデーは洋菓子の「モロゾフ」が1936年に掲載した広告が始まり
・1958年の「メリーチョコレート」と「伊勢丹」のコラボ
・「森永製菓」が1960年代に新聞で大々的な広告を出した
こうした各社の働きがあって、1970年代に女性から男性にチョコレートを贈るという日本限定のバレンタインデーがイベントとして定着したようです。
仕掛け人となった業界だけで、「モロゾフ(洋菓子メーカー)」「メリーチョコレート(チョコレートメーカー)」「森永製菓(製菓メーカー)」「伊勢丹(流通)」「広告掲載(マスコミ、広告代理店)」等、多くの業界が関わっています。仕入れの部分を考慮に入れると、商社や輸送関係のロジスティックといった業界も関わってきます。
バレンタインデーにチョコレートを贈る相手によって、「本命チョコ」だけではなくて、「義理チョコ」が広まってから、チョコレートの売り上げが大きく上がったといいます。「義理チョコ」という新たな概念が、新たな経済チャンスを生んだのです。今では駅の中に「義理チョコスタンド」なるものまで出店されているとか。時期に合わせてどういった形態が売れるか、新たな形態を提案し続けることで、バレンタインデーはさらに大きな経済効果をもたらすようになっています。家族にあげる「ファミチョコ」、女の子が女の子の友達にあげる「友チョコ」、自分へのごほうびにする「ご褒美チョコ」や「自分チョコ」等、もらったりあげたりしたことがありませんか? それぞれに、リサーチ業界、マーケティング業界、マスコミといった業界も関わって、新たな流行がうまれているのではないでしょうか。
チョコレートと言ってもいろいろなものがあります。女子高生の85.9%は、手作りチョコレートをあげるという調査結果もあり( https://www.furyu.jp/news/2015/02/gtl23.html )手作りチョコレートとなると、また別の業界が関わってきます。原料のチョコレートを提供する製菓メーカー、製菓道具を提供する調理用品のメーカー、ラッピング用の包材のメーカー、レシピ本をつくる出版関係、それぞれの商品を提供する小売り業も関わってきます。
チョコレートだけではなく、お花を贈る「フラワーバレンタイン」や、「バレンタインに本を送ろう」といった、他のものを贈るキャンペーンも行われています。そこだけにとどまらずレジャー施設やホテル、レストランでもバレンタインメニューを出しており、外食産業、ホテル業界、レジャー産業、生花業界、出版業界までバレンタインの影響は広がっています。
チョコレート以外にもいろいろな業界がバレンタインに関係しています。それぞれの業界に関してみてみましょう。バレンタインデーに向けてどういった取り組みが行われているのでしょうか。
一見、チョコレートと関係がない業界でもバレンタインデー関連商品を開発しています。どのようにタイアップしていけるのかを考えてみるのも業界研究の一つの視点になるのではないでしょうか。
●お菓子業界
バレンタインデーの主役、お菓子業界の規模は3兆2,522億円。この中には、和菓子、洋菓子、ガムやアイスクリーム、おせんべいといったものも含まれています。もちろん、チョコレートも。お菓子業界は、景気にそれほど左右されないという利点があるようです。コンビニエンスストアやスーパーもPBのお菓子を開発し、販売しています。販売経路も多様化していますね。
お菓子業界の大手企業(売上高上位5社)は以下の通り。バレンタインデーの時期には、それぞれのラインナップを活かしたキャンペーンや限定商品の開発が行われているようです。
【1】江崎グリコ:ポッキーの時期限定パッケージ、昨年はLOYCEとのコラボ商品といった、バレンタインデー限定商品というのも出しています。
【2】カルビー:人気商品とチョコレートのコラボ、チョコ掛けかっぱえびせんやフルグラチョコといったバレンタインデー限定商品をやはり出しています。
【3】明治:常時売れ筋の板チョコで作る手作りバレンタインを打ち出していて、バレンタインレシピのコンテスト等も行っています。
【4】森永製菓:やはり、常時売れ筋の板チョコやココアを使った手作りチョコ、手作りスイーツのレシピの打ち出し、開発が盛んです。
【5】ブルボン:バレンタイン使用の組み合わせアソート商品等を提案しています。
●小売業界
小売業界も、バレンタインデーの主役といえるのではないでしょうか。小売業界の業界規模は、56兆3,953億円。バレンタインの時期になると、百貨店、専門店、コンビニ、業態を問わず、バレンタインコーナーができています。オンラインショップでもバレンタイン特集やコーナーが作られていたりします。
小売業界の大手企業(売上高上位5社)の動きも見てみましょう。
【1】イオン:6兆3,951億円の売上高。巨大なモール全体でバレンタインを打ち出し、チョコレートだけではなくどの商品群も売り込んでいます。
【2】セブン&アイ・ホールディングス:売上高5兆6,318億円。コンビニ最大手のセブンイレブンでも、メーカーとタイアップしてバレンタイン限定商品の開発も行っています。
【3】ローソン:売上高1兆9,453億円。東京ディズニーリゾートとコラボしたチケット等、チョコレートやお菓子の枠にとらわれないバレンタイン限定商品を開発しています。
【4】ヤマダ電機:売上高1兆8,939億円。電機関係以外の商品も売っており、食品をメインにオンラインショップでもバレンタインフェアを行っています。
【5】ファミリーマート:売上高1兆7,219億円。ホテル日航東京や著名なパティシェとタイアップしたチョコレートを開発、限定販売しています。
●外食産業
業界規模は、4兆2,526億円。バレンタインデーの取り組みは専門店の方が多く、最大手の企業は業態にもよるのかあまりバレンタインデーフェア等は行っていないところもあります。なかなか、苦戦しているところも多い大手の会社は、バレンタインデーといった販促の機会を活かしてみたら良いのかもしれません。
【1】ゼンショーホールディングス:売上高5,118億円。すき家やはま寿司ではバレンタイン商品やフェアは行っていないようです。ココスでは、バレンタイン限定でお菓子の割引を行っています。
【2】すかいらーく:3,400億円の売上高。バレンタインデー限定クーポンがあります。
【3】日本マクドナルドホールディングス:売上高2,223億円。公式なバレンタイン商品はなくても、注文をする時に「ハッピーバレンタイン」ということでチョコレートサンデーがもらえるというキャンペーンも一部店舗で2015年に行われました。
【4】吉野家:1,800億円の売上高。バレンタインデーに特別な取り組みはないようです。
【5】コロワイド:1,775億円の売上高。有名専門店とコラボした生チョコ商品を期間限定販売しています。
どの業界にも、バレンタインデーといったイベントを効果的に取り込んだ戦力を立てることができると思われます。業界研究をイベント面から考えてみるのも興味深いかもしれません。
参照元サイト
バレンタインに関して:
https://www.furyu.jp/news/2015/02/gtl23.html
https://www.macromill.com/r_data/20150122valentine/
各業界情報:
https://gyokai-search.com/3-kashi.html
https://asahi.gakujo.ne.jp/common_sense/morning_paper/detail/id=584
https://bizmakoto.jp/makoto/articles/1203/22/news020_3.html