「何故働くのか」「働くとは何か」。就活生にとって、いや社会人にとって、いつの時代も不変のテーマです。今回、会社員10年、独立10年のWEBディレクターが、「もともとやりたかったことと、独立した理由、そして今思うこと」を話してくれました。
好きなことは、イラストや漫画、文章を描くことでした。子供の頃の夢はイラストレーターか漫画家。でも、それに向かってものすごく努力をすることもなく、大学は行っておけという親と高校の先生の“圧”のもと、なんとなく大学へ。
本当に夢を追いかけるのであれば専門学校に行ったり、どこかに応募したりするのでしょうが、いったんそこで諦めたんです。小さいコミュニティのなかのアマチュアとしては“人よりちょっと上手い”程度だけど、結局そこまで。学園祭のパンフレットを描く程度でした。
就活の年齢になったときは、絶望的でした。『ああ働くのか……』って。甘えです。でも、自分で生活したかったので、どうしてもお金は稼がなくてはならない。自分で事業を立ち上げたり、それこそ漫画家になるためにアルバイト生活を続けるといった生活をする根性もなく、自分がもっている唯一の“新卒”というカードで就活をすることにしました。本当にダメダメな考えです……。
就活ではマスコミも考えましたが、全部落ち、一つだけ合格した食品メーカーに就職。そのときは、“向いていない”ということなんだろうと自分を納得させ、「自分を欲しいと言ってくれたところに就職するのも、いいかも」と考えました。例えば漫画家と編集者がいたら、私は“漫画家”になりたいのであって、編集者になりたいわけではないとも思っていました。メーカーは居心地がよくて、結局10年いました(笑)。
でも、30歳を過ぎたあたりで海外旅行に行ったとき、初対面の外国人相手に自分の職業を説明するときに、説明できなかったんです。あまりに大きな会社だったので、営業も人事も経理も経験していた。かといって、食品そのものを“作って”いるわけではない。しどろもどろになり、『オフィスワーカーなのね』ということでまとまりました。また、日本語と英語でオペレーターをしている女の子には、一つ目の会社であるということを言うと非常に驚かれました。『なんで!? 何がしたいの!?』という感じです。
その時に、たとえ一つの会社であっても、「ああ、私も『私はプログラマーです』『私は野菜を作って売っています』というような人になりたい」と思ったんです。自らの手で、実際に何かを動かしたい。
そして次の行き先もないのに、突然会社を辞めました。一旦リセットしようと思って。今から思えば、なんと無謀な話です。当時、周囲からも『あんなにいい会社に10年もいて勿体無い』とすごく言われましたが、個人的には年齢的にも、リセットできる最後のタイミングだと思ったんです。
それで半年くらいプラプラしているなか、大学の同級生にバッタリ会いました。彼はWEBプロダクションを立ち上げたばかりで、手伝ってくれる人を探していました。暇だったので手伝うことになり、今に至ります。漫画は描いていませんが、文章は書きますし、漫画やイラスト好きだったことが功を奏し、デザイン面でも“いい”ものが感覚的にわかります。
今振り返ってしみじみ思うのは、「その時の縁を大事にし、自分にできることを一生懸命していれば、おのずと好きなことに近づいていた」ということ。イヤなことは本能的に回避するし、好きなことって、案外いろんな角度からの攻め方、アプローチの仕方があるということにだんだん気がつくんですね。これは大学卒業直後にはわからなかったことです。
また、10年間大企業で働いていたことは、どんな業界においてもものすごい信用につながりました。これは本当に予想していなかったメリットでした。よく言われることですが、無駄な経験はありません。その時の流れをポジティブに捉え、そこでの「楽しさ」を見出していけたらいいな、と思います。
私にとって「働く」とは? 自分が誰かに求められている、誰かの役に立っているという実感をもって、対価をいただけること。自分がやった仕事で、どこかの誰かが笑顔になっている、いい気持ちになっていることを信じられたら幸せです。