2015年朝ドラ「あさが来た」のヒロイン広岡浅子さんの実家今井家のモデルは、三井家でした。明治の激動期を描いた本当に毎日ワクワクしながら見られたドラマだったのではないでしょうか。三井グループの基である、三井家も同様の時代を生き抜いてきたグループです。果たして、現在の三井グループは? どういった企業があるのでしょうか。
(※こちらの記事は、2016年7月22日に公開したものを更新しています。)
三井グループの創業家三井家は、平安時代に権勢をほしいままにした藤原道長の子孫であると言われています。平安末期に、近江地方に移り住んだ際に、琵琶湖畔の領地で三つの井戸が見つかったため三井姓に改めたとか。戦乱の時代を経て、江戸時代に、三井の創業者と言われている三井高利は、松坂で質屋や酒・みその商売を始めました。父親が越後の守であったことから、「越後殿の酒屋」と呼ばれるようになり、これがのちに「越後屋」の屋号を名乗るきっかけとなりました。江戸に移って、三井越後屋呉服店を開業、「三井越後屋」から「三越」の名称が誕生しました。
江戸で三井越後屋呉服店は、小札を付けて店頭での「現金売り」、即座にしたて手渡すイージーオーダー「仕立て売り」などの新しい手法で繁盛しました。このころに暖簾印として使われ始めたのが「丸に井桁三」の紋です。丸は天、井桁は地、三は人を表し、「天地人」の三才を意味しています。このマークは現在も三井グループの一部の会社の社章として受け継がれています。
呉服店を開いて10年後の1683年に江戸で、1686年に両替商を開き、為替業務を始めて繁盛します。これはのちに三井銀行となる企業の始まりでした。三井高利は、三井家の結束を図るため、長男を総領家とする本家と連家を定め、6本家と3連家、後に三井11家となる、三井グループを興しました。明治維新後、三井財閥は日本最大の財閥でした。
第二次世界大戦が終わって、GHQによる財閥解体がなされました。これにより、三井系各社の首脳陣は追放されました。各財閥グループは、護持運動を展開し、三井グループとしての連携を守るために発足したのが「月曜会」でした。1950年の2月27日月曜日に発足したので、「月曜会」と命名されました。三井グループとして復活しました。1961年には、三井グループのPR活動を行う「三広会(後の三井広報委員会)」が設立されました。社長会である「二木会」もでき、三井グループとしての繋がりを取り戻し始めます。昭和45年にアジアで初めて開かれた大阪万博では三井グループの32社が「三井グループ館」を、隣には「東芝・IHI館」を出展し、「三井ゾーン」を形成しました。
平成に入って多くの業界で業界再編が進むと、三井グループの各社も変遷をたどります。王子製紙は、神崎製紙、本州製紙と合併、日本製紙は大昭和製紙と合併後日本製紙グループを設立、小野田セメントは秩父セメントと合併し太平洋セメントになりました。三井石油化学工業と三井東圧化学からは三井化学が誕生しています。三井グループの源流企業は三越ですが、三越は伊勢丹に救済される形で合併し、現在は三越伊勢丹ホールディングスとなっています。
住友グループとの連携も生まれました。大阪商船三井船舶はナピックスラインを吸収し商船三井となりました。三井建設は住友建設と合併し三井住友建設が生まれました。三井銀行も、現在は三井住友銀行になり、三井海上火災保険は三井住友海上火災保険となりました。三井系と住友系が合併した金融系のグループ各社は三井住友ファイナンシャルグループを形成しています。三井信託銀行と住友信託が合併し、三井住友トラスト・ホールティングスが生まれています。
2016年現在、月曜会に加盟している企業は、以下の企業です。(トヨタ自動車は、二木会、三井広報委員会に加盟していますが、月曜会はオブザーバー会員です。)
▪金融業
・JA三井リース
1971年、三井物産のリース事業部が分離独立。
住友グループとの合併企業
・住友三井オートサービス
・三井住友フィナンシャルグループ
∟三井住友銀行
∟三井住友カード
∟三井住友ファイナンス&リース
∟三井住友アセットマネジメント
∟SMBC日興証券
∟SMBC信託銀行
∟SMBCファイナンスサービス
∟日本総合研究所
∟セディナ
・三井住友トラストHD
∟三井住友信託銀行
∟三井住友トラスト・カード
・SMBCコンサルティング
・さくら情報システム
・三井住友海上火災保険
・三井住友海上プライマリー生命保険
・MS&ADインシュアランスグループホールディングス
・三井生命保険
▪製造業・鉱業
・IHI
元来独立系でしたが、三井グループの東京芝浦電気(現在の東芝)の再建に関わって以来、東芝と密接な関係にあり、月曜会にも加盟しています。ただ、メインバンクは、みずほ銀行で、第一勧銀グループにも属しています。
・三井E&Sホールディングス
船舶や、船舶の動力源であるディーゼルエンジンや産業機械、プラントエンジニアリングから海洋資源開発などの領域をカバー(2018年に商法変更)
∟三井E&S造船
∟三井海洋開発
∟三井E&Sマシナリー
∟三井E&Sエンジニアリング など12社から構成
・昭和飛行機工業
三井造船の連結子会社。航空機内装備品、介護装置などを扱っています。
・日本製鋼所
・三井金属鉱業
・三井石油開発
・三井松島産業
▪化学
・三井化学グループ
∟三井化学東セロ
∟三井化学SKCポリウレタン
∟三井化学アグロ など40社以上から構成
・ダイセル
・デンカ
・東亞合成(アロンアルファを製造)
・東レ
1926年化学繊維の製造のために三井物産の出資により創業しました。現在は、レーヨンは製造していませんが、炭素繊維、静電気の起こらない化学繊維などの特殊繊維を開発・製造しています。
・東レインターナショナル
・富士フイルムホールディングス
▪電気機器・機械
・イビデン
IC機器の製造等
・イビデングリーンテック
土木、造園業
・ジーエス・ユアサコーポレーション
三菱商事とともにバッテリー製造の合弁会社を作っています。
・東芝
・西日本電線
・フジクラ
・三井精機工業
トヨタとの関連が深い企業です。
・三井三池製作所
三井三池炭鉱の製作課が独立、産業機械メーカー
▪パルプ・製紙業
・王子ホールディングス
第一勧銀グループにも属しています。
・日本製紙
▪建設業・建材系
・三井住友建設
・三機工業
1925年創業、空気調和設備、給排水設備、原子力関連施設、防災設備等の設置。三井物産機械部を母体として独立した企業。
・新日本空調
・三井デザインテック
・三井ホーム
・太平洋セメント
前身企業のうち小野田セメントは三井系、秩父セメントは第一勧業銀行系、日本セメントは当時の富士銀行系だったので、太平洋セメントは三井グループとみずほグループの両方に属しています。
・東洋エンジニアリング
三井系の化学会社東洋高圧工業の工務部門(プラント部門)から独立。
・三井海洋開発株式会社
浮体式の海洋石油・ガス生産設備の設計・建造
・三井住建道路
▪食品
・三井製糖
・サッポロホールディングス
・サッポロビール
・日本製粉
・三井農林
▪不動産事業
・太平洋興発
・三井不動産
∟三井不動産レジデンシャルサービス
∟三井不動産リアルティ
∟三井不動産ビルマネジメント
∟三井不動産レジデンシャル
∟三井不動産レジデンシャルリゾーツ
∟三井不動産ファシリティーズ
∟三井不動産商業マネジメント
・第一園芸
・物産不動産
三井物産グループの不動産会社
▪運輸・ロジスティック
・商船三井
∟エムオーツーリスト(商船三井の子会社の旅行代理店)
・宇徳
・三井倉庫ホールディングス
∟三井倉庫ロジスティクス
▪小売業・サービス業
・三井物産
∟三井食品
・三井共同建設コンサルタント株式会社
・エームサービス(1976年三井グループが米国のアラマーク社と合弁)
・日本紙パルプ商事
・三越伊勢丹ホールディングス
▪情報・通信業
・日本ユニシス
・三井情報
三井物産の子会社のシステムインテグレーター
▪マスコミ
・東京放送ホールディングス
初代社長の足立正は三井物産出身、メインバンクも前身のラジオ東京設立時から三井住友銀行。2009年に二木会にも加盟。
∟TBSテレビ
日本の三大グループともいえる三菱グループ、三井グループ、住友グループの違いを表すとき【組織の三菱、人の三井、結束の住友】と呼ばれることがあるように、三井グループは人材の抜擢に優れておりこれまでも数々の経営者を輩出してきたことでも有名です。前に紹介した三菱グループ、住友グループと比較すると、グループとしての結びつきはそこまで強くなく、どちらかというと【個】を重視しているともいえます。だからこそ個人の裁量が大きく、仕事の組み立て方なども自分で決めることができるといわれています。このように、日本の主要業界の企業を要する三大グループも、それぞれ特徴があり風土が存在しています。自分がどのような風土に合っているのかを確かめるためにも、各社のOBOG会にはぜひとも参加してみましょう。
また総合商社の場合確かに優秀な学生がたくさん集まります。しかし企業が思う優秀な学生は「偏差値」からではなく「人間性」であることが増えてきました。有名校や偏差値の高い学校からしか採用されない、と思われがちな業界ですが、日本の産業を担い大きな仕事をしてみたい! と思う方がいるのならばしっかりと対策をし積極的に選考を受けてみましょう。